食事の時
3話目です。宜しく!
ラトリス、マリア、レイナの三人は、街の中心から少し離れた路地に来ていた。
「ラトリスさん、どこに向かっているんですか?」
「人通りも無くなってきてませんか?」
二人の質問に、ラトリスは答えない。ただ黙々と歩き続けた。
と、不意にある一件の店の前で歩みを止めた。
その店の看板には“食事処 満腹亭“と書かれていた。
ラトリスは店の戸を開けて中に入り、
「マスター、いるかい?」
と、言った。
「いるよ。何時もの席に座りな。」
中から声がした。
マリアとレイナの二人も店に入ると、
「何だ、人を連れて来てたのか?じゃあカウンターは失礼だな。奥のテーブルに座りな。」
と、マスターと呼ばれた初老の男が言葉を続けた。
「あぁ。マリアとレイナだ。二人とも、この人はガルフ。この店のマスターだ。これから色々世話になるだろうから、覚えとくといい。」
「おい、ラトリス。この二人はまさか…マリクとレイカの?」
「そう、あの二人の妹だ。」
「そうかぁ、あの二人が言っていた。ふーん、中々可愛いじゃないか。」
「兄達をご存じなんですか?」
「二人もよくうちに来ていたからな。確かに面影はあるな。しかし、懐かしいなぁ。」
すると奥から一人の給仕服を着た女の子が出て来た。
「ラトリスさん、いらっしゃい!」
「カレン、久しぶりだな。」
カレンと呼ばれた女の子が笑顔で、
「そちらのお姉さん達も、いらっしゃいませ!」
「あ、どうも初めまして。」
それぞれ挨拶を交わし、一番奥のテーブルに三人は着席した。
「カレン、いつもの定食を三人前頼む」
「かしこまりました!飲み物はどうしますか?」
「俺は水でいい。二人は?」
「わ、私も水で。」
「私も。」
注文を受けると、足早にカレンは奥に下がっていった。
「そういえば、二人は何歳なんだ?」
「二人とも、15歳です。」
「そうなのか。」
「ラトリスさんは何歳なんですか?」
「19だよ、ラトリスは。」
水の入ったグラスを三つ持って、マスターがやってきて言った。
「年相応の顔はしてるつもりなんだがな。どうにも20歳は超えているように見られるんだ。あと半年程で20歳に成るけどな。」
「そうなんですね。でも、確かに大人びた印象があります。」
「男なのに女に見られる方が屈辱なんだが。まあ、もう慣れてる。この間は仮面着けてたのは、修行してたからだしな。」
「修行?」
「お前達二人にも関係あるけどな。とりあえず今は食事だ、食事。この店の料理は安くて量も多いからな、オススメだぜ。」
「ふん、味の保証もしておけよ。普通の店なんかよりは圧倒的に旨いはずだぜ。」
「どんな料理なんでしょうか…」
「日替わり定食って、聞いたこと無いわね。」
マリアとレイナの二人はドキドキしていたが、その時、奥からトレイを持ってカレンが出て来た。
「お待ち遠様、今日の定食ですよ。」
トレイには山盛りのトマトソースパスタと、サラダが三人前乗せられていた。
それを見てマリアとレイナの二人は、
「ちょっと!多過ぎませんか!?」
「さすがに食べきれませんよ!?」
と、叫んだ。
「大丈夫。ラトリスさんが残ったら食べてくれますよ、ね?」
「へぇ、今日はパスタか。」
二人は若干引き気味になった。
「この量を食べきれるって、どんな胃袋してるんですか!?」
「え、しっかり動き回るとその分腹が減るからな。まあ、食べきれないことはないさ。それより、早く食べようぜ。」
三人は食べ始めた。
「あれ、でも見た目よりさっぱりしていて、とても美味しいです。」
「本当。全部食べきれるかも。」
「だろう?カロリーも控えめだから、女性でも心配なく食べられる。腹もしっかり膨れる料理ばかりだからな。マスターの店の料理は。オススメする理由がわかっただろ?」
「「はい!」」
三人はあっという間に食べ終えた。そこにカレンが再びやってきて、
「デザートです。」
といって、クレープのような物を差し出した。
「料理はどうでしたか?」
上目遣いで聞いてきたので、
「とても美味しかったです。」
「こんなに美味しいとは思ってませんでした。」
「そう言って頂けて、とてもうれしいです。」
デザートを食べ終えると、
「さて、お勘定を頼む。」
と、ラトリスは言った。
「はい。900ガルドです。」
「えっ!?あれだけの料理で900ガルドですか!?」
「はい。殆ど趣味でやっている店ですから。それに、日替わり定食はこれぐらいの値段でも元が取れる位なんですよ?」
「おい、ラトリス。情報料の支払いはどうする?」
ガルフがラトリスに訪ねた。
「何かいい情報があるのか?」
「ギルド協会会長が代わったのを知ってるか?」
「いや、ドルトムントが辞任でもしたのか?」
「今調査中だが、自分から辞めたわけじゃなさそうだ。なんかきな臭いから、調べておくか?」
「あぁ、頼む。ドルトムントのおっさんが、俺に黙って辞任する分けないからな。…情報料は50万でいいか?」
「あぁ、いいぜ。これからの話も混みでな。」
ラトリスはアクセスの魔法を使い、異空間から袋を取り出し、中から50万ガルドを支払った。
「一体なんのやり取りを?」
「マスターはこの街の情報屋でな。色々情報を貰ってるんだ。腕は確かだしな。」
「だからこの店は趣味みたいなものなんですよ。もっと有名な店に私はしたいんですけど…」
「まあ、いいんじゃないか、今のままでも。」
マスターはあきらかに不機嫌そうに頭を垂れてそういった。
「ま、その話は二人でやってくれ。俺たちは帰るから。」
「おう、また来いよ!」
「ありがとうございました。また来てくださいね。」
「こちらこそ、ご馳走様でした。」
「また来ます。」
三人は連れだって店を出て、家路についた。
「二人の部屋は、用意しておいたから、帰ったら風呂に入って、ゆっくり寝るといい。明日から特訓開始するからな。」
「はい!頑張りましょうね、レイナ。」
「えぇ、お手柔らかにお願いしますね。」
ラトリスは少し笑っていた。
これからどうなるのでしょうか。
次回から特訓開始です。




