ミーアとミーナ
七千文字と言いながら、平均二千文字位で済みません。
4人は街を出て、ずっと森の中を走っていた。
「本当にこっちなの?街の中じゃなくて?」
レイナがミーナに聞くが、コクリと頷くだけである。
「でも、一言も発してないのに、どうやって解ってるんですか?」
「無属性魔法マインドの魔法で、俺の意識と連結させているからな。何も言わなくても道が解る。」
「なるほど。」
4人は森の中をひたすら走って、ついに目的の家まで辿り着いた。ミーナを下ろすと、ミーナがドアを開けて中へ入っていく。それに続いて入ろうとしたが、ラトリスが止めた。
「2人とも、これを飲んでおけ。」
そう言って、丸薬を取り出した。
「なんですか、これ?」
「病気が何か解らんからな。事前薬というべき薬効のある薬だ。ある程度の病気は防いでくれるはずだ。」
「いただきます。」
「いただくわ。」
3人は丸薬を飲み、今度こそ家に入る。家の中は殺風景と言うべきか、殆どなにも無かった。部屋の隅にあるベッドに、ミーナか寄り添っていたので近づくと、ベッドの中に女の人が一人、眠っていた。
「ママ…」
静かにミーナがそう呟く。そう、彼女こそみーあだった。
「済まない、少しどいていてくれ。」
ミーナにそう言って、ラトリスが近付く。そして、
「サーチ!」
と、魔法を使った。
「無属性魔法、サーチ。これで体のおかしな所を調べることが出来る。」
「ママはどうなの?」
「まあ待て。暫くかかるから、お姉ちゃん達に遊んでもらっとけ、ミーナ。大丈夫。ママはちゃんと助けるから。」
そう言って、ラトリスはミーナの頭を撫でた。気持ちよさそうな顔になり、ミーナが落ち着く。そして、
「ミーナちゃん、こっちへいらっしゃい。」
「遊ぶ訳にはいかないけど、どうしてママは病気になったのか、答えられる範囲で教えてくれる?」
マリアとレイナは優しくミーナを促した。そうしている間にも、サーチによる解析は進んでいた。5分後、ラトリスが出した答えは、
「…心臓病だな。」
だった。それを聞いて、マリア、レイナは落胆した。
「心臓病って、不治の病じゃないですか。」
「…そうね。仮に延命したとしても、1年が限界。そんな病にかかっているなんて…」
「ラトリスさん、キュアの魔法でもどうにもならないんですか?」
「キュアは身体の健康を直す魔法だが、毒とかにしか効果が無い。体力を回復出来ても、元々負荷がかかっている心臓には意味が無いんだ。」
「そんな…どうするんですか?」
「お兄ちゃん、直してくれるって、言ったよね。大丈夫…なんだよね、ママは。」
ミーナが泣きそうになりながら、ラトリスに縋った。マリアとレイナもラトリスを見る。と、ラトリスは、
「1つだけ、方法はある。」
「それはなんなの。教えて。」
レイナが言うと、ラトリスは答えた。
「エリクサーだ。」
「えっ、エリクサー!?」
「まさか…」
「?」
マリアとレイナは驚いたが、ミーナは理解できていないのかキョトンとしていた。
「いくら何でもあれは作れないんじゃ…」
「神が与えし、伝説の妙薬よね。巷には出回っていない…」
「ママを…助けられるの?そのエリクサーがあれば?」
「作り方どころか、材料もある。唯一ないものがあってな、困っているんだ。」
「そうですよね、無理ですよね。」
「あれは流石に無理よね。」
マリアとレイナはそう言ってから、
「「はい!?」」
と、叫んだ。
「らっ、ラトリスさん、今なんて!?」
「ん?材料も知識もあるって言ったんだ。」
「何をサラッと言ってるのよ!?で、出来るの、本当に!?」
「そもそもエリクサーの正しい作り方を世に広めたのは、俺なんだがな。」
「「はぁ!?」」
マリアとレイナは再び驚いた。
「どうやってエリクサーを作ったんですか!?」
「それをレクチャーしながら作ってやるよ、世の中に出回った、粗悪品では無い、本当のエリクサーをな。」
「本気ですか!?」
「私達に教えながら出来るもんなの、エリクサーって。」
そう言って、ラトリスはアクセスの魔法を使い、異空間から材料を取り出した。
「まずは薬草をすりつぶして…」
こうしてエリクサー作りが始まった。
「で、ここにストーンドラゴンの肝を入れてかき混ぜればほぼ完成だ。この時点である程度の病気への治療薬になる。」
制作に入って3時間半が経過していた。マリアとレイナはくたくたになりながら、それでも必死に学んでいく。
