不穏
デュランダルを手に、他の人間が待っている謁見の間にラトリスは向かう。その途中でラトリスはデュランダルに聞いた。
「この国の王子2人を発狂に追い込んだのか?」
「私の意思では無い。」
「どういうことだ?」
「其方のように話しかけるでもなく、いきなり掴んできたのでな。失礼な奴だと思って襲いかかっただけだ。」
「トラウマからの発狂か。だらしのない話だ。」
「私もそう思う。」
(ラトリス、気をつけて下さい。)
(どうした、カグラ?)
(謁見の間から邪気がします。)
(あぁ、俺も感じている。しかも1つじゃないな。)
(はい。)
「どうされた、ラトリス殿?」
「あぁ、カグラと話をしていたんだ。」
「何やら不穏な気配がする事ですか?」
「そうだ。どうやら、厄介事に巻き込まれそうだ。」
そう言っているうちに謁見の間の前に着いた。扉を開けると、そこにはマリア、レイナ、ミーアが立っており、マロン、ライザー、他の使者だった男達が倒れていた。そして、奥にはミーナが男達に捕まっているのが見えた。男は2人、1人はミーナを羽交い締めにし、もう1人は剣をミーナの首筋に向けていた。
「どういう状況だ、これは。」
「ラトリスさん、デュランダルは!?」
「無事に手に入れたよ。」
「ほう、あの剣を手に入れたか。そいつを渡して貰おう。」
男の1人がそう言った。
「…この国の王子か?」
「ふん、その剣さえあれば用は無い。さっさと渡せ。さもなくばこの子は死ぬぞ?」
「お兄ちゃん…」
ミーナが辛そうな声でラトリスを呼ぶ。
「ラトリス殿、私なら大丈夫です。奴らに渡して下さい。」
「…」
デュランダルの言葉に、ラトリスは信用して、ある程度近付いてデュランダルを床に突き刺すと、距離を取った。男2人はそれを見て、ミーナを離してデュランダルに近付いた。
「ふん、忌々しいが、これで王位継承は俺のものだ。」
そう言って、デュランダルを掴もうとした。しかし、
「甘いな…」
デュランダルがそう言うと、周囲に電撃を発した。その電撃をまともに受けて、
「うぐぁ!」
「ぐひぃ!」
と、悲鳴を上げて二人の男が倒れた。
「お前達を主と認めるわけがない。もう既に主は決まっているのだから。」
「良くやった、デュランダル。」
ラトリスが近付き、再びデュランダルを掴む。
「流石伝説の聖剣。自己修復の他にも自己防衛機能付きとはな。」
「誉め言葉、痛み入ります。」
(私には出来ませんね。)
カグラは少し残念そうに言った。
「うぅ…」
マロン達が気が付いたらしく、起き上がった。
「大丈夫か?」
「はっ、はい。それよりラトリス様、その剣は…」
「そう、デュランダルだ。」
「…そうですか、無事に手に入れたのですね。」
「そうだ。」
マロンが少し残念そうな顔をした。
「もし私に力があれば、その聖剣を受け取るのですが、残念ですわ。」
「シュラン王国聖剣デュランダル、確かにこのラトリスが受け取った。」
声高らかにラトリスが進言した。
「大切にしてあげてくださいませ。」
「大丈夫だ、主に仕えるのが聖剣の役目だ。」
デュランダルがそう言った。
「デュランダル、あなた、話せるのですか?」
「七聖武器は全て話が出来る。神が作ったものだからな。」
「お前を作ったのは誰なんだ?」
「この大陸を創った、アテナ様です。」
「そうか。(あいつがな…)」
「ラトリス殿?」
「いや、何でも無い。」
ラトリスは少し考える素振りを見せたが、直ぐに素の表情に戻った。
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