↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方銀訪傳  作者: くまっぽいあくま
PR
19/38

4-3

4-3


(てっきり生命体がいるもんだと思っていた…)


ムラサは考えがまとまらない。

「予想外の結果だな」

イズマックが言った。

「次はどうする?」

イズマックの言うとおり予想外なため、ムラサは先を考えていなかった。


プロキシマ・ケンタウリbにこんな生命体がいたぜ!ヒャッハー!


と、意気揚々基地に帰る未来予想図しか持ってなかったのだ。

ブリッジに若干の緊張感が立ち込める。

ムラサはこの空気が耐え難く感じた。


「…イズマック少佐、我々が持つ選択肢はどんなのがあります?」

数秒の沈黙の後、ムラサは聞いた。

分からない事はクルーに聞け。

パープルの言葉を思い出したのだ。

「三つある。1、この星系を探索。2、月の都基地に戻る。3、他の近い生命体がいそうな星へ移動する」

イズマックは答える。

どれにするか、決めるのはムラサである。


(月の都基地へ戻るのが堅実だ…。でも、このままだとほとんど成果はないに等しい)

(この星系を探索するか?…いや、プロキシマ・ケンタウリのフレアが原因で他もダメじゃないのか?)

(他の星に行くなら、食料などの物資が足りるかだな…)

一刹那の間で、ムラサの脳裏にこれだけの考えが浮かんだ。


「アズマ、この星系に他に生命体がいそうな星はある?」

ムラサはまず必要な情報を得ることにした。

「…ないですね。他の星も恒星のフレアの影響を受けてます。それからハビタブルゾーン外の星は元から見込みがありません」

アズマは首を振る。

「そうかありがとう」

ムラサの頭の中で可能性が一つ消えた。

「イズマック少佐、物資の在庫状況は誰に聞けば?」

「それならアズマだが、私も把握している」

イズマックは言った。

「当船は基本的に長期の探査任務を想定して作られている。定員一杯の状態で3年間は持つ」

「ありがとうございます、イズマック少佐」

ムラサの腹は決まった。

「コンピューター、ここから最も近い生命体がいそうな星は?」

『バーナードbです。地球から約6光年の距離にあり、現在地からも近い惑星です』

「どんな星なんだ?」

『木星の衛星エウロパとよく似た環境の星です』

「というと熱水噴出孔か」

『はい、外の世界ではやはりチューブワームに代表される生物群が見付かっています』

「次の目的地はバーナードbにしようと思うのですが」

ムラサはパープルを見た。

「うむ、構わない」

パープルはうなずく。

「乗組員を危険に晒さない限り好きに決めていい」

「了解」

ムラサは敬礼をして、

「コンピューター、星図から最適コースを出してくれ」

航路の決定作業を始めた。



バーナード星系。

蛇使い座の方向にある星で、地球から2番目に近い恒星と言われてきた。

1番目はケンタウルス座のアルファ星、ベータ星、プロキシマケンタウリである。この三つは三連星である。


1960年代、ピート・ファンデカンプによってバーナード星に惑星発見の報告がなされたが、その後、望遠鏡の誤差ではないかと疑われ、1970年代には発見の報告は誤りであったとされた。


2018年になってロンドン大学クイーン・メアリー、スペインのカルターニャ研究所、スペイン科学研究所が共同で行った国際研究チームが2018年11月15日付の英科学誌ネイチャーに、ファンデカンプが報告したものとは異なる、スーパー・アース規模の太陽系外惑星候補がバーナード星を公転していることを発表した。

