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弱小ギルドの最強英傑(ラトリス)  作者: ミュウ
出会い編
9/138

特訓 その4

特訓はそろそろ終わります。

宜しく!

重力10倍の特訓をして、一ヶ月が経過し、マリアとレイナの二人がそれをも克服したある日のこと、三人はリビングでお茶を飲みながら寛いでいた。

「そろそろ特訓の最終段階に入ろうかな。」

「確かに、もう楽々と動きまわれるようになりました。」

「最初はどうなるかと思ってたけど、やってきた努力は無駄にならないのがよくわかったわ。」

「まあ、特訓の最終段階といっても、木の葉切りと、極大魔法の制御なんだがな。これがまた難しいんだ。」

「そうなんですか?」

「そりゃそうだろう?木の葉切りは木を倒さずに木の葉だけ落とす力加減と、正確な見切りが必要、魔法制御は必要な魔力をどれだけ圧縮出来るかにかかっているんだ。並大抵の事じゃないんだぜ、あれは。」

「そんな器用な事をしていたんですか?」

「そんなことにも気づいていなかった事に驚きだ。」

ラトリスは失笑した。

「まあ、この特訓はそんなに重要じゃないけどな。二人は充分に俺の期待に応えて、強くなってくれたから。」

「でもやりますよ、更に強くなるために!」

「誰にも文句は言わせないわ、私達がそうしたいのだから。」

「じゃあ、昼からはそのトレーニングをしておいてくれ。俺は少し出かけてくる。」

「えっ、何処へ行くんですか?」

「ギルド協会にな。間違って依頼が来てないか、一応毎週確認に行っていたんだよ。」

「そうだったんですか。」

「ついでに食料の買い出しもな。二人ともしっかり食べるから、食費も馬鹿にならんからな。」

「そっ、それは…」

「フッ、ちゃんとツケにしてあるから、そのうち払ってもらうさ。今はしっかりと特訓していてくれれば良いのさ。」

ラトリスはそう言うと、家を出て行った。

「…当たり前のように特訓ばかりしていたけど、本来なら馬鹿に出来ないほどお金を使っているんですね。」

「…世間のことも全然解らないし、早く恩返し出来るようにならなくちゃね。」

そう言って、二人は特訓へと向かった。


特訓を再開してから1時間後、玄関の方から突然、

「たのもう、誰かいるか!」

と、声が聞こえた。

二人は特訓を止めて、声のした方へ向かった。

「はい、何か御用ですか?」

二人が玄関まで来ると、そこには三人の男と、一人の女が立っていた。

「ギルド“天の子猫“の家で間違いないか?」

大柄な男がそう言った。

「確かにそうですけど、あなた方は?」

「ギルド“天狼星“といえば解るだろう?」

「…?さあ、解りません。私達、その辺のことはあまり知らなくて。」

「なんだと!?フィリン支部唯一のS級ギルドを知らないのか?」

「さっぱりです。」

「ぐっ、まっ、まあいい。それより、“天の子猫“のギルド長はどこにいる?」

「えっと、一応私になっているのかな?」

マリアがレイナに聞いた。

「えぇ、あなたがギルド長で、私が副ギルド長になっているわよ。でも、実質はラトリスさんがやっているわよね、今は。」

「じゃあ、そのラトリスってのを呼んでくれ。話がある。」

「今はいないんです。買い物に出掛けていて、いつ帰ってくるかも分かりません。」

「まあ良いじゃない、待たせてもらえば。この家の間取りも見ておきたいし。」

「「?」」

そう言うと、女は家の中を物色仕始めようとした。

「勝手なことはしないで下さい!」

「あら?別に良いじゃない、もうじき私達のものになるんだから。」

「なんですって!?」

レイナが驚いたような声を上げた。

「もうじき私達“天狼星“のものになるっていったのよ。弱小ギルドの“天の子猫“のものじゃ、この家も勿体ないでしょう?」

「それは聞き捨てならないな。てか、初耳だぜ。」

やり取りの最中、ラトリスが帰ってきた。

「てめえがラトリスか?」

「てめえ呼ばわりのも、呼び捨て扱いされる筋合いもねぇよ。」

「なんだと!?」

「落ち着け。えっと、ラトリス・・・さん?」

「なんだ、話の解らねぇ馬鹿ばっかりかと思ったが?」

「まあ、そう言わないでくれよ。あんたにいい話を持ってきたんだ。」

「ん?いい話?金の話か?だとしたら間に合ってるぜ。個人資産で言ったら一国一城の主に慣れる位持ってるからな。」

「いや、そうじゃねえよ。」

「だったら帰れ。」

「そう言うなって。喜べよ、あんたらを俺達のギルドにいれてやるって話さ。」

「「はぁ!?」」

マリアとレイナが素っ頓狂な声を挙げた。

「あんた達三人はこれから“天狼星“の一員になる。で、その見返りに、この屋敷を“天狼星“のギルド本部として使う。その話しに来たんだ。」

「ちょっと、一体何を言って…」

「黙ってな、嬢ちゃん。俺はラトリスさんと話をしているんだ。」

「貴方達の実力を見込んで話をしているわ。光栄に思いなさい。最上級ギルドからお声掛けして貰えているんだから。」

「へっへっへっ、その通りだぜ。結論は決まっているだろう?なぁ、ラトリスさんよぅ。」

「…」

ラトリスは立ったまま目を瞑って微動さにしない。

「まだギルドとして何もしていないのに、なぜそんな話になるんですか?」

「新しいギルド協会フィリン支部会長がな、三ヶ月仕事をしていないギルドは取り壊すって決めたんだよ。で、今まで何の功績も挙げていないあんた達に白羽の矢が立った。このままギルドを潰して、俺達のギルドに入ればいい。その代わり、屋敷は“天狼星“で使わせて貰う。な、いい話だろう?」

