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東方銀訪傳  作者: くまっぽいあくま
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法術の専門家が電送されてくる時間になった。

電送室主任のハープ、立ち会いのムラサ、アズマが電送室で出迎える。

「月の都基地電送機より信号受信」

ハープが言った。

勝手に電送されてきても困るので、先に送信側が「電送するやでー?」という合図を送り、受信側が「受信したでー!」と返事してから電送開始するのが慣例となっている。

「電送されてきます」


しゅみみん。


独特の音がして、二つの人影が見えてくる。

姿形がハッキリした瞬間、


「げえっ!霍青娥?!」


ムラサは目ん玉飛び出るくらいに驚いた。


言わずと知れた幻想郷の要注意人物の一人、無邪気な仙人、邪仙こと霍青娥である。

従者の宮古芳香もいる。


「あら、お久しぶりですね、ムラサさん」

青娥はホホホと笑った。

「芳香もいるのだー」

芳香は頭悪そうに言った。

「仙人って電送できるのか!?」

「はあ?仙人?」

ハープが驚いた。

「2人とも人間としかきいてないよ」

「ぶっつけ本番かよ!」

「あら、成功したんだからいいじゃないの」

青娥は何でもなさそうに言う。

「それに芳香は人間よ」

「元人間だろ」

「あら、私も元は人間なのにー」

青娥は妙なしなを作ってみせる。

「今は別のナニかだろ」

ムラサは頭を抱えた。

初っぱなから頭痛の種を抱えた。気分ではなく確実に。



「困りますね、正直に申告していただかないと」

パープルは困った顔である。

「あなた方、幻想郷の住人を電送すると、なにが起こるか分からないので、慎重に実験をしているところなんですから」

「だって、噂の電送を体験してみたかったんですもん!」

青娥はイヤイヤをしていた。

「ウザいからそーゆーのやめてください」

ムラサが不機嫌に突っ込む。

ムラサ自身も体験してみたいのに我慢してるのだ。

こんな軽く実行されたら、慎重になってる自分達がバカみたいではないか、というのがある。

「はいはい、わーかーりーまーしーたー」

青娥は全く分かってない様子である。

「くっそ、この、正式雇用じゃなければ宇宙の果てまで電送してやるのに!」

「ムラサ、それは言い過ぎだぞ」

パープルがたしなめる。

船長という立場上、しかたない。

「はあ、これは失礼」

ムラサは歯ぎしりしながら、

「この非常識仙人に宇宙軍式の決まりってやつを教えたくなりましてね!」

「まあまあ」

隣に座っていたアズマが宥める。

「青娥、はいは一回なのだ」

芳香が言うが、タイミングが遅すぎる。

「はい、芳香良いこと言った、偉いぞキョンシー」

「わーい、誉められたのだー」

「ん、キョンシー?」

アズマは首を傾げる。

「霊夢が来れば良かったのに…」

ムラサはブツブツとつぶやいてる。

「えーとね、最初は霊夢に話が行ったんだって」

それを耳聡く拾った青娥は、べらべらと喋りだした。

「でも『博麗の巫女が不在になったら大結界を制御する者がいなくなる』って妖怪の賢者からクレームがついて、色々たらい回しにされて、廟にきちゃったのよ」


ここでいう霊夢は、当代の博麗の巫女である。

幻想郷で最も知られている博麗の巫女、博麗霊夢は次代に職を譲った後、普通に結婚して子を産み、老いて天寿を全うした。

当代の博麗の巫女は霊夢直系の子孫で、名も霊夢であった。

見た目もまるで生まれ変わりかと思えるほどそっくりで、法力も強い。

性格もかなり似ている。

幻想郷のほとんどすべての妖怪達に懐かしがられて、受け入れられている。


「あー、そうきたか」

「ほら、魔理沙とかパチュリーとか魔法使いは霊の扱いには不向きでしょ? できないことはないでしょうけど、精霊魔法とか元素魔法とかが専門だし」

「アリスに至っては人形使いの魔法だからねぇ」

「でしょー?」

青娥は単に世間話しているオバチャンみたくなってる。


魔理沙は捨食の行を経て魔女となっていた。

今では魔法の森に住む魔女の一人だ。

魔女になってからも、博麗神社にはちょくちょく顔を出していたようだが、次代になってからは神社には顔を出さなくなった。

それでも霊夢とは会っていたようではあるが、ある時を境に森に引きこもるようになった。

どうやら老いて行く霊夢に会うのが耐えられなくなったという噂であった。

当代の霊夢になった途端、また神社に遊びに行き出したとか。


「まあね、うち(命蓮寺)も法力はあるけど大体が肉体強化だしなぁ…」

ムラサは寺の面々を思い浮かべる。


(あかん、全員、脳筋っぽい)


「それで道術に通じている私に白羽の矢が立ったってわけ」

「なるほど、そうなるよなぁ」

ムラサはそこで納得というか観念した。

「船長、この仙人は性格には問題ありますが、腕前は確かです」

「一言多いわよ、もう!」

青娥はふん!とそっぽをむく。

「そうむくれないで下さい」

パープルは宥めつつ、頭を下げる。

「我々、外の世界の者は、法術には疎いので是非お力を借りたいのです」

「船長さんは礼儀正しいわね、どっかの舟幽霊とちがって」

「あー、うるさいうるさい」

仲が良いのか悪いのか、青娥とムラサは言い合いを続けている。

「ゴホン、とにかくムラサ、青娥さんと芳香さんに船を案内してくれ」

パープルはチラッとムラサに目配せした。

監視は頼んだ。

という意味らしい。


(やっぱブラックじゃねーか、宇宙軍…)


「はい、船長」

ムラサは渋々うなずいた。


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