手紙の内容
出発準備は出来ていたが、結局夕方遅くに出発することになってしまった。
「夜はどこから狙われるか解らない。用心しておけよ。」
ラトリスはみんなにそう伝えた。馬車は夜間走行に慣れていないのか、行きよりも揺れていた。
「うぅ、凄く揺れるよぅ。気持ちわるいよぅ。」
「こら、ミーナ。そんなこと言ってないで、しっかり周囲を警戒してなさい。何があるか解らないんですからね。」
ミーアは優しくミーナを咎めた。
「ランタンの火だけで進んでいるんですから、こうなるのも無理はないですよ。」
「実際、マリアも酔ってるわよね?」
「レイナ!」
「はぁ、静かに出来ないのかねえ。」
馬車はそれでも先へ進んだ。と、王都を出て一時間が経過した頃、ミーナが言った。
「進んでいる方向から見て右に人がいるよ?」
「何人位?」
「んー、8人位かな?」
「また盗賊かしら?でも数が少ないような?」
マリアは少し考えたが、直ぐに馬車を降りていった。それにレイナ、ミーアも続く。ラトリスは馬車の屋根に乗っていたので、既に異変に気付いていた。
「ラトリスさん。」
「ああ、解っている。」
そう言うと、ラトリスは周囲を見渡した。
「確かに、右前方に人がいるな。」
「盗賊ですか?」
「殺気は感じられないな、用心に越したことはないけどな。」
暫く進むと、確かに8人の男女がいた。
「済まない、助けてくれないか?」
そう言うと近付いてくる。
「一体、何があったんですか?」
「私達はフィリアからフィリンに帰る途中だったんですが、思ったより遠くて。」
「それは大変ですね…」
「もしよろしければ、馬車に乗せていただけませんか?」
「うーん、どうなんでしょう?モリーさんに聞いてきます。」
マリアがそう言って踵を返そうとすると、
「待て。」
ラトリスがそれを止めた。
「どうしたんですか、ラトリスさん?」
「そんなに簡単に人を信用するな。」
「えっ、それって…」
どういうことなんですかと聞く前に、8人の男女が剣を抜いて襲いかかってきた。慌てて後ずさり、見切りをもって対処したので大事には至らなかったが、後ろを振り返っていたらと思うと…マリアはゾッとした。
「殺気位は普通に消せるからな。」
そう言うと、襲いかかってきた8人をあっという間に倒してしまった。
「やれやれ、夜間の戦い方のレクチャーのつもりが、何の役にもたたない戦い方のレクチャーになっちまったな。」
冷静に対処してラトリスは言う。
「まあいいや、これでもう襲われることは無いだろうしな。」
そう言って、馬車に戻ってしまった。マリア、レイナ、ミーアの三人は少し落ち込んでいたが、
「帰ったら、夜間戦闘訓練をやるぞ。」
と言うラトリスの言葉に気力を取り戻した。
その後は何事もなくフィリンに着いた。
「今回は、本当に有難う。助かりました。」
モリーが報酬を支払いながら礼を述べた。
「また依頼するかも知れないが、その時はよろしく頼むよ。」
「積荷が無事でよかったな。」
ラトリスの皮肉っぽい言葉が通じたのか、
「はは、こううまくいくとは限らないから、ほどほどにしておきますよ。」
そう言って、去って行った。
「そういや、ギルド協会に行かないとな。」
「…何をしに行くんです?」
「今回の報告と、手紙を預かってただろう?」
やれやれと、ラトリスは言った。
「忘れてました…」
「私も…」
「とりあえず行ってみようか。食事はそれからでいいか、ミーナ?」
「うん!」
5人はギルド協会へと向かった。
ギルド協会には人があまりいなかった。ミクを呼び出し、報告を済ませたあと、手紙をドルトムントに渡して貰えるように伝えると、
「奥にいますから、直接渡して下さい。」
と言われた。仕方なく5人はギルド協会会長室の扉を叩くと、
「どうぞ。」
と声がかかった。中に入ると、それなりに豪勢な部屋だった。
「ラトリス、久しぶりだな。他のみんなも。」
ドルトムントが挨拶する。
「よう、ドルトムント。お前宛に手紙があるんだ。」
そう言って、マリアが前に出て手紙を渡す。
「ん?ギルド協会本部からの手紙か…」
ドルトムントは、手紙を受け取って中を見た。
「なんか深刻そうなら、俺達は帰るが?」
「…いや、大丈夫だ。」
少し悩んでからドルトムントは答えた。
「丁度いい、君たちにも関係あることだ。」
「と、言いますと?」
「うむ、フィリア本部とフィリン支部でギルド対抗武道大会をやろうという話だ。」
「武道大会!?」
「優勝賞金は1億ガルドだ。ラトリス、出て貰えないか?」
「なんで俺が?」
「君だけじゃない。君達全員にだ。」
「他に何か賞品はないんですか?」
「一躍有名になれる事ぐらいかな。」
「ラトリスさん、出ましょうよ。」
「…ギルド長が決めることだ。俺には決定権はない。」
「やったー!みんなで出ましょう!」
「良かった、君達が出るなら確実に勝てるだろう。」
「…?」
「この大会は10年ぶりでね。その当時は死人も出た位過酷な大会だったそうなのだよ。」
「それを…」
「早く言ってよ…」
「…まあ、良いじゃ無いか。ドルトムント。」
「なんだい、ラトリス?」
「メンバーは4人しかいない。それでも出れる様に配慮してくれよ?」
「大丈夫。定員は3名だそうだ。」
「じゃあ、俺以外の3名で登録しておいてくれ。俺は出ない。」
「「はあ!?」」
マリアとレイナは驚いた声をあげた。
「せっかくなんだから、三人で出ろよ。俺はミーナと観戦してるから。」
「いや、普通は俺に任せろって言うところじゃないですか?」
「なんでそうなるんだ?俺が出たら、余裕で優勝出来るとか考えてないか?」
「それは…少し…」
「三人で出て、優勝すりゃいい。お前達なら出来るさ。」
「いや、それよりはルールを変更してもらう方が早そうだ。」
「は?」
「定員を四人にしてもらえば、ラトリスも出れるだろう?」
「そうか!」
「それがいいわ!」
「ふざけんな、絶対出ないぞ。」
「まあまあ、ギルド長の決定権は絶対なのでしょう?」
「くっ、それは…」
「じゃあ決まりだな。四人に変更してもらっておくから頑張ってくれ。」
そこまで決まって、ラトリス達は部屋を出た。
「…はぁ。」
「ラトリスさん、どうしたんですか?」
「あんまり乗り気じゃなかったわよね、何かあったの?」
「いや、死人が出る大会だろう?俺が殺しかねないから困るんだよ。」
「と言うと?」
「実力も俺並みの奴がいるかも知れないってことさ。本気でやるしかないか…」
「ラトリスさんの本気って…」
「ちょっと、見てみたいかも。」
そんな風にマリアとレイナは考えていた。
「そんなことよりお腹空いたよ。」
「仕方ない。帰って飯にしようか。」
5人は家路についた。
読んでくださっている方々、有難う御座います。




