ラトリスの怒り、そして決着!
ブチ切れ回です!
「てめえ等、いい加減にしろ!!!」
ラトリスの大声が、コロッセオ内に響き渡った。振動で、コロッセオが揺れたような錯覚まで引き起こす。
「言ったはずだ、呼び捨てにするなって。そんな簡単なことさえ解らん馬鹿なら、生きていてもしょうがねぇな、このクズ野郎!」
ラトリスは本気でピーターを睨んだ。
「なっ、なんだってんだ、こいつ。」
ピーターは気圧されて後退った。
「ラトリスさん…」
「あちゃ、あれは本気よ。本気で怒ってるわ。」
マリアとレイナは落ち着いているように見えて、初めて見るラトリスの姿に内心驚いていた。
「君達、プロテクトの魔法は使えるかい?」
ドルトムントかマリアとレイナに聞いた。
「使えます。」
「一応、準備だけしておいてくれ。彼がここまで怒った姿は久しぶりに見た。最悪の場合、このコロッセオは崩壊するぞ。」
「えっ…!」
「ひっ、久しぶりって、どれくらい?」
「2年ぶりですね。ドラゴン強襲事件以来ですから。」
ミクが付け足した。
「多人数にかけられるなら、彼の標的であるディランとピーター以外にかけておいて欲しい。ラトリスだって、なんの罪もない人は巻き込みたくないだろう。」
「わっ、解りました。」
「結構魔力を使うわね。」
「わっ、私もお手伝いします!」
マリア、レイナ、ミクの三人がプロテクトの魔法をかけていく。その場にいるほぼ全員にプロテクトがかけられるまで、約四十秒ほどかかった。それを確認したのか、ラトリスが動き出した。1歩1歩前へ全身し、距離を詰めていく。
「ちっ、近付くんじゃねぇ!」
そう言いながらピーターはファイアボールの魔法を放った。その数6発。しかし、魔法の球はラトリスに当たる前に霧散してしまう。
「どうした?真面目にやれよ。」
ラトリスは不敵に笑って言った。
「そんな魔法が効かないのは解っているだろ?死にたいのか?」
ラトリスがそう言うと、ピーターは剣を抜いた。
「くそっ、殺してやる!」
中段から横凪に振った剣は、ラトリスが指二本で止めてしまった。そして二本の指をスナップし、へし折ってしまった。
「なっ…なんだと!?」
ピーターは驚いたが、次の瞬間、ラトリスは足払いをかけて転ばせた。
「ぐっ…!」
息を吐き、倒れ込むピーター。次の瞬間、ラトリスはピーターの腹部を踏んづけた。
「ぐぇ…!」
「おい、負けを認めるか?」
ラトリスはピーターに聞いた。
「けっ、誰が…認めるかよ!?」
「そうか…そう来なくっちゃな!」
不敵に笑ってラトリスは、異空間から剣を取り出し、ピーターの胸部に突き刺した!
「ぎゃああああ!」
「うるせぇよ、クズ野郎。ヒール!」
胸部に剣を刺したまま、ラトリスがヒールを唱え、傷を塞ぐ。
「お楽しみはこれからだ。おい、どうすんだ?」
「ぐふぅ、わっ、わかった!俺の負…」
ピーターが言い切る前にラトリスは手首をひねって傷を再び開く。
「ぎゃああああ!」
「は?聞こえねぇよ。もっとハッキリ言えよ。」
「ぐっ、がはっ!お、俺の…」
今度は剣を更に深く突き刺した。
「だから聞こえねえって、言ってんだろう?あぁ?舐めてんのか、クズ野郎。」
傷を負ってもヒールで癒やし、また剣で刺したり抉ったり、そんなやり取りが数十回続いた後、ピーターはとうとう…
「こっ、殺して下さい!」
そう言いきった。
「なんだ、死にたかったのか?生きたいんじゃなかったのか?」
「こんな苦痛をっ、受け続けるっ、位…なら、しっ、死んだ方が、まっ、マシです!おっ、お願い…します!こっ、殺して下さい!」
か細い声でピーターが言った。次の瞬間、ラトリスは剣を引き抜き、ヒールをかけた。
「てめえなんざ、殺す価値もない。ただし、次にまた俺達の前に姿を現したら…」
ピーターの顔の横の地面に剣を刺し、
「もっとえげつないから覚えとけ!」
そう吐き捨てた。ピーターは気絶間際に失禁し、完全に沈黙した。
「えっ、えーと、しょ、勝負あり!ギ、ギルド“天の子猫“の勝利です!」
司会のエイミーが高らかに言った。どうやら決着が付いたようだ。剣を地面から抜き、異空間へ収納し、ラトリスは右手を高く挙げた。
「やったー!」
「すげえよ、マジで!」
「スカッとしたぜ!」
観客席の連中が口々に叫ぶ。
「ふっ、ふざけるな!」
そう叫んだのはディランだった。
「わっ、私の計画が!」
「ディラン、君の負けだ…」
ドルトムントが言った。
「私を幽閉し、ギルド協会および所属ギルドを我が物としようとした罪、万死に値する。ギルド協会本部からの通達を大人しく待て。」
その言葉にディランが肩を落とした。
「ぐっ、ぐぅ…」
「それでは!勝利したギルド“天の子猫“には、1億ガルドが支払われます。どうぞ、お受け取りください!」
ラトリスに1億ガルドが渡されそうになるが、ラトリスは首を振り、
「7000万ガルドでいい。残りの3000万ガルドは、ドルトムントの治療費とか、ギルド協会会長復活のパーティー費用に充ててくれ。」
と、言った。7000万ガルド受け取り、フライの魔法を使い、マリアとレイナの元へと行く。
「二人とも、よくやってくれたな。ほら、賞金だ。」
そう言って二人にお金を渡す。
「でもラトリスさん…」
「貴方の分は…」
「要らない。」
あっけらかんとラトリスは言った。そして、ドルトムントの方に向き直り、
「久しぶりだな、元気そうで何よりだ。」
と言った。
「フッ、皮肉か?お前の仲間に助けられたんだ。この借りは必ず返すぞ、ラトリス。」
ラトリスは笑って、
「あぁ、期待しないで待ってるよ。」
と言った。
「さて、帰るか。満腹亭で飯でも食べて。」
何時ものラトリスがそこにはいた。
ラトリス、マリアとレイナの三人は家路についた。
今回でギルド対決編は終わりです。次回からは別の話になります。




