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東方銀訪傳  作者: くまっぽいあくま
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エイラクマルは蛇使い座の方角から、てんびん座の方角へ移動した。

地球からグリーゼ581gまでなら約20光年の距離だ。

地球に戻らず直に移動すると、蛇使い座→さそり座→てんびん座というルートになる。

途中にさそり座をはさむので、かなりの航行距離になる。


また観測→星図の上書き→コース選択→観測のサイクルを繰り返しているので、移動速度は更に遅くなる。

乗組員達はだんだん暇をもて余すようになっていた。


しかし、一旦航行してしまえば、次以降が楽になる。

実際に航行済みというのは強みだ。

航路の開拓は物流をスムーズにする。

おおよその航行日数が分かれば、物事を計画的に進められるようになる。


『重力源があります』

「重力源?」

『恐らくマイクロ・ブラックホールと思われます』

「多いなマイクロ・ブラックホール」

『宇宙がインフレーションにより膨張した時に出来たと言われています。質量が小さなものはすぐに蒸発するのですが、これだけ残っているというのは従来の説にどこか誤りが…』

「分かった、分かった、難しい話は後で」

ムラサとコンピューターはいつものやり取りをしてコースを決めている。

休む必要がない念縛霊だからできる事だ。


『付近の星に希少資源の反応があります』

「何があるか調べてくれ」

『デューテリウムのようです』

「じゃあ星図にリマークしておいてくれ。私は船長に報告するから」

『分かりました』

コンピューターとムラサのやり取りは続く。


「もはや船の一部だな」

アズマが呆れて冗談をいうくらいには船の一部だった。



グリーゼ581g。

地球からてんびん座の方角へ約20光年にある赤色矮星グリーゼ581を公転している太陽系外惑星で、グリーゼ581系では6番目の惑星である。

21世紀においては一時存在が疑われたが、22世紀に入って連盟が調査を行うと存在する事が判明した。


グリーゼ581gは恒星(グリーゼ581)のハビタブルゾーンのほぼ中央を公転している、地球の2.2倍の質量を持つスーパーアースである。

表面温度はマイナス31度からマイナス12度の間、これは液体の水が存在できる温度であり、生命が存在できる環境を保てていると思われていた。

が、実際には恒星に近いところを公転しているため潮汐力によって自転が固定されてしまっていた。

月のように恒星側とその反対側が固定されたままである。

恒星側はずっと昼、その反対側はずっと夜だ。

この過酷な環境では、昼と夜の境界線だけにしか生命が存在できない。

そんな都合のよい事は起こらず、外の世界では生命は誕生していなかった。


幻想宇宙では、グリーゼ581gは自転が固定されておらず、また表面温度も0度から19度程であった。

これなら生命が誕生していても不思議はない。


「衛星だね。これがあるから自転が止まらなかったんだろう」

アズマが言った。

「外の世界のグリーゼ581gより温度が高いのは?」

「断定はできないけど、恒星のフレアが強いんじゃないかなぁ?」

「大気が飛ばされないのか?」

「程度問題だね」

アズマとムラサは眼前の惑星について話していると、

『生き物を発見しました』

コンピューターが言った。

「どれどれ?」

ムラサ達がスクリーンを見ると、アザラシみたいな姿の生き物が映った。

直立しており腰に海草を巻いている。

(腰簑みたいなものか)

石と骨を組み合わせた斧を持っていた。

「原始人か?」

「プリミティブってやつだね」


『もう一種類、生き物がいます』

コンピューターが言って、カメラを切り替える。

今度はエビのような姿の生き物。

やはり直立しており、骨の棍棒を持っていた。

腰簑もなにも身に付けていない。

「マッパだ」

「いや、殻があるから服を着る必要がないんだろ」


『二つの種族が戦い始めました』


わー

時の声のようなものが沸き起こり、二つの種族は揉みくちゃになって互いを殺し始めた。


「ど、どうする?」

「どうするって、宇宙軍規定を忘れたの?」

アズマが短い嘆息と共に答える。


「ジャンプドライブ技術が未発明の文明には干渉をしてはならない」

声がする。

イズマックだった。

「我々は不干渉だ」

「ではデータ収集をして終了ですね」

アズマは極めて事務的に言う。

「その通り」

うなずいて、イズマックは自分の仕事に戻った。

ムラサとアズマは、淡々とデータ収集をするしかなかった。



「もし、恒星のフレアが弱まったら…」

「地表の生き物は全滅するでしょうね」

「深海の熱水噴出孔からやり直しってことね」

「なに、この星に限ったことじゃない」

イズマックは言った。

「地球だって全球凍結という時期があったそうです」

「超氷河期だったかしら」

青娥はレモネードのグラスの中の氷を少し揺らして見せた。

パキッという音が響く。

「生命はそれでも生き残り、やがて君達人類にまで成長してますよ」

「不思議よねぇ」

「この星の生き物も、死滅さえしなければやがて発展します」

「文明人も難儀なものね」

青娥はクスリと笑った。

「目の前で戦争が起こっていても不干渉でいなければならないなんて」

「規則ですから」

イズマックはお茶を一口すすった。

「我々が干渉しても録な事にならない。過去に連盟が起こした失敗を踏まえての事です」

「我は全能なり、全能ゆえに干渉できぬ」

青娥は言った。

「それは、なにかの言い回しですか?」

「んー、これは私が仙人になった時に天帝が言った言葉よ」

「天帝?」

イズマックは目をしばたかせた。

「天の神々を束ねる役目の神様ってところかしら。仙人も管理対象なのよ」

「それは…よく分かりませんね」

イズマックは理解する事を放棄したようだった。

論理で扱えない世界は苦手なのだ。

「すごい力を持つ神様が、すごい力で矮小な人間を助けたとするわね」

青娥は大袈裟な動作をした。

「矮小な人間たちは自分でなにかする必要がなくなりました。めでたし、めでたし…………とはならないのよ!」


(うおっ?!)


