ギルド、立ち上げます。
2話目です。七千文字位でちょくちょくかけたら良いなぁと思っています。
マリアとレイナの二人が故郷から帰ったのは、1週間後のことだった。
二人は屋敷の前に立って、“天の猫“の看板を見つめながら、
「これから始まるのね。」
「うん、必ず強くなろうね!」
「ぶつぶつと、何言い合ってるんだ、家の前で。」
二人が驚いて振り向くと、女性の顔がそこにはあった。
「あのぅ、誰ですか?」
と、マリアが聞くと、
「1週間たつと、人のことも忘れるのか?まあ、仮面被ってた俺も俺なんだが。」
「えっ?」
下を見ると、真っ赤なコートに真っ黒なズボンを履いている。そこで二人はようやく理解して、
「「ラトリスさん!?」」
と、叫んだ。
「うるさいな、静かに騒げよ。近所迷惑だろう。まぁ、近所になにも無いけどな。」
「ラトリスさんって、女の人だったんですか!?」
「失礼な。れっきとした男だよ、俺は。勘違いされるのは慣れているけどな。それより…」
ラトリスは二人を観察して、
「ちゃんと無事に帰ってきたんだな。世の中物騒だからもっと遅く帰ってくるか、帰ってこないものだと思ってたんだがな。」
「約束しましたし、お金も返さないといけませんから。」
「ふーん、律儀だな。まあ、今回のはマリクとレイカの金だったから、返す必要は無いぜ。」
「だとしても、私達は強くなって、人の役にたつことを望んでいますから、」
「…そうか。」
ラトリスは少し笑った。
「とりあえず中に入るか?それともこのままギルド協会にいくか?」
「ギルド協会へ?何をしに行くんですか?」
二人はきょとんとした。
「まだ登録してないんだろ?冒険者登録と、ギルドを立ち上げることをギルド協会に報告しなくちゃ、何も始まらないだろ?」
ふたりは頷いて、
「そういえば、何もしてなかったですね。特に疲れてもいませんから、ギルド協会へ行きたいです。」
「よし、じゃあいくか。」
三人は街の中心にあるギルド協会へ向かった。
ギルド協会にはそんなに人はいなかった。
ラトリス達は、受付に向かい、応対しようとした受付嬢へ、
「すまないが、ミクさんはいるか?」
と聞いた。
「失礼ですが、お名前は?」
「ラトリスが用があると伝えてくれればいい。」
「わかりました。」
受付嬢は奥へ下がっていった。
「あの…ミクさんって誰ですか?」
「俺の専属の受付嬢だよ。これから君達も世話になる。」
「はぁ…」
しばらくすると奥の方から走ってくる音が聞こえてきて、受付のカウンターへと人がやってきた。
そこには、年の頃20才位の女の人が立っていた。
「ラトリスさん!やっと…やっと仕事する気になったんですね!?」
いきなりの言葉にマリアとレイナは若干引き気味になった。
「あのなぁ、ミクさん。俺は一応仕事はしてきてただろう?二人に悪影響だから、言葉は選んで欲しいな。」
「あっ…すみません。ここ半年ほど、協会には顔を出しても仕事はしていなかったので、つい…」
「やれやれ、二人とも、この人がミクさん、俺の専属の受付嬢で、これから二人の専属になってもらうひとだからな。顔と名前は覚えときなよ。」
「は、はい!私はマリアっていいます!」
「私はレイナです、宜しくお願いします!」
「あらあら、元気良さそうな子達ね。私はミクよ。宜しくね。っと、まずは書類に必要事項を書いてもらおうかな。」
ミクは二人に紙とペンを差し出した。
「名前と年齢、使用する武器の種類と使える魔法をそこに書いて。後からでも登録し直せるけど、なるべく正直に書かないと依頼がこなせない可能性があるから。」
「へぇ…」
「今は適当に書いとけ。どうせ3か月後には名前と年齢以外書き直す事になる。」
「ラトリスさんがそう言うとなると、この二人が?」
「そう、マリクとレイカの妹達だ。」
「やっぱり!どこか似てるなぁって、思ってたのよ。」
「兄達をご存じなんですか!?」
「そりゃ、専属だったしね。あまり強く無かったけど。」
「あいつらは…サボり癖が酷かったからな。真面目に訓練積めばそこそこ強くなれたのにな。」
そんな話をしているうちに、二人の書類が書き終わった。
「ふむふむ…マリアさんがファイターで、レイナさんはウィザードね。中々いい感じじゃない。」
「ほう、レイナは中級魔法フレイムまで使えるのか?」
「はい、レイナは優秀ですから。」
「ちょっと、マリア!貴女だって、岩ぐらいなら切れるでしょうに!」
「…少し見くびっていたかもな。」
「「えっ?」」
「それだけ出来るなら、本気で鍛えたら、化けるかもだ。ドラゴンも倒せるかもしれないな。やる気次第だがな。」
ラトリスはふふっと笑った。
「でも、ギルドはどうするんです?三人まとまって入れるギルドは今のところありませんが?」
「この二人がギルドを作る。俺がそこに入る。」
「ええっ!?」
「名前はどうする?可愛い名前をつけるか?」」
「ちょっと…ラトリスさん、本気ですか!?」
ミクは驚いて、
「ギルド開設には百万ガルド必要なんですよ!この二人が持ってるわけ…」
「百万ガルド!?そんな大金ありませんよ!?」
「なにかんがえてるんですか!?」
「安心しろ、立て替えておいてやる。利息もないから、いつか返してくれればいい。」
そう言うと、ラトリスは
「アクセス!」
といい、なにも無い空間へ手を伸ばした。