バーナードbである。

バーナードbは、公転周期は233日で、地球の3.2倍以上の質量を持つ。

こうした地球より巨大で主成分が岩石や金属などの個体でできている星をスーパー・アースという。

バーナード星は『さよならジュピター』『銀河ヒッチハイクガイド』などフィクションの中にも出てくる。


外の世界ではバーナードbに生命は存在しなかった。

21世紀当時でも懸念されていたのだが、バーナード星は赤色矮星で、太陽に比べてエネルギーが少ない。

バーナードbが近い距離にあるにも関わらず、惑星の地表温度はマイナス170度で生命が生まれる環境にはなかった。


幻想世界では、どうやら奇跡的に生命が誕生したようである。

最初に発見したのは、体長2メートルくらいの岩石の塊のような見た目の生き物だった。

形状はゴリラに似てなくもない。

動作は緩慢で、あまり動かなかった。


「マイナス170度にもなる寒さで生きているというのは驚きだな」

パープルが言った。

『北極、南極に生息する魚は血液が凍らないよう、体液中に糖タンパクグリセロールという不凍物質が含まれています。またある種類の魚は血液中にヘモグロビンを持ちません』

アズマがコミュニケーターで答える。

ラボでもブリッジの映像や会話を共有しているのだ。

「なんらかの仕組みで凍らないようになってるのか」

「そのようですね」

パープルとイズマックが顔を見合わせる。


更に探索をしてゆくと、体長1メートル程度の生き物を発見した。

四角い体に足が左右4対の8つあり、2対のハサミのような手が伸びている。

二つの目がゆっくりと動いて周囲を見ていた。

「カニだな…」

「カニですね…」

パープルとイズマックがまた顔を見合わせる。

カニの動きは先ほどのゴリラと似た緩慢さであるが、体が小さいからか若干速いようだった。


「アズマ、なにこの生き物たち?」

『カニに似た生き物というと、考えられるのは熱水噴出孔ね』

ムラサの問いかけにアズマはさっと答えた。

『深海の熱水噴出孔で発生した生き物が、最初は冷たい海に適応して、更に海から陸に上がって進化したんじゃないかな?』

「それはあり得るかもな」

イズマックがうなずく。

『大きいのはゴリラのように見えるけど、カニの仲間が陸に適応した時に変化していったのかも』

「じゃあ節足動物?」

『それは分からない、調べてみないと…』

「あんなの捕まえられるのか?」

『大きすぎてムリね』

アズマは言った。


「霊的生物はいるのか?」

パープルが言うと、

『船長、この星の霊的生物はかなり小さいものしかいなくて数も少ないようですね。クラゲみたいなのしかいないようです』

コミュニケーターで青娥が言った。

『多分、このカニやゴリラが霊的生物に対する耐性が強いんだと思われます』

「なぜそう思うんだ?」

『アンフィビア人がそうだからです。彼らは霊的生物に対する耐性が地球人やトライアイ人より遥かに強いんです』

「そ、そうなのか」

『この幻想宇宙では、物質的な体を持つ生き物は霊的生物に勝てないと発展できません。アンフィビア人は物質世界と同時に霊的な位相空間にも体を有していて、霊的生物と直に戦えるんです』

「ふ、ふーん、そりゃすごいな」

パープルは驚きを隠せない。

ちっこいアンフィビア人にそんな特性があるとは思ってもみなかったのだ。


調査は一旦、休止になった。

理由は簡単である。

「チューブワームよりはるかに進化した高等生物だな」

パープルは渋い顔。

「もちろんチューブワームを差別する訳ではありませんが、高等生物らしき生き物を勝手に捕獲したりするのは難しいですね」

アズマが言った。

「確かに」

イズマックがうなずく。

「連盟の倫理規程に抵触する可能性があります」

「では観測だけに留めるか」

パープルが決定すると、みな同意した。



ムラサは皆が観測している間、次の航行計画に取り掛かっていた。

「コンピューター、他に生命がいそうな星は?」

『グリーゼ581gです』

「ここから行けそうか?」

『グリーゼ581gは、てんびん座の方向にありますが、ここから直接行くのはお勧めできません』

コンピューターは答えた。

スクリーンに星図が映し出される。

『バーナード星は蛇使い座の方角にあります、ここからてんびん座の方向へは一直線のように見えますが、かなりの航行日数がかかります』

「一度、月の都基地に戻れってか」

『はい、その方が月の都基地に報告もできますし、物資の補給などもできます』

「うーん」

ムラサは唸った。

「確かに、バーナードbでは成果があったけど、一度基地に戻ってまた出港して来るのは無駄じゃないか? 物資は足りてるし」

『星図の精度が低いことを考慮すると航行時のリスクが高いと言わざるを得ません』

「あー、確か船長もそんな事を言ってたなぁ」

コンピューターが否定意見を言うので、進路を決めかねたムラサは他の隊員達にも意見を求める事にした。


パープル「リスクはあっても、目的達成にはやらなければならない時はあるな。今回のケースとはちょっと違うが」


イズマック「リスク管理は最優先で行うべきだ。リスクが高い?なら基地へ戻った方がいい。強行など非論理的だ」


アズマ「あー、未知の星系に何があるか分かんないもんねぇ。ワームホールとかあったりして、アハハ」


アズマ「えー、そんなの基地に戻ってからに決まってるよ。宇宙って何があるか分かんないもん」


てゐ「知ってる道より、知らない道の方が面白いウサ。退屈なのは勘弁ウサよ」


ハープ「技術的には可能でも、いざやってみると上手くいかない事はよくあるな。そういう時はだいたい何か見落としがあるんだ」


(なんだかPRGのNPCのセリフみたいだな)

ムラサは思ったが、他人の意見なんてそんなもんかなと自分を納得させた。


「どーして私には聞かないのよ!」

どこで知ったのか、青娥がブリッジまでやって来た。

「あ、すまない。NPCの人数が多くて…」

「はあ?」

青娥は「オマエナニイッテンダ?」って顔をした。

「まあ、いいわ。リスクがあろうがなかろうが、面白い事をしなきゃ人生の大部分を損するわよ?」

「ま、あんたはそう言うよね」

「この世の真理よ。堅実に、安全に、そう言ってるうちに人は老いて何もできなくなるのよ」

「…うん、まあそーかな」

ムラサは何となく聖の言う事に近いような匂いを感じた。

青娥の根底がぺてん師だろうが、なんだろうが、一抹の真理を含んでるのかもしれない。

「でも、私は霊だから老けないんだけどね」

「ものの例えよ」

青娥は言った。

「やりたい事をいつするか?今でしょ?」

「はいはい、それが言いたかったのな」

「違うわよ!あ、こらまだ話は終わって…」

ムラサは強制的に青娥をブリッジから追い出した。


「船長、このままグリーゼ581gへ向かおうと思います」

ムラサは進路を決めた。

「それは構わないが、距離的に遠くはないか?」

「遠いですが、ここでついでに天体観測も行って星図の精度をあげていった方が後々楽になります」

「うむ、そういうつもりならいいが」

パープルは何となく不安を覚えたのか、意見が否定的になっている。

「大丈夫ですよ、何も起きませんって」

アハハ。

ムラサは陽気に笑い飛ばそうとしたが、数日後にパープルの不安が的中する事になる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。