ラトリスの過去 その8
食い過ぎでしんどいです。
ラトリス、マリク、レイカの三人は中庭に出た。すると、沢山の兵士、騎士達がそこにはいた。
「これに教えるのか!?」
マリクが驚いて叫んだ。
「城中の兵士や、騎士達の様な気がしますね。」
「前はもっと多かった気がするけどな。」
そう言って、中央へ移動する三人。すると、声をかけられた。
「ラトリス殿、お久しぶりですな。」
見るとバーグだった。
「久しぶりだな、バーグ。腕は上がったか?」
ラトリスが聞くと、首を横に振り、
「まだまだラトリス殿の域には達しておりませんな。今日もこうして訓練に参加させて貰う程ですからな。」
「なら、少し手合わせしてみるか?」
「よろしいのですかな?」
「兵達の中には、何で俺が教官なんだ?って顔の奴らもいるからな。」
「そうですな、若い貴殿を疑う者も中にはいるかも知れませんな。お願いしましょう。」
そう言って、間合いを取って剣を構えた。。ラトリスも異空間から剣を取り出し、構える。周りの兵達が何事かと見てくるが、二人は気にしていない。と、バーグが先に踏み出した。袈裟切りに襲いかかるが、ラトリスはそれを受け止めて唾競り合いの態勢になる。
「踏み込みの速度、威力は上がっているな。」
「有難きお言葉ですな、しかし!」
弾いて間合いを再び空け、横凪に剣を振るうバーグ。しかし、それをラトリスは今度は受けずに、後ろに下がって躱し、さらに間合いを広げた。そして、剣をしまう。
「これ以上は怪我の元だ。止めておこう。」
ラトリスは静かにそう言ったが、バーグは汗だくになりながら、肩で息をしていた。
「この緊張感は久しぶりでしたな。」
「なに、本気でやっているんだから、疲れるのも無理ないさ。」
ラトリスはケロッとしているので、周りの人達は何だ?と思うばかりだった。
「まあ、今日も素振りが基本だな。素振り1000回終わったら、俺のところに集合な。」
そう言って、隅っこに移動して座ってしまった。バーグが指揮を執り、素振りを始めた。
一時間位で全員の素振りが終わり、そのまま本来の訓練に移行するかと思いきや、
「次はランニングだ。この城の中を全部走って回るぞ。」
そう言って、ラトリスは走り出した。階段も1歩ずつ上がり、本当に全部を走って回った。その頃には、ほぼ全員が息を切らしていた。
「さて、次は…」
「ちょっと待って、ラトリスさん。」
レイカが止めた。
「いっ、何時もより激しくない!?もう疲れたんだけど…」
「いつもと同じ事して楽しいのか?訓練にならんだろうが。」
「そりゃそうだけど…」
マリクも倒れそうになっていたが、兵士や騎士達はそれどころではないしんどさを味わっていた。それもそのはず、普段走ったりするような格好ではなかったのだから。
「少し休憩をしようぜ。」
「周りの人の事も考えて、ね?」
「根性ねぇなぁ。仕方ない、10分だけ休憩な。水分補給もしておけよ。」
そう言って、ラトリスは何処かへ行ってしまった。ようやくの休憩で、みんな安堵した。しかし、休憩空けに地獄の特訓が待っていた事に、誰も気が付いていなかった。
一日の訓練が終わる頃、全員がへとへとになっていた。仕方なく、全員にキュアの魔法をかけて回ったラトリスは、凄く面倒くさそうな顔をしていた。
「明日はもっとキツいからな。しっかり休めよ。」
そう言い残して下がっていった。目指すはララの元だった。一日中訓練をしていたので、まだ会っていなかったのだ。
「ん?」
前から人がやってくる。ミーシャだった。
「これはラトリス様、ご機嫌いかがですか?」
「やあ、ミーシャ。ララは何処にいるんだ?」
「ララ様は現在入浴中ですよ。」
それを聞いて、
「そうか、解った。」
そう答えるしかなかったラトリスだった。
「ララ様も、寂しそうにしておられました。入浴が終わりましたら、お部屋へ呼びに行きますが?」
「いや、食事の時でいいよ。別に急ぐ話じゃないからな。」
「左様ですか。」
それだけ言って別れた。
「しかし暇だな。」
ラトリスは一人愚痴って部屋へ戻った。すると、マリクとレイカがそこにいた。
「ようやく戻ってきたな。」
「待ってたのよ?」
「なんだ、どうした?」
「国王陛下達にあんな態度取るから心配で…」
「あぁ。」
これまでの経緯を二人に話した。
「そんなことが…」
「だからタメ口聞いたりしてたのね。」
「そう言うわけだから、気にするな。」
「気にはするよ。」
「そうよ。いきなり打ち首とかは勘弁だもの。」
「そんなことする奴らじゃないさ。」
そんな話をしていると、食事の時間になった。
次の日も、その次も訓練ばかりが続いた。ララと話せる機会も殆どなかったが、それなりに充実した毎日を過ごした。…あの日が来る迄は。
読んでくださっている方々、本当に有難う御座います。