「ここまで難しいものなんですね。」
「慣れれば簡単にできるさ。さて、これをひと煮立ちさせている間に、最後の素材を採らないとな。」
そう言って、ラトリスは疲れて眠ってしまっていたミーナに近付いた。
「最後の素材…ですか?」
「それはミーナに関係あるものなの?」
「あぁ、一番重要なものなんだ。」
そう言って、ミーナにビーカーを渡してこういった。
「ミーナ、これに小便を入れてきてくれ。」
…全員が固まった。
「らっ、ラトリスさん!?いくら何でも滅茶苦茶です!」
マリアが赤面しながら言った。
「そうよ!女の子に向かって何を言うのよ!?」
レイナの怒声が響き渡る。
「…?」
ミーナは理解できていないのか、キョトンとしていた。
「まあ、そうだろうな。じゃあ二人の内の一人で良い。小便を入れてきてくれ。」
「ばっ、馬鹿!そっ、そんなこと出来るわけないじゃない!!」
「ラトリスさん、何考えてるんですか!おっ、女の子に向かって言うことじゃないですよ!」
「そうか…じゃあ無理だ。残念だがミーアの命は終わりだ。」
そう言って、器材の片付けをはじめてしまう。マリアが聞いた。
「ラトリスさん…何が必要何ですか?」
ラトリスが言う。
「…生娘の体液、それも大量に必要なんだ。」
「「「…はあ?」」」
マリア、レイナ、ミーナは何事?と、聞き返した。
「簡単に言うと、処女の体から作られる汚れの無い液体が必要なんだ。大量に必要だから小便が一番手っ取り早く収集出来るからそう言ったんだが。それが無くちゃ、エリクサーは完成しないんだ。」
「…それ、必要なんですか?」
「寧ろ、世に出回った事のあるエリクサーは、それが無くて粗悪品と言われている位だ。心臓や主要な臓器に効く薬は、処女の体液無しでは作り出せないんだ。」
「ほっ、他のものじゃ駄目なの?」
「痛い目見て、血液を差し出すか?この量だと500cc位いるからな。倒れちまうぞ。混ぜ物厳禁だから、二人で500ccとか不可能だから、小便が一番早いんだ。」
「う…そう言われると、なんとかしてあげたいけど…」
「緊張で出ないわよ、急には…」
マリアとレイナは萎縮してしまっていた。
「じゃあラトリスがすれば…」
「阿呆、童貞なら俺自身黙って持ってきてるわ。」
「そうですよね…」
「仕方ない。大量の水を飲んで無理矢理出すか…って、ミーナは何処へ行った?」
「「へっ?」」
3人が周囲を見渡すと、ミーナの姿が無かった。少しすると、入り口からミーナが赤面しながら戻ってきて、
「…これを。」
と言って、ビーカーを差し出した。中には透明な液体が入っていた。
「よし、それなら大丈夫だ。」
「冗談でしょう?ただの水よね、ミーナ?」
「俺の鑑定眼が識別出来ないと思うか?間違いなく小便だ。よく決心したな、ミーナ。これでママは助かるぞ。」
そう言って、ラトリスはビーカーの中身を、煮立たせていた鍋に入れた。と、今までどす黒い色をしていた液体が、無色透明へと姿を変えた。それを冷まし、瓶へと移し替える。
「完成だ。」
「これが、本当のエリクサー?」
「でも小便から作られているのよね?飲みたくないわ。」
そうレイナが言うと、ラトリスは、
「ウィルス性の病気だからな。この場にいる全員に飲んでもらうぞ。」
そう言って、無理矢理口の中に一滴ずついれていった。
「…味はしないんですね?」
「本当。制作過程見てなかったら、普通に飲めたわね。」
最後にラトリスは、ミーアの口にエリクサーを入れた。だが、一向によくなる気配が無い。
「…まさか、効かないとか?」
「いや、量が足りないのさ。」
そう言って、ラトリスは口に含み、ミーアに口移しで飲ませた。すると、顔色がみるみるうちに良くなっていった。
「ふう、これでよしっと。」
「ラトリスさん!女性にせっ、接吻なんて!?」
「子供が見てるのよ!?」
「ん…」
ミーナはミーアの容態を見ていて、気にしている様子は無かった。
「うっ…」
暫くして、ミーアの意識が戻った。
「あれ、ミーナ?」
「ママ!」
ミーアに抱きついてミーナは泣きじゃくった。
「ミーナ、私は大丈夫よ。それよりも…」
みーあはラトリス達の方へ向き直った。
「よう、ミーア。久しぶりだな。」
「ラトリス…様…」
「あぁ、そうだ。病気が治って良かったな。」
「そうですか、あなたが…後ろのお二人は?」
「ギルド“天の子猫“のギルド長、マリアです。」