顔には出さないものの、イズマックはビクッとした。

「このすごい神様が、用事があるから出かけるわ!といなくなったら、矮小な人間たちはどうなるかしら?」

「……生き残る力を失っていて、ちょっとした事で死滅しやすくなる」

「あたり!」

青娥は急に笑顔になる。

「私が先程述べた、相手のためにならないということと同じ、ということですね」

「あー、うん、まあ、そーなんだけど…」

青娥は急に白け顔になった。


ブリッジでは、ムラサが帰りの進路を決めていた。

地球まで20光年。

ジャンプ6で約18日の航行日数。

「ん?星図に何かリマークがついてるのか?」

『リマークには何も記載されていません』

コンピューターは答えた。

「じゃあ、フログ商会の星図からコピーしたものかな?」

ムラサがフログ商会の星図を調べるように言おうとした途端、

『前方に巨大な物体』

コンピューターが警告音を発した。


『映像をスクリーンに映します』

コンピューターが映像を出す。

黒と白の斑模様の巨大な何かが映った。

全長250メートルはありそうだった。

エイラクマルの全長が300メートル程度だ。

小惑星に寝そべっているようである。

「なんだあれは!?」

パープルが思わず叫ぶ。

反射的に椅子から立ち上がっていた。

『センサーによれば鉱物で出来ているようです。鉱物生命体と推測されます』

「それにしてもデカいな」

パープルは感想を漏らす。

「船長、指揮を戻しましょうか」

「いや、このままでいい」

ムラサの言葉を遮り、パープルは椅子に座り直す。

「了解」

ムラサは敬礼して、

「砲手、武器を準備」

「はい、副長」

「イズマック少佐、センサーで感知したデータのとりまとめをお願いします」

「了解」

「アズマ、ゆっくり遠ざかれ」

「はい、副長」

アズマはうなずいて、

「コンピューター、ゆっくり対象から遠ざかって」

『はい、ゆっくり遠ざかります』

通常推進のスラスターが噴射され、小惑星から離れようとする。

これは宇宙軍規則「自衛目的以外の武力行使は極力避ける」に従ったものだ。

しかし、運が悪いことにスラスターから噴射されたエネルギーにそいつは反応した。

『鉱物生命体が動き出しました』

「なに?!」

『宇宙空間を移動してきます』

「はあ?!」

ムラサは一瞬、混乱した。

生命体が独力で宇宙を動き回る、などというデタラメに出くわしたのは初めてなのだ。

「うろたえるな、鉱物生命体が宇宙空間を移動するというのは過去にも例がある」

パープルがフォローを入れた。

「わ、分かりました」

ムラサはパシッと頬を叩き、瞬時に気持ちを切り替える。

「アズマ、ジャンプ5で移動!」

「コンピューター、ジャンプ係数5でジャンプドライブ!」

アズマがコンピューターへ伝える。

『ジャンプ係数5でジャンプドライブに入ります』

コンピューターがジャンプフィールドを形成し、亜空間へ突入する。

「これで、振り切れ…」

『警告!鉱物生命体が亜空間に侵入してきました!』

「どういうことだ?!」

『鉱物生命体は、独力でジャンプフィールドを構成できるようです』

「!?」

ムラサの頭の上にマ○ジンマークが現れる。

「ムラサ、ジャンプ係数を…」

パープルが言おうとした時、


ガガガッ


激しい揺れがブリッジを襲った。

いや、エイラクマル全体を襲ったのだった。


「うわっ!!」

乗組員達は咄嗟に身近な物にしがみつく。


『警告!船尾に体当たりを受けています!』

コンピューターが警告音を出す。

「反重力シールドを展開しろ!」

「了解、コンピューター、反重力シールドを展開しろ!」

砲手のハープがコンピューターに命令した。

こちらのハープは電送室のハープの姉である。

コンピューターは反重力シールドを張った。


「ジャンプ係数を10へ!」

「コンピューター、ジャンプ係数を10へ上げて!」

『警告!ジャンプコアの出力が低下しています!』

「原因は!?」

ムラサはコンピューターに問い質した。

『鉱物生命体が船尾に張り付いてエネルギーを吸い取っているようです』

「反重力シールドは!?」

『同調されています』

反重力シールドは文字通り重力波を利用した防御膜である。

何かがシールドに衝突すると、シールドは反転重力で対象物を押し返す。

が、重力波には波長がある。

その周波数を知る者が波長を同調させると侵入を許してしまうのだ。


「パルス砲を使え!」

「コンピューター、パルス砲を発射!」

『パルス砲を発射』


ピーッ


エイラクマルの船尾部分からパルスレーザーが放たれ、鉱物生命体に命中した。

正確に鉱物生命体を撃ち抜いている。


キシャアアアッ


怪獣染みた声が響き渡り、鉱物生命体が船尾から離れた。


「ジャンプコアは?!」

「まだ回復していない」

イズマックが答える。

「もう一度パルス砲だ!」

「コンピューター、パルス砲を発射!」

『パルス砲を発射します』


ピーッ


パルスレーザーが放たれたが、今度は鉱物生命体の体表で枝分かれするように散らされた。

「バグノイドみたいなヤツだ!」

パープルが唸った。

「なにが起きた!?」

「周波数を合わせてきたんだ」

イズマックが言った。

『警告!体当たりが来ます!』

コンピューターの警告とほぼ同時に、衝撃がエイラクマルを襲った。


ガガガッ


衝撃


バシッ


機器がショート


「ぐっ!」

たまたまショートした機器の前にいたパープルがモロに吹っ飛ばされて倒れた。


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