魔剣
ラトリスが部屋に入ると、直ぐに扉が閉まった。念のため扉を調べると、開かなくなっていた。と、
「誰?」
突然奥から声がした。ラトリスが声のした方へ進んで行くと、1本の刀が地面に刺さっていた。
「珍しい形の剣だな。」
ラトリスは言った。この世界に日本刀の形の剣は存在していなかったので、ラトリスも初見だった。
「あなたは誰?」
「やはり先ほどの声はお前か。俺はラトリスだ。」
「ラトリス?聞いたことがない。」
「だろうな。ここに長い時間閉じ込められていたんだろう?」
「そうです。何年か覚えていない程に。こうして話をするのも、久しぶりです。」
「お前は武器なのか?」
「はい。刀と呼ばれる剣です。」
「刀?」
「私は異世界から来ました。」
ラトリスは驚愕した。
「“日本“という国で生まれ、沢山の人を斬らされ、気が付けばこの世界にいました。」
「お前が生まれた国は、剣が喋るのか?」
「いいえ、私は特別だったと思います。」
「そうなのか、この世界でも聖剣とかは喋るが、お前もその類かと思ったが…」
「聖剣…いいえ、私は魔剣と呼ばれていました。」
「異世界から来た事を話した事があるのか?」
「話をしたのはあなたが初めてです。寧ろ、私の声が聞こえたのは、あなたが初めてです。」
「ん?今まで何人かお前に会いに来て、呪いを受けたとかいう話があるが、あれは?」
「全くの嘘ですね。」
「そうか…名前はあるのか?」
「カグラ、そう言われていました。」
「そうか、じゃあカグラ。ここから出たくないか?」
「それは…無理です。」
「なぜ?」
「私を抜いた人は、今まで誰もいません。」
「そうなのか。じゃあ、俺が第一号って事になるな。」
そう言って、ラトリスはカグラを握った。そして引き抜こうとして力を込めるが、カグラは微動だにしなかった。
「む?硬いのか重いのか解らんな。」
「…」
「どうした、カグラ?」
「あなたの目的はなんですか?」
「目的?」
「私を手にして、何をしようと思っているんですか?」
「とりあえず、守りたい国があるんだ。」
「…国?」
「仲間や友達がいるんでな、その人達を守りたい。そのためには、今この国に消えられると困るんだ。」
「…それ以外には?」
「…好きな人がいるんだ。その人を探している。その人に逢うまで、死ぬわけにはいかないんだ。」
「…」
ラトリスはカグラの柄では無く、鞘を握った。
「カグラ、お前が必要なんだ。だから、俺の相棒として、一緒に来てくれ!」
ラトリスはそう言って、力を込めた。すると、今まで微動だにしなかったカグラが、鞘ごと地面から抜けた。
「はぁはぁ。」
ラトリスは汗だくになっていた。
「解りました。」
「なにが解ったんだ?」
「あなたの熱意、すべて真実だと思います。私を連れて行ってください。私は…あなたの剣となります。」
「カグラ、有難う。」
こうして、ラトリスはカグラを手に入れた。
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