ラトリスの過去 その1
ラトリスの過去話を書いていきます。
ミーアの病気が良くなり、1週間が経った。
「ミーアさんの仕事って凄いのね。」
「そうね、家中キラキラ光ってるわ。」
「ママ凄い!」
マリア、レイナ、ミーナの3人は驚嘆していた。
「元々この家よりデカい王宮で仕事をしていたからな。この程度の家は朝飯前に片付けてしまうんだ。しかし、クリーンの魔法いらずだな。」
ラトリスも驚いていた。完治したとはいえ、病み上がりにここまで出来るとは、ラトリスも思っていなかったのだろう。
「お褒めにあずかり光栄です。皆様、お茶の用意が出来ました、どうぞ。」
そう言って、紅茶を差し出す。それは、普段から自分で煎れているラトリスをも唸らせた。
「美味い…」
「本当に美味しいです。」
「こんなに匂いの強いお茶は初めてね。」
「美味しいよ、ママ。」
4人は揃ってお茶を飲んでいた。その時、レイナが言った。
「ラトリスさん、そろそろ話してくれてもいいんじゃない?」
「…前に言った、俺の過去の話か?」
「そうよ。機会があれば話すって言ってたじゃない。」
「えっ、何の話ですか?」
「俺がどうしてフィリンにいるのかとかの話をするって、レイナに言ったんだ、ギルド協会からの帰り道にな。」
「そうなんですか。今日も仕事は無いし、お茶請け代わりに話して下さいよ。」
「そうですね、ラトリスさんの話、聞いてみたいです。」
「お兄ちゃん、聞かせて!」
全員が興味津々に聞いてきたので、
「そうだな。じゃあ話すか…」
そう言って、過去を話し始めた。
それは5年前、フィリア王国の近くから始まる。
「おい、坊主。もうすぐ王都に着くぞ。」
そう言われて、馬車の中で眠っていたラトリスは目を覚ました。
「うーん、やっとか。やたらと遠かったな。」
「あんな森の奥にいたんだから、しょうがねぇだろう?」
「兎にも角にも、助かったよ、おっさん。」
「渡りに船とはよく言ったもんだ。こっちとしては、ゴブリンやらを倒してくれて助かったよ。」
ラトリスは、馬車に乗せて貰う代わりに護衛のような事をしていた。
「道も解らねぇ、何処行くかも決めてねえなんて、若いガキのすることじゃねえ。お前さん、一体何者なんだ?」
「詮索はしないって話だっただろう?」
「…そうだったな。」
馬車の従者はそれ以上聞かないことにした。程なくして王都の門までやってくる。
「止まれ、身分を証明するものを出しなさい。」
門番である衛兵に止められた。
「あっしは行商で来ていまして。こっちは護衛です。」
「えらく若い護衛だな。身分を証明するものを持っているか?」
「なにも無いです。」
「なら、名前と年齢は言えるか?」
「ラトリス。歳は14です。」
「ラトリス?女みたいな名前だな。見た目も女みたいだ。」
「…よく言われます。」
「まあ、強そうだし、護衛と言われればそう見えるな。もし身分を証明するものが必要なら、ギルド協会へ行くといい。と言っても、15歳までは無理だったかな。」
「…考えておきます。」
そう言って、衛兵は通してくれた。
「よかったな、無事に通れて。大人しく猫をかぶっていてくれて助かったよ、坊主。」
「…まあな。」
「それじゃ、ここでお別れだ。元気でやれよ。」
「おっさんもな。」
そう言って、ラトリスは従者と別れた。王都は凄く賑わっていた。
「取りあえず、金を手に入れないと、何にも出来ないしなぁ。腹も減ったし…」
そう言うと、街中へと歩き出した。と、直ぐにギルド協会フィリア本部が見えてきた。
「素材の換金くらいはしてくれるかな?」
そう言って、中へと入っていった。ギルド協会は人があまりいなかった。ラトリスは受付を見つけて進んでいき、
「済みません、素材の換金がしたいのですが?」
と、受付嬢に言った。
「あのぅ、冒険者の方ですか?」
「いや、一般人です。」
「冒険者の方以外からですと、換金率は7割になりますけど?」
「それで良いよ。金に困ってるんで。」
「解りました、それで素材は何処に?」
「あぁ。」
ラトリスはアクセスを唱えて、異空間から素材を出した。
「す、スチールバイソンの角に、ゴブリンの角や爪が沢山!?ど、どれくらい?」
「スチールバイソンが70匹に、ゴブリンが630匹位だったかな?幾らになる?」
「い、今から査定をします。暫くお待ち下さい。」
そう言われて、ラトリスは少し待つことにした。30分後、
「お待たせしました。全部で300万ガルドです。」
「多くないか?色を付けてくれたのか?」
「少しだけですよ。それでも7割なんですから、此方の方が謝らないといけないんですけど。」
