ラトリスの過去 その5
もうすぐ平成が終わる。昭和生まれとしては、青春の時代だったな…
ギルドへ冒険者登録を済ませて1週間が経った。相変わらず特訓しかしていなかったが、そろそろクエストを受けようかと悩んでいると、
「済みません!」
玄関から大きな声がした。ラトリスがドアを開けると、そこにはマリクとレイカが立っていた。
「居た居た!ラトリスさん、久しぶり!」
「お久しぶりです。」
「なんだ、お前達か。」
「なんだじゃ無いよ。入っても良いですか?」
「…どうぞ。」
ラトリスは二人を招き入れた。
「お邪魔します!へぇ、立派な家だなぁ。」
「本当。私達の村では考えられない大きさね。」
二人をリビングへ案内し、紅茶を煎れた。三人は紅茶を飲みながら、
「で、なんのようなんだ?」
ラトリスが聞いた。
「いや、そのぅ。」
「この間のお礼を言いに来ました。」
「お礼?」
「ほら、冒険者登録とお金です。」
「あぁ、あの件か。気にしなくて良いのに…」
「いや、本当に助かったんだよ。」
「村から頼まれて、これを持ってきました。受け取ってください。」
そう言って、袋を渡すレイカ。ラトリスが袋を開けると、中には金の塊が入っていた。
「おいおい、金が無かったんじゃないのか、これだけで2億以上の価値はあるぞ。」
「村には換金できる場所はないし、お金の方が有り難かったんだ。貰ってくれよ。」
「…受け取るが、ちょっと待ってろ。」
そう言って、アクセスの魔法で異空間から袋を取り出し、中からお金を出した。
「俺の目から見て、こいつは2億以上の価値がある。こいつはその分だ。」
そう言って、1億ガルド二人に渡した。
「別に良いのに…」
「金には困ってないし、お前達二人も冒険者なんだ、色々必要だろう?」
「そうですね、有り難く頂きますね。」
そう言って、5000万ガルドずつ分けて持つことにした。
「で、用事ってのはそれだけか?」
「いや、こっからが本題なんだけど…」
マリクは少しモジモジしながら、
「あのさ、俺達と一緒にギルドを作らないか?」
と言った。
「あんた、一人なんだろ?俺達を含めれば三人だ。ギルドを立ち上げる最低人数になるんだ。」
「それに、ギルド勧誘のためなのか、声をかけられる事が多くて、困っているんですよ。」
「…だから自分達で?」
「そうなんだ。あんたは信用できる人だし、まだ何処にも所属していないみたいだから。どうだ?俺達と一緒に…」
「興味が無い。」
「そんなこと言わずにさぁ、頼むよ。」
「冒険者になったのも、無職よりはいいかと思っただけだ。真面目にやるつもりも無い。さっきも言ったが、金には困っていない。」
「でも…」
「でも…なんだ?」
「私達もお金だけのために冒険者になった訳じゃありません!」
「…?」
「お金のために冒険者になる人も大勢います。けど、私達二人は困っている人を助ける冒険者になりたいんです。お金の問題で助けられる、助けられ無いを決めるんじゃ無くて、多くの人を救える、そんな冒険者になりたいんです!そのためにギルドを作りたいんですよ!」
レイカが力説した。ラトリスは、思うところがあったのか、少し考えて、
「…ギルドじゃ無くても出来るだろう?」
そう言った。しかし…
「いえ、ギルドじゃ無くちゃいけないんです。わかりやすい方が良いんですよ。」
「有名になるのはご免だ。」
「有名になる必要は殆どないだろう?あのギルドならやってくれる、そう思って貰うだけで良いんじゃ無いのか?」
マリクが言う。そこまで聞いてラトリスは、
「…解った。ギルドを作ろう。」
「本当か!?」
「本当ですか!?」
二人は驚いた。堅物そうなラトリスを説得する材料がもう残っていなかったのだ。
「色々決めなくちゃならないだろう?今日中にまとめて、明日ギルド協会へ行くぞ。」
「「はい!」」
そう言って、三人で色々決めていく。ギルド長、副ギルド長、ギルドのクエスト受託の方針などを決めていく。
「やっぱり長はラトリスさんだな。」
「何で俺が?」
「一番年上だし?」
「そんなに変わらんだろうに。」
「副ギルド長はどうする?」
「二名までいけるから、二人でやってくれ。」
「そうね。それが良いかも。」
「それで、方針は…」
「「「困った人を助ける!」」」
そこだけは一致していた。
「最後にギルド名だけど?」
「ラトリスさん、なにか無いか?」
「…“天の猫“かな?」
「“天の猫“?」
「今チラッと浮かんだんだ。」
「“天の猫“かぁ、いいね、それ。」
「もっと格好いい名前が…いや、可愛い方が人受けは良いか。」
「じゃあ、それで…」
準備は完了した。
読んでくださっている方々、本当に有難う御座います。




