街での一幕
新章です。宜しく!
ラトリス達は馬車に乗って移動していた。城へ行くためだ。
「ラトリスさん。一体何しに行くんですか?」
「あぁ、ララの誕生日会があってな。それに出席するためだ。」
「ララ姫の誕生日?大変、誕生日プレゼント何も用意してないわよ!?」
「毎年の恒例行事だからな、あんまり期待していないらしいし、別に必要ないぞ。」
「何を言ってるんですか!大切な誕生日なのに…」
「そうよ。特に女の子には重要な日じゃないの!」
「そうだよ、お兄ちゃん!」
マリア、レイナ、ミーナの三人は大声で怒鳴った。しかし、ミーアの様子がおかしい。
「ミーアさんも何か言ってくださいよ。」
「そうよ、こんなデリカシーもない人だなんて、思わなかったわ。」
「ママ…どうしたの?」
ミーアは溜息をつくばかりだった。
「…やっぱり城に行くのは抵抗あるのか?」
その言葉を聞いてハッとなるミーア。俯いたまま溜息をついて、
「半ば強引に連れてきたのは俺だ。嫌ならいいんだぞ?」
「いえ、母様とも会いたかったですから。」
そう言いながらも表情は変わらない。
「ただ…どんな顔を見せたら良いのか、悩んでしまって…」
ミーアのその言葉にミーナも俯いてしまう。元々ミーアが城を出たのは、ミーナの事があったからだった。ミーナは罪悪感で押し潰されそうになる。しかし、
「何か言われたら、俺に言え。大抵の事は処理してやる。」
「…ラトリスさん。」
「あの時ミーアの取った行動は、評価されこそすれ、意味の無い風評被害に合う必要のないことだ。見ろよ。」
ラトリス達はミーナを見た。まじまじと見られて恥ずかしくなったのか、更にミーナは俯いてしまった。
「こんな可愛い子を苛めるような国なら、俺が滅ぼしてやるよ。」
「それは言い過ぎですよ。」
マリアがすかさずツッコむ。それを聞いて安心したのか、ミーアは笑った。
「ふふふっ、確かにラトリスさんなら遣りかねませんね。」
「ミーアさん、冗談に聞こえないから…」
今度はレイナがツッコむ。
「?」
1人解っていないのか、ミーナはキョトンとしているだけだった。
昼頃には街に着いた。ラトリスは、
「ミーアとミーナの服を買わなくちゃな。」
と言った。
「ついでに私達も着替えないとね。」
「あの服をまた着ることになるとはね。」
マリアとレイナもノリノリだった。
「ミーア、ほら。」
そう言って、お金の入った袋をミーアに渡し、
「4人で行って来てくれ。俺はその間にプレゼントを買ってくる。」
そう言って、街の中へと消えていった。
「せっかくだし、前に行ったお店にしましょうか。」
「えっ、でもあそこの服すごく高いよ?」
「多分大丈夫でしょう、あの人が生半可な額の入った袋を渡すわけないわよ。」
「あのぅ、どうしましょうか?」
「いいから、行きましょう。」
4人は連れ立って、前に入った服屋を目指して歩き出した。
4人と別れて、ラトリスは考えていた。
「女の子へのプレゼントか…ぬいぐるみでいいか。いや…年頃の女の子だし、ネックレスとかの方が…」
本気で悩んでいると、
「あの、ギルドに入りませんか!」
急に声をかけられた。よく見ると、小さな男の子だった。
「…いや、間に合ってる。」
「そっ、そんなことを言わずに、話だけでも…」
「俺はもうあるギルドに所属しているんだ。だから無理だ。」
「そんな…」
男の子は愕然とした表情を浮かべた。
「…なんだ、どうした?」
ラトリスが聞くと、男の子のお腹がぐ~と鳴った。
「すっ、済みません!もう3日も何も食べてなくて…」
「しょうがないな。」
そう言って、近くの露店で串焼きを買って、男の子に手渡した。
「今回だけだ。あとは自分で何とかしろ。」
「済みません、いただきます!」
男の子は串焼きに、泣きながら齧りついた。
「じゃあな。」
そう言って、別れようとすると、
「待ってください!僕と勝負して、僕が勝ったらギルドに入ってください!」
「…はあ?」
ラトリスは男の子を見た。確かに冒険者の格好はしていたが、そんなに強く無さそうだった。
「悪いが他をあたってくれ。俺は忙しいんだ。」
「僕が負けたら、あなたの所属しているギルドに入ります。」
「ふざけるな。」
ラトリスはちょっと怒ったような顔をして…
「生半可な覚悟で冒険者になったんだろう?辞めてもさっさと国に帰れ。」
「まっ、待ってください、話を…」
「俺はな、てめえみたいなガキが嫌いなんだよ。話もしない。とっとと失せろ!」
そう吐き捨てて、踵を返した。すると…
「負けるのが怖いんですね?」
「…あぁ、怖いよ。」
素直にそう言った。
「いつ負けるか解らない、そんな世界だ。ましてや負けたら死ぬのが冒険者の仕事だ。怖くて何が悪いんだ?」
そう言った。それには相当の覚悟が込められていた。
「お前はどうなんだ?負けたら人に縋ろうとする、それが覚悟なのか?」
「そっ、それは…」
「既に勝負は付いている。お前の負けだし、俺のギルドにお前は入れない。話は以上だ。」
そう言い残して去って行った。
「僕は…」
1人残された男の子は、ただ呆然と立っていた。
それから一時間後、無事にプレゼントのイヤリングを買い、前に入った店を覗くと、4人でキャーキャー騒いでいた。
「…何してんだ、お前達は。」
「あっ、ラトリスさん。ラトリスさんはどっちが良いと思いますか?」
「やっぱり親子だし、ペアルックのこのフリフリのついたドレスが良いんじゃ無い?」
「何言ってるの、ちょっと大人びたこっちのドレスだって。ラトリスさん、選んであげて。」
「お兄ちゃん、助けて…」
「ラトリスさん。どうしたらいいでしょうか?」
「…はぁ、おい店員。」
「はっ、はい!」
呼ばれた店員がやって来た。
「あんたのオススメにするから、持ってきてくれ。」
「かっ、畏まりました!」
そう言って、奥へと下がり、大人用と子供用の二着を持ってきた。流石というべきか、サイズもピッタリだった。
「流石、いい仕事をしているな。」
「有難う御座います。」
「金は…これで足りるか?」
そう言って、ミーアから袋を受け取り、店員に渡した。
「少々お待ちを。」
奥へと下がり、すぐ戻ってきてラトリスに袋を返す。
「まっ、またのご来店お待ちしております。」
「有難う、迷惑かけたな。ほら、行くぞ!」
「ちょっと待って、私達の着替えが済んでない!」
「そうよ、ラトリスさん。ちょっとだけ待ってて。」
「…はあ。俺も忘れてた。」
そうして三人で交互に試着室へ入り、着替えた。
ソフトバンクホークスが勝ったけど、その後寝落ちしてしまいましたので、更新出来ませんでした。読んでくださっている方々、有難う御座います。