「いや、有難う。それと、何処かに美味い店ないかな?王都には初めて来たんで、右も左も解らないんだ。」
「それでは、この地図をどうぞ。無料ですから。」
「有難う。」
地図を受け取ると、ラトリスはギルド協会を出ていった。地図を見ながら、飲食店を探していると、お洒落な店を見つけたので入っていく。
「いらっしゃいませ!」
店員の大きな声が響いた。席に案内されて、早速オススメを注文し、ラトリスは目を瞑って周囲に聞き耳を立てた。情報収集のためだ。
「あのギルド、なんて名前だっけ?」
「でさー、昨日も夜更かししたから、寝不足なんだよ。」
「おい、あの女、すげえ美人だぜ。」
どうでも良い話ばかりだった。しかし…
「聞いたか、国王陛下の話。」
何やらきな臭い話が1つあった。
「なんだよ?」
「今病気で寝込んでいるだろう?」
「あぁ、その話は聞いたよ。」
「何でも国王陛下の病気を直したら、望みのものをくれるってよ。」
「マジか。でも、失敗したら打ち首とか嫌だぜ?」
「だよな。触らぬ神に祟り無し、ほっとくか。」
そんな話を聞いていると、頼んでいた料理が届いた。
「なあ、店員さん。」
「はい、なんですか?」
「今小耳に挟んだんだが、国王は病気なのか?」
「えぇ、半月前から寝込んでいて、病気を治してくれたら何でもするって触れ込みなんですよ。でも、偉い学者や高名な医者でもどうにもならなかったって話ですよ。」
「そうか…有難う。」
「いえいえ、ごゆっくり。」
ラトリスは料理を食べながら考えた。
(俺の知識や技量を確かめる機会だけどな…うまくいくだろうか。失敗したら打ち首とまではいかないだろうけど。試して見るか!)
ラトリスは急いで食事を終えて、金を払って王宮に向かった。王宮の前には、
“国王陛下の病気、直せたる者には望みの褒美を取らせる“
と、看板が出ていた。
ラトリスは王宮の門番に聞いた。
「ここに書いてあることは本当なのか?」
「ん?あぁ、出来たらの話だがな。それほどに重い病気なのだ。」
「俺にも挑戦する権利はあるのか?」
「誰でも構わんらしいからな。やるのか?」
「失敗したら打ち首なのか?」
「そんな話は聞いたことがない。全員ここから外へ出ている。ほら、先ほど挑んだ奴らだ。」
門を見ると、確かに項垂れながら人々が出てくる。失敗したのだろう。
「よし、入らせて貰うぜ。」
「まあ、頑張れよ。」
衛兵とそんな話をして、ラトリスは城の中に入る。すると、
「ようこそいらっしゃいました。案内をさせて頂くミーアです。」
ミーアと名乗るメイドが目の前にいた。
「国王は何処に?」
「此方で御座います、どうぞ。」
案内されるまま、付いていくと、国王の寝室へと案内された。中に入ると、王妃、王子、そして姫の3人が悲痛な顔で国王の傍に寄り添っていた。
「今度は子供…期待はずれですね。」
王妃は言った。少しカチンときたが、ラトリスは黙って国王に近付く。そして、
「サーチ!」
無属性魔法サーチを使った。病気の原因を突き止めようというのだ。2分ほどして、
「病気の原因は解った。」
「ほっ、本当ですか!?」
俯いていた王妃は顔を上げた。
「今から治すけど、王子と姫はいない方が良いな、多分。」
そうラトリスは告げた。しかし、
「父上の一大事に抜けるなど出来ません。」
姫もコクコクと肯く。ラトリスは、
「じゃあ、俺が今からすることから、決して目を背けるな。」
そう念を押した。2人は頷いた。そしてラトリスは、国王の腹部を手刀で貫いた。
「うぐっ!」
「あっ、あなたぁ!」
国王から悲鳴が聞こえ、王妃の悲痛な叫びが上がった。ラトリスはそのまま腹部を弄り、
「…よし、あった!」
ゆっくりと手を引き抜いた。その手には、鏃が1つ握られていた。すかさず、
「ヒール!」
光魔法ヒールで傷を癒やしていくと、国王の顔付きが良くなった。そして寝息まで聞こえてきた。
「一体、どういうことなの?」
「王妃、国王は弓矢で撃たれていたんだ。その鏃を腹部に入れたまま傷を塞いじまって、そのせいで苦しんでいたようだな。無属性魔法サーチを使わなければ、解らなかったよ、俺も。」
ラトリスは手に付いた血を無属性魔法クリーンで落としながら言った。
「そうだったのですね。」
「父上…」
「お父様…」
王妃達が国王の手を握ると、更に安心したのか笑みを浮かべた。
「さてと、もう暫く様子を見させて貰う。悪そうなところは全部治してやるよ。」
「はい、お願いします。」
国王が目覚めたのは、それから三日後だった。
いつも読んでくれている方々、有難う御座います。