「そんな、ラトリスさん?どうするんですか?」

レイナがラトリス見た。すると…

「返事は今する必要があるのか?」

「取りあえず1週間は待つぜ。その間に色々そこの嬢ちゃん達に話してやんなよ。まぁ、このまま行けばギルドは取り潰しになるけどな。そうなったら、くっくっくっ、困るのは誰だろうなぁ?」

そう言うと、四人は出て行った。

ラトリスは小さく溜息をついた。

「やれやれ、もう少し時間があると思ってたんだがな。」

「ラトリスさん、本当にあの人達のギルドへ行くことになるんですか?」

「まだ何もしていないのよ?潰されるなんて冗談じゃないわ!」

ラトリスは少し笑うと、二人に近づき、頭に手を置いた。そしてくしゃくしゃと頭を撫でた。

「安心していい。そんなことはお断りだ。」

「じゃあ、何で言い返さなかったんですか!」

レイナが怒声を挙げる。

「あのままだとこの場で戦う羽目になってただろうな。特訓が終わるまでお前達を戦わせたく無いんだよ。」

「「…」」

「…解った。少し早いが、最後の特訓をしよう。」

「本当ですか!?」

「今までで、1番過酷な訓練だ。やれるか?」

「「はい!」」

二人は元気よく返事をした。

「じゃあ、準備があるから、1時間にウォーミングアップをして裏庭に出ていてくれ。俺は少し買い出しに行ってくる。」

そう言って、ラトリスは出て行った。


1時間後、ラトリスは戻ってきた。が、その傍らには、奴隷と思しき屈強な男が二人、手錠をかけられて立っていた。

「ラトリスさん?その人達は?」

「へっへっへっ、旦那ぁ、この子たちですかい?」

「そうだ。お前達が勝ったら自由にしてやるし、ギルド協会に斡旋もしてやるよ。」

「けっけっけっ、中々上玉じゃないですかぃ。殺す前にお楽しみもしてぇなぁ。」

「好きにして良い。殺しても構わない。が、本気でやれよ。」

「へっへっへっ、解ってまさぁ。」

「ラトリスさん、どういうことですか?」

ラトリスは答えず、男達の手錠を外した。

「久しぶりに手が軽くなったぜ。俺は金髪ちゃんとやるぜ。」

「じゃあ、俺が銀髪かぁ。」

男達はそれぞれの相手に向かって身構えた。

「獲物は何かいるか?」

「じゃあ剣を頂戴したい。」

「俺は槍だな。」

ラトリスはアクセスの魔法で異空間を開き、それぞれに剣と槍を渡し、少し距離を取った。

「それじゃあ始めるか、嬢ちゃん達。」

「悪く思うなら、あの兄ちゃんを恨めよ。」

「やるしかないね。」

「そのようね。」

マリアとレイナの二人も身構えた。

まずマリアが前に躍り出た。っと、同時に男の一人がそれに肉薄する。

中庭の中央で二人はそれぞれ剣を振るい、鍔迫り合いを演じる。

「近くでみりゃあ、更にべっぴんさんだな。殺すのが勿体ねぇ。」

「それはどうもです。」

マリアは思いっきり力を込めて押し返し、上段から袈裟懸けに剣を振るい、男の剣は当たった瞬間に折れてしまった。剣は男の目の前で止まったが、余程ビビったのか、男は失禁し、泡を吹いた。

「ふぅ。レイナは?」

マリアがレイナの方を見ると、離れた場所で男が痙攣を起こして倒れているのが見えた。

レイナの初級魔法サンダーボルトを受けたのだろう。ともかく決着は早くも決した。

「一体、何の特訓なんだろう?」

「そうね、よく解らなかったわ。」

すると、ラトリスが近づいて来て、

「何をしている?早くトドメをさせ。」

と、言った。

「えっ、でも…」

「この特訓はな、お前達に命を絶つということの重要性を教える訓練だ。トドメを刺さなきゃ意味が無いんだ。早くやれ。」

「でも、そんなこと…」

「一つ、教えておいてやる。この二人が何故奴隷になったかだ。」

ラトリスは溜息をついて話し始めた。

「此奴らは罪を犯したんだ。罪状は殺人、強盗、強姦。少なくとも30件はやっているな。そしてフィリア王国に対しての国家反逆罪だ。」

ラトリスはそう言いながら近づき、男の一人の顔を踏みつけた。

「だからこんな奴ら生かしておいても害なだけなんだよ。」

「そうは言いますけど…」

「何もそこまで…」

「じゃあお前達は、ゴブリンとかドラゴンに襲われてもトドメを刺さないのか?」

「いいえ…」

「人間にトドメを刺せないなら、この先モンスターに襲われても何も出来ないぞ。だからいっただろう?1番過酷な訓練だって。トドメを刺せないなら、訓練は失敗だ。故郷に帰るといい。」

そう言って、ラトリスは踵を返した。

それを見て、マリアとレイナの二人は、

「ラトリスさん、待って下さい。」

「…なんだ?」

ラトリスが振り返ると、マリアとレイナの二人は、それぞれの相手だった倒れている男達に向き合い、それぞれに、

「「フレイム!」」

と、魔法をかけた。

男達は悲鳴を短くあげ、暫く藻掻いていたが、直ぐに動かなくなった。それを見て、マリアとレイナの二人は少し嫌悪感を抱いた。

「よくやった。命を絶つ、それの重さが解ればいい。慣れろとは言わないがな。」

ラトリスは静かに二人を抱きしめた。

そして、二人は暫く泣いていた。

最近若本規夫さんの声まねにはまっています。

え、どうでも良い?むちゃくちゃ似てるって言われるけどなぁ。(ブツブツ…)

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