特訓 その2
7話目です。宜しく!
ラトリスが課した特訓を、二人は着実にこなしていた。
「998、999、1000回!」
「も、もう駄目!?」
二人は倒れ込んで、息を荒げた。
「はぁ、はぁ…もうくたくたです。」
「ほっ、本当にそうね。」
「へぇ、1000回出来るようになったんだな。」
二人が後ろを振り返ると、ラトリスが立っていた。
「中々どうして、根性あるなぁ。」
「まぁ、出来るようになるまで他の特訓をしてませんから。」
「それに、キュアの魔法も覚えたから、疲れを感じたら回復すればいいしね。」
「まぁ、普通の奴らはキュアの魔法の本質を知らないし、そもそも使えないからな。ほとんど反則技に近い方法なんだけどな。」
ラトリスは少し笑って言った。
「これなら、次の段階へ進んでもいいかもな。」
「本当ですか!?」
「毎日毎日素振りだけじゃ、少し飽きてたのよね。」
「そうか、そりゃあ悪いことをしたな。」
そう言うとラトリスは少し考えて、
「じゃあ組み手をやるか。」
と、言った。
「組み手?」
「ラトリスさんと?」
「いやいや、二人で組み手をするんだよ。最初は一挙手一投足を1分かけてやる。徐々にスピードを上げていくんだ。受ける方もゆっくりとよける。そういった特訓だ。」
「「…」」
「何だ?嫌か?」
「いえ、何というか…」
「すんごい地味な特訓だなって。」
「地味だけど、恐ろしく為になる特訓だぞ。俺なんか相手がいないから、長らくやっていないけど、対人における戦い方がよくわかるんだ。」
ラトリスはそう言って、
「お互いある程度距離をとって、始めてみな。俺が見といてやるから。言っとくが、これも全力でやるようにな。」
「下着にかかってるリミットの魔法のおかげで常に全力ですよ。」
マリアは少しふて腐れながら言った。
しぶしぶながら二人は距離をとり、ゆっくりと組み手を始めた。最初はゆっくりと、亀でも避けれるのではないかという程のスピードで始めた。
ゆっくりと、しかししっかりとした動作でこなしていくと、不意にぐう~とお腹が鳴った。
「よし、今日はそこまで。昼飯にしよう。」
「そっ、そうですね。」
「本当にお腹すいたわ。今日の昼食は何かしら?」
「今日は久しぶりにガルフの所へ行くか。」
「「賛成!」」
二人は喜んで同時に言った。
「毎日ステーキばかりじゃ飽きてました。」
マリアがそう言うと、
「栄養豊富でカロリー控えめのドラゴンのステーキでは不服なのか?」
「料理のレパートリーの話よ。毎日ステーキばかりじゃ飽きるわよ、普通。」
「…丸焼きにするだけじゃ駄目なのか?じゃあハンバーグにでもしてみるか。」
「…ブツブツ言ってるけど、それもすぐに飽きそうですよ?」
そんなことを言いながら、三人は満腹亭へと歩いて行く。
と、満腹亭の看板が見えたところで、突然戸が開き、中から人が放り出された。
三人の男達は立ち上がると、
「ちっ、二度と来ねえぞ、こんな店!」
「潰れちまえ!」
と、負け犬の遠吠えを挙げながら走り去っていった。
三人が中に入ると、
「また来たんですか!?いい加減にして下さい!」
と、カレンに怒鳴られた。
「来ちゃまずかったか?」
と、ラトリスが言うと、
「ラトリスさん!?すっ、済みません!人違いでした!どうぞ、座って下さい。」
カレンは席へと促した。
三人が席に着くと、
「今日はどうしますか?」
と、今までの喧騒は何処へやら、普通の接客態度へ変わった。
「俺はいつもの日替わり定食で。二人はどうする?」
「じゃあ一緒で。」
「私も。」
「飲み物はどうしますか?」
「いつもの通り水でいいよ。それより、マスターはいないのか?」
「今買い出しに行ってるんですよ。そんなときに限ってあんな人たちが来るんですよ、参っちゃいますよね。」
注文を受けると、カレンは奥へと下がっていく。
少し考えて、マリアが口を開く。
「一体何があったんでしょうか?」
ラトリスは、運ばれてきた水を一口飲んで、
「あれは地上げ屋だな。」
と、言った。
「地上げ屋?」
「あぁ、この辺一帯に縄張り張ってる碌でなし共の嫌がらせだな。俺達の家にも何回か来た事があるよ。殴り飛ばして、街中に裸で逆さ吊りしてやったら、二度と来なくなったけど。」
「さすがにそこまで私には出来ないですから、ほぼ毎日来るんですよ。」
料理を持って、カレンがやってきた。今日のメニューは魚のフライとサラダ、パンだった。
「お父さんも相手にするなって言うんですけど、お客さんとして入って来るんですよ。無下にあしらう訳にもいかないですから。」
「それは大変ですね…」
「なんとかならないのかしら?」
マリア、レイナ、カレンの三人は、ラトリスの方を見た。ラトリスはもぐもぐと魚のフライを咀嚼して、
「ゴクン。いや、俺に任せると店の前がとんでもないことになるぞ。」
「いやいや、そこは“俺に任せろ!“って言うところじゃないんですか?」
「俺が手を出しても、何も変わらんさ。マスターがなんとかするだろう?」
「まぁ、お父さんはそういう人ですけどね…」
カレンは少し落ち込んだ表情を浮かべた。
「俺が手を出したら、勝手な事するなとか、いいそうだからなぁ。まぁ、手はないことも無い。いよいよヤバくなったら、言ってきな。」
それを聞いて、カレンの表情は少し明るくなった。
食事を終えて、三人で帰路に立つ。
「さて、今日の昼からの魔法訓練だが…」
「えっ、ここからやるんですか?」
ラトリスはこくんと頷いて、
「飛行魔法フライを練習しようか。フライで飛んで、家まで辿り着く、それだけだ。着地は何回してもいいから、家までちゃんと辿り着くように。以上だ。」
「それ、地味にキツくないですか?」
「大丈夫、大丈夫!俺は先に帰ってるから。あっ、あと詠唱は禁止な。じゃあな、フライ!」
そう言って、ラトリスは飛んでいった
二人が家に着いたのは夕方頃だった。
「フライの魔法基礎も出来てきたか?」
「はぁはぁ、はっ、はい!なんとか。」
「着地回数は私が12回、マリアが16回よ。」
「ちょっ、レイナ!」
「着地回数は考えなくてもいい。全身に魔力を通す訓練に、フライの魔法は向いているからな。これから覚えていく魔法の基礎が解ればいいんだよ。」
「そうなんですね。」
「明日はもっとキツくなるから、覚悟しとけよ?」
「ひぇぇ…」
「おっ、鬼だわ、鬼が見えるわ。」
そんなことを話して、この日も過ぎていった。
特訓風景書くのめんどくさいなぁ…とかんがえています。まあ、後3話くらい引っ張ります。




