ラトリスの好きな人
トーム村に来て三日目の朝、ラトリス達はマリアの家の裏庭でトレーニングをしていた。
「だから違うって言ってるだろ?」
「そうは言いますけど…」
「早さよりも、威力重視の攻撃じゃ、躱されたときの隙がデカいんだから、もっとコンパクトに熟さなきゃ。」
「うーん、難しいなぁ。」
「まあ、休憩しよう。」
「やったー!」
「…一体、何のトレーニングを?」
マリアの父親がやって来て質問する。
「おはようございます。普段の早朝トレーニングですよ。」
「こんな高度なトレーニングを毎日?」
「そうですね、今日は速度重視のトレーニングなんですが、マリアがどうにも威力重視の攻撃を行うので…」
「そうですか…よくわかりませんが、もうすぐ朝食ですよ。」
「じゃあここまでだな。」
「ふう、良かった。」
「反省はしておけよ。」
「…はい。」
4人で家の中へ入っていくと、既にレイナの両親も席に着いていた。
「…」
「ラトリス君、何か疑問が?」
「いえ、毎日お二人がいるので、いつもこんな感じなのかと…」
「ははは、君たちが村にいる間だけだよ。色々聞きたい事もあるから。」
「聞きたい事?」
「何時までこの村にいられるのだ?」
「あとは三日程で、再びフィリンに戻ろうと考えています。」
ラトリスがそう伝えた。
「出来れば、ずっといて欲しいのだが、それは駄目か?」
「…マリアとレイナがそれを望むなら、2人は残ってもいいと考えてはいますよ。2人は充分に強くなりましたから。」
「「ラトリスさん!?」」
「私達は、君にも残ってもらいたいのだよ、ラトリス君。」
「私は無理です。」
「それはなぜ?」
「…やる事は何もありません。目標もね。」
「じゃあ…」
「しかし、大切な人と約束したことがあります。困った人達を助けたい、それが今の自分を突き動かす動機です。」
「でも、依頼は来ないのだろう?」
「Gクラスギルドなら、そんなものだと考えていますが、格安で受けるにはそうするしか方法がないから…依頼は全て受けますけどね。」
「なるほど、君の気持ちはよくわかった。しかしなぁ…」
「?」
「マリアとレイナ、どちらかを嫁に貰うというのはどうだろうか?」
「「ぶっ!」」
マリアとレイナは盛大に吹いた。
「げほっげほっ!」
「ちょっと、叔父さん!」
「なぜだ?吹くことはあるまい。」
「それもお断りします。あくまで師匠ですから。それに…好きな人がいますから。」
「そうなのか?」
「それって、ララちゃん?」
「?なぜ、ララの名前が出てくるんだ?」
「違うの?」
「ララは友達だが、そういう目で見たことはない。別の人さ、今は遠くにいるけど、必ず見つけ出してみせるさ。」
ラトリスは、遠い目をしていた。
読んでくださっている方々、有難う御座います。




