特訓 その3
ただいま特訓中です。宜しく!
マリアとレイナの二人が特訓を始めて一ヶ月が経過し、二人は見違えるほど強くなっていた。
「最近強くなってるんだと実感出来るようになりました。」
「私も。まさかファイター並みに剣を振るうことが出来るなんて、思ってもみなかったわ。」
「三ヶ月の予定が、一ヶ月で出来るようになるとはな。剣技の方は、これくらいで良いかもしれんな。」
ラトリスも微笑ましく、二人を見ていた。
「ラトリスさん、次はどんな特訓をするんですか?」
「今なら、何でも出来る気がするわ。」
「調子に乗るな。そんなことを言っている間はまだまだ足元を掬われる段階なんだよ。しかしまぁ、強くなったのは確かだしな。もう一段階、グラビティの魔法を強化してみるか?」
「「へ?」」
「無属性魔法グラビティは段階を踏むことが出来るんだ。今かけているのは、重力で言うと5倍くらいだ。10倍にまで増やしてみるか?動けなくなるかもしれないが。」
「ち、因みにラトリスさんは何倍位を?」
「40倍かな?今は。」
「よっ、40倍!?」
「昔は100倍にしてたけど、あんまり意味ないかなって思ってな。」
「桁が違いますよ!?」
「てなわけで、10倍の重力にきりかえるか、それとも止めておくか?」
「うーん、またしばらく家の中だけで過ごすんですか?」
「まぁ、襲われたりする心配があるからな。二人に何かあったら困るしな。」
「そうですね。じゃあ10倍の重力に挑戦します。」
「ちょっと、マリア!本気なの!?」
「これ以上強くなるためなら、それくらいはしないと。レイナはいやなの?」
「…やるわ。貴女と一緒に強くなるって決めたんだもの。」
「決まりだな。じゃあそこに並んで、目を瞑っていてくれ。」
二人は並んで目を瞑った。
ラトリスは二人に向かって手をかざして、
「グラビティ!」
と、魔法を唱えた。すると、体にかかる重力が倍になる。二人は重力に押し潰されないように力を込めた。
「こっ、これが10倍。確かに動くのもままなりませんね。」
「あっ甘く見てたわ。」
「そういえば、不思議なことを話してやろうか?」
「なっ、何よ。」
「その状態で椅子に座ったりベッドに横になったりしてるだろう?」
「「…あれ?」」
二人は同時に首を傾げた。
「そういえばそうですよね。私達が乗っても潰れないほど頑丈…とか?」
「フッ、実は重量が増えているんじゃなく、そう錯覚させているだけなんだよな、グラビティの魔法は。」
「っていうと?」
「重さを感じはするが、周りには影響がない。今の場合は下着に作用しているから、下着が重く鳴なっていると感じている。だから着けている人間は同じように重く感じているのさ。」
「…よくわかりません。」
「まぁ、グラビティの魔法を受けたとしても、気合を入れれば自由に動けるってことさ。覚えとくと良い。」
「…魔法は不思議だけど、もっと内容は複雑なのは解ったわ。」
レイナは重力に耐えながら言った。
昼からは魔法の特訓だ。
「今日は魔法の種類の話だ。」
「それは知っているわよ。火、水、雷、風、光、闇そして無属性魔法でしょ?」
「じゃあ階級は?」
「初級、中級、上級そして極大。そしてそれが無属性以外全部にあるんですよね?」
「ふむ?あとひとつあるんだが?」
「「へ?」」
「あと一つ、その名も神級魔法と呼ばれる物がある。」
「でもそれって、人には使えない魔法じゃ…」
「そうそう。人の域を超えた存在じゃなきゃ、撃った衝撃で骨すら残らないって、伝説で語られている魔法よね?」
「そこまで知ってるんなら、なぜ言わない?」
「使えないものは言わない方が良いかなぁって…」
「ま、普通そうだわなぁ。…今二人には上級魔法を教えているが、体の方は大丈夫か?」
「グラビティの影響以外は特に無いわ。」
「私も。」
「本来、中級魔法は初級魔法の10倍、上級魔法は中級魔法の10倍は魔力を消費すると言われている。ましてや二人は同時に無詠唱魔法の体得を目指していたから、余計に魔力の消費が激しいんだ。けど、二人はそれに耐えてきた。」
「えぇ、私もギルドには中級魔法までしか使えないって報告をしていたわ。」
レイナが頷きながら答えた。
「魔法名だけで唱える無詠唱魔法の本当の真髄は、魔力の総量に関係することなんだ。」
「それって?」
マリアが不思議そうに聞き返した。
「元々、魔力の消費を押さえ込み、より簡単に魔法のイメージをすることができる詠唱魔法は、使い手を腐らせてしまう。唱えているうちは一切魔力を使わないからな。唱え終わったら魔力を放出する分の魔力が消費されているんだ。それだと最大魔力の消費まで時間がかかり、魔力の総量は増えたことにはならない。しかし、無詠唱魔法は予め魔法を常にイメージしておかなくてはならなくて、そのイメージが大きければ大きい程、常に魔力を喰い続ける。魔力総量を伸ばすには、魔力枯渇寸前まで魔力を使い続ける必要があるんだ。」
「確かに、最初の頃はイメージが出来てないってよく言われていましたね。」
マリアがそう言うと、レイナが頷いた。
「今の二人なら、極大魔法一発分、そしてそれに耐えうる体、そして魔力総量的にも問題は無いはず。一部の人間しか身につけた事の無い、極大魔法。覚えてみる気はあるか?」
「…怖いけど」
「やるわ。強くなるって決めたんだもの。」
「…解った。ただし、極大魔法は絶対に人に使うな。ドラゴンやモンスター、、本当に倒せない相手にだけ使うように。」
「「はい!」」
と、そこでマリアが不思議に思った。
「あれ?でもラトリスさんは前に落ち葉を燃やすときに使ってませんでした?」
「あれは単なるデモンストレーションだ。しかも本気じゃなかったし。」
「そうよ、マリア。本気の極大魔法だったら、私達もあの時消し炭になってたわよ。」
「ひぇぇ、お、恐ろしい魔法なんですね。」
「最初は詠唱ありで覚えるといい。極大魔法は厄介だからな。」
「「はい!」」
そう言って、二人は極大魔法習得へと進んでいった。
特訓風景書くのがキツい。いきなり強くしても良かったかなぁと、後悔。
約一ヶ月分を書き終えて、二ヶ月目、さらなる強化へと進んで行きます。
宜しくお願いします!