4話 勘繰りひどい
パンチ
〇タカシは起きた瞬間やばかった。4:44分に目が覚めたのだ。
「おれやべえ」
タカシはふと小学2年の時に流行った、「4時44分に起きたら四次元に飛ばされてしまう」という都市伝説を思い出した。
「やべえ。、4次元飛ばされるぅ」
しかし、飛ばされなかった。
目が覚めてから、起きるか起きないかを悩んだ後時計を見ると4:44分だったのだ。要するに起きた瞬間は4:44分じゃなく4:42分もしくは43分だったのだ。タカシは少し安心した。
「怖いな。早く寝すぎると早く起きてしまう。四次元に飛ばされる可能性が出てくる。もう少し夜更かししてもいいかもな」
4:44分に一瞬、三次元世界に四次元ポケットが開かれる。その瞬間に覚醒すると四次元ポケットにチャネリングされ、そのまま四次元に飛ばされるのだ。
タカシはこの都市伝説が流行ったのが小学2年生の頃だったことを、はっきり覚えている。
クラスメイトの仙波さんが行方不明になったのがその頃だからだ。
仙波さんは2005年8月7日行方不明になったのだ。仙波さんは8月7日の朝いなくなった。その日は雨であった。仙波さんの母親が朝、部屋に起こしに行くとそこに仙波さんはいなかったのだらしいのだ。クラス中で噂になった。誘拐事件だと言われ、保護者に不審者警戒の配布物が渡された。保護者は慌て、子供たちの外出を制限した。その期間放課後遊べない友達はほとんどだった。タカシはヨシカワという友達と遊んだ。ヨシカワはいつでも遊べるのだ。ヨシカワの口から「門限」という言葉を聞くことは無かった。ヨシカワはいつでも何時までも遊べた。
雨の中、タカシたちは大和川に遊びにいった。川の流れはいつもの穏やかな流れに比べると凄まじかった。流れる水はまっ茶色で、河川敷まで飲み込みかけている。タカシたちは堤防からそれを眺めた。雨で髪も服もびしょ濡れだった。ヨシカワは言った。
「ヤバいな」
「うんヤバい」
「タカシ、お前、雨男」
「うん。おれってやばいからな。雨降らすよ」
「おれもなかなかの雨男だよ」
「てことは、おれらのせいで雨降ってるな」
「うん。おれらのせいだよ」
「やばいな」
「超やばい」
その次の日だった。四次元の都市伝説が大流行した。学校に行くと誰が言い出したのか、皆がみんな四次元の都市伝説の話をしてるのだ。
四次元ポケットは4:44分に開かれる。その瞬間起きるとそのポケットに入ってしまう。身が引きちぎられるようなの痛さを感じる。靴下が片方だけ三次元世界に置いて行かれる。仙波さんのベッドにも靴下が片方だけあった。
いろんな噂が横行していた。
四次元の使いが来てそいつに連れてかれる、とか。
片方の靴下の中に四次元ポケットが発生する、とか。
だから、靴下を履いて寝てはいけない、とか。
親が殺した。とかまであった。
タカシとヨシカワもそれについて話合った。
ヨシカワの最終結論は「火の無いところに煙は立たない」というあいまいで根本的なことだった。タカシはどの説が正しいかを話し合いたかったのでヨシカワの考えには落胆した。現に仙波がいなくなってるんだから、それが火じゃんと思った。すかしやっがて。
タカシの説は、「仙波さんは四次元でおれを待ってる」と言う結論を出した。その日から靴下を履いて眠ることが多くなった。
仙波さんが行方不明になった。そのせいで四次元の都市伝説が流行した。だから四次元の都市伝説はタカシの中で容易に思い出せる、鮮明な出来事だった。
タカシは暇だったので夕方から唯一セックスさしてくれる女と遊びに行った。居酒屋で飯を食い酒を飲み、ラブホテルに行き、セックスして寝る。それだけである。
セックスをやり終わり。女はもうすでに寝息をかいている。タカシはテレビで東京03のコントライブを見ながら眠った。
タカシは目を覚ました。目を覚ますと東京03のコントが終わっていて、ラブホテルによくあるホーム画面になっていた。iPhoneを見た。
4:43分だった。
2日連続となると怖いなと思った。あと一分遅かったらやばい。
明日は2時とかに起きてこの時間に目覚めないようにしよう。横を見ると女は背中を向けて寝ている。
タカシはウォータークーラーで水をつぎ、一気飲みした。
くれえ