「同じく副ギルド長のレイナよ、宜しくね。」
「マリア様にレイナ様…助けて頂いて、本当に有難う御座います。」
ミーアが心から礼を述べた。
「さて、ミーア、ミーナ。報酬の話だ。」
いきなりラトリスが切り出した。
「ちょっと、ラトリスさん、いきなり…」
「そうよ、病み上がりなのよ。そっとしておいてあげましょうよ。」
「いや、依頼クエストなんだから、そういうことははっきりしておかなきゃな。ミーア、今回の依頼料は100ガルドだ。」
「「はぁ?」」
マリアとレイナは間の抜けた声をあげた。
「ただし、病気を治す為に貴重なエリクサーを使った、ミーナに少し手伝ってもらったから、半額にしておく。それでも相場の価格で50億ガルドだ。払えるか?」
ラトリスはミーアに聞いた。
「…いえ、お金は1ガルドもありません。」
ミーアが申し訳なさそうに言った。
「だろうな。二人の身の上話は、俺も知っている。だから、提案なんだが、俺達の屋敷で働かないか?」
「えっ…?」
「給料も出す。ひと月50万ガルド。そこから毎月20万ガルドを借金で引いて30万ガルドが給料だ。その上、衣食住もしっかりしておく、どうだ?」
「それって…」
「あぁ、勧誘だな。」
「ラトリスさん、それでいいの?」
「ミーアは昔、王宮に務めていた優秀なメイドだったんだ。家に来てくれればそれだけでメリットになる。勿論、拒否権はある。」
「…少しだけ、考えさせてくれませんか?」
「あぁ、ミーナとゆっくり話をすればいい。俺達は外に出ておく。」
そう言って、マリアとレイナを連れて外に出て行った。
「ラトリスさん、本気なんですか?」
「俺は本気だ。」
「でも、彼女はどんな人なのか解らないわよ?」
「…ミーシャを覚えているか?」
「えっと…王宮のメイド長をされている方ですよね?」
「あぁ、あの時の?あの人がなんなの?」
「ミーアは、ミーシャの娘なんだ。」
「えっ…」
ラトリスは続けた。
「王宮最高最強のメイド、通称バトルメイドとまで、彼女は呼ばれていた。しかし、ミーナと出会ってな。」
「もしかして、2人は…」
「そう。ミーナはミーアの本当の娘じゃ無い。ドラゴン強襲事件で親を失ったミーナを、ミーアが引き取ったんだ。」
「どうして?」
「…さあ、理由は知らない。でも、王宮で育てることを、レイナードは許可しても、当時の貴族や大臣達が良しとしなかったんだ。それで、ミーアはミーナを連れて王宮を出たんだ。」
「それで、何でこの森の中に?」
「さあ?ミーシャからは、もし見かけたら、助けてあげて欲しいって言われていたからな。それに、一度だけミーナを連れたミーアをフィリンで見かけていた事があったんだ。声はかけなかったけどな。」
「そんなことがあったんですね。」
「少なくとも、信頼できる人だよ、ミーアは。じゃなかったら、俺もこんな話は出さないよ。」
「それは思うわ。赤の他人を母親と思えるなんて、普通は出来ないと思うわ。彼女がいい人なのは、ミーナを見ていれば解るわよ。」
レイナはそう言った。
「だから家へ招きたいんだ。2人はどう思う?」
「私は良いと思うわ。」
「私も、良いと思います。」
「?どうしたんだ、マリア。」
ラトリスがマリアに聞く。
「いえ、生半可な覚悟で行動したんじゃないんだなぁって思って。だってそうでしょう?自分の立場や仕事を失ってでも、1人の女の子を助けたいって考えて、今日まで生きてきたんですから。私には、そんな覚悟出来ないなって思うと…」
「…言っておくが、同情とかするなよ。」
「同情じゃ無いです。尊敬に値する事だと思っているんです。」
「そうか…」
そこまで話をしていて、家の扉が開き、ミーアとミーナが出て来た。
「もう歩けるんですか?」
「はい、大丈夫です。ラトリス様、マリア様、レイナ様、先ほどの件なのですが。」
ミーアは一拍おいて言った。
「謹んでお受けしようと思います。末永くおそばにおいて下さいませ。」
そう言って、お辞儀をした。
「ミーア、こっちから頼みがある。」
「なんでしょうか?」
「様付けは止めて欲しい。」
「そうね。むず痒くなるわ。」
「せめてさん付けでお願いします、ミーアさん。」
「…解りました、ラトリスさん、マリアさん、レイナさん。」
「さて、これで一件落着だな。ギルド協会に報告へ行こう。」
そう言って、5人でフィリンへと向かって歩き出した。
何時も読んでくださっている方々、有難う御座います。




