依頼中の一幕
ラトリスがカグラとデュランダルを手に入れて一ヶ月が経った頃、ラトリスは森の中でカグラの手入れをしていた。
「…ふう、こんなものか?」
しっかりと磨き上げられた刀身がキラリと光る。
(有難う御座います、ラトリス。)
(自分の命をかけるからな。しっかりと手入れはしてやりたい。それより、魔法を付与してからの調子はどうだ?)
この一ヶ月の間に、ラトリスは様々な事を試した。どれぐらい切れ味が良いのか、はたまたどんな魔法に耐えられるのかを。結果、カグラは要望に全て応え、オリハルコンを軽く切り裂き、ラトリスが扱える全属性の付与魔法に耐えた。
(本当に凄いな、お前は。唯一普通に話せないことと、自立して行動出来ない事を除けば完璧だ。)
(やはり自立して行動出来る方が良かったですか?)
(勝手に動き回るのは気持ち悪いが、俺が対処出来ないときの保険にはなっただろうな。別に責めている訳じゃ無い。)
(そうですか。しかし、あなたも素晴らしい。)
(ん?)
(短期間で私の扱い方を熟知しました。これは素晴らしい以上の言葉が見つかりません。)
(そうか…誉め言葉として受け取っておく。)
(はい。)
「何時までカグラ殿と話をしておられるのか?
傍に置いていたデュランダルが言った。
「なんだ、どうした?」
「2人の会話は理解できないが、疎外感が凄まじい…」
「まあな、お前はお前で良い剣なんだがな。どうしてもカグラと比較してしまう。」
「むう、確かに私は炎系しか付与出来ませんからな。切れ味もカグラ殿の方が上ですからな。」
デュランダルの気持ちは少し凹んだ。しかし、
「自立行動、自己修復、自己防衛機能があるからな。その辺は当てにさせてもらうよ。」
「確かにそこはカグラ殿には負けませんからな。」
(ラトリス、マリア達が来たようです。)
「意外と早かったな。」
ガサガサと茂みをかき分けてマリア、ミーナが姿を現す。その後ろからレイナとミーアも続いて出て来た。
「ふぅ、良いお湯でした。」
「温泉気持ちいい。」
「本当ね、肌がスベスベになったわ。」
「いつものお風呂もこんな感じだと良いですね。」
そんなことを言っていた。ラトリス達は今、依頼としてゴブリン駆除、ハンマーヘッドウルフとラージグリズリーの討伐に来ていた。そして無事に終わって、ラトリスの提案で温泉を掘り、入浴していたのだった。
「いい湯だったようだな。」
「はい。ラトリスさんも入るでしょ?」
「あぁ、俺も行ってくる。カグラとデュランダルは置いていくから、後は頼むぞ。」
そう言って、腰を上げて温泉へと向かった。
「しかし、主は何を考えているか解らん。」
「デュランダルさん、どうしたのですか?」
「こんなにも見目麗しい女性に囲まれているのに、手を出さんとは。」
「一応、誉め言葉として受け取っておくけど、ラトリスさん好きな人がいるらしいわよ。」
「それでもだ。据え膳食わぬは男の恥だと、前の主は言っていた。」
「人を据え膳扱いしないで下さい!」
「おぬし達も思わんか?1人の女として見て欲しいと…あたっ!」
棒切れが飛んできて、デュランダルに直撃した。
「丸聞こえだ、馬鹿野郎!」
遠くからラトリスの罵声が聞こえた。
「あーぁ、お兄ちゃん怒っちゃったよ?」
「むぅ、主は何を考えているのか。」
「良いじゃないですか。」
ミーアが言った。
「取っかえ引っかえする殿方より、一途な殿方の方が好感が持てますよ。」
「ミーアさん。」
「そうよ、ミーアさんの言うとおりだわ。」
「そうだね、お兄ちゃんはそうでなきゃ!」
「…人間とはよくわからんなぁ。」
しみじみと感慨に耽るデュランダルだった。
(…)
その話をカグラは静かに聞いていた。
読んでくださっている方々、有難う御座います。