異空間に直結し、荷物などを入れておける魔法で、その中からドラゴンの頭骨を取り出した。
「今持ち合わせが無いからな。こいつを換金してほしい。」
「ちょっ!?それだけで1億ガルドは下らない品じゃ無いですか!?いったいどこから!?」
「2年前のドラゴン強襲事件の時のだ。アクセスの魔法は便利でね。保存状態も完璧だからな。急な換金だし、1千万ガルドでいいぜ。」
「全く貴方は…やることなすこと無茶苦茶ですね。」
「まっ、それが1つの持ち味だろ?」
「桁違いに危ない人に運命を委ねてる気がする…」
「同感…」
「残り900万ガルドは…確かギルド継続料一ヶ月10万ガルドだったな?3か月分引いて、後は協会に預けとくわ。何かあったときのためにな。」
「分かりました。そのように手配します。」
「話が早くて助かった。あと、3か月は依頼受けないから、そのつもりでいてくれ。」
「それはなぜ?」
「この二人を鍛える。」
「そうですか…しっかりと鍛えてあげてくださいね。二人も、何かあったら私のところに来てください。何でも対応しますから。」
「ありがとうございます。」
「色々相談しに来ます。」
「じゃあ、そろそろいくわ。」
「あっと、その前に!」
ミクは黒いカードを二枚差し出して、
「冒険者カードを渡し忘れるところでした。それがあれば、街から街に移動しても冒険者ということで入ることが出来ますよ。」
「そういや、そうだったな。俺は城下位しか行かないから、あまり関係ないけど…」
「もう、他所の国でも使えますから、しっかりと携帯しておいてくださいね。」
「はい、わかりました。ありがとうございます。」
三人はようやく、ギルド協会の外に出た。
と、入り口で、
「あいつらです!1週間前俺達の邪魔をしたのは!?」
と、怒声が響いた。
三人が見ると、十人の男達がそこに立っていた。
「てめえか、俺達のギルドに喧嘩売ったのは。」
「喧嘩?あぁ、1週間前にこの二人を慰み者にしようとしてた奴らか。今度は仲間を連れて来たのか?」
「うるせえ、てめえ。死にたくなかったら、その二人をおいていきな。ぶっ壊れるまでまわしたら、返してやるからよ。」
「天下の往来で不潔なこといってんじゃねえよ。ま、いいぜ。二人とも。あの阿呆共の相手をしてやれよ。二人の強さが見たい。」
「えっ、でも…」
「安心しろ、殺さなければ何でもやっていい。それにほら。」
ラトリスはアクセスの魔法を使い、異空間から剣と杖を出した。
「刃は潰してあるから、全力で振っても骨が折れるだけだ。Dクラス冒険者相手に何処までやれるか見せてくれ。ヤバくなったら、俺がやる。」
「なにをごちゃごちゃいってやがる!」
十人の男達の内、四人が同時に躍り出てきた。
マリアは剣を受け取ると、素早く踏み込み、横に剣を一閃させた。
「これくらいなら、なんてこと無いわ。」
一閃が決まり、四人の男が後ろに吹っ飛ぶ。
「へぇ、やるな。」
ラトリスは呟いた。と、同時に、
「炎よ、我が敵を焼き尽くせ、ファイアボール!」
レイナの持った杖から、4つの炎の弾が発射され、後方に待機していた男達に直撃し、吹っ飛んだ。
「おぉ、こっちもやるなぁ。」
「ふふん、まあね。」
レイナは得意気にいった。
残るは二人の男達だけになった。
「てめえら、いったい何なんだ!?冒険者だとしたらGランクじゃねぇのか!?」
「Gランク?」
「冒険者成り立てのことさ。クエストこなしてればそのうち上がる。一番上はSランクだな。」
「ちっ、めんどくせぇ。Bランクの俺達が相手しなくちゃならないなんてよ。」
「び、Bランク!?これは勝てそうにないかなぁ。」
マリアがそう言った。
「確かに強そう…フレイムを使うしか無いかなぁ。」
レイナも緊張しながらそう発した。
すると、ラトリスが前に出て…
「じゃあ、俺がやろう。」
といった。
「へっ、てめえのランクは知らねぇが、俺達二人はあいつらとは違うぜ」
「そうかぁ?俺からしたら、お前等全員ただの阿呆に見えるけどなぁ?」
「舐めやがって!」
片方の男が斧を持って襲いかかってきた。
ラトリスは冷静に見て、的確に男の斧を持った手を右足で蹴り上げ、そのまま鳩尾に前蹴りをたたき込むと、その足を踏み台にして顎にめがけて左足でサマーソルトキックを放った!
「ぐえっ!」
と、いって男は倒れた。
二人目の男はラトリスが着地すると同時に突進してくる。こちらは獲物を持たない、おそらく拳法家なのだろう、両手を開いてラトリスに掴みかかろうとしていた。
ラトリスは相手の手を四つ手で受け止め、そのまま力比べの体制に入った。
「へっ俺と力比べしようってのか?甘えぜ!」
男は余裕の笑みを浮かべていた。ラトリスより一回りデカい体格を持つ男との力比べ、圧倒的に不利では無いかと思った瞬間、ラトリスは平然と相手の股間を蹴り上げていた。
「グギャア!!!」
これにはたまらず、男は悲鳴をあげて蹲った。
が、両手はラトリスに捕まれていて、一切動かせない。ラトリスは更に男の股間を蹴飛ばし続けた。
「どうした?こんなもんか、Bランク様?」
「ま、待て、待って下さい!もう、もうやめて下さい!」
「けっ、つまんねえな。」
ラトリスは手を離すと、蹲った男の後頭部を踏んづけて言った。
「次また俺達にちょっかいかけてみろ、今度こそ殺してやるから覚悟しとけ!馬鹿野郎!」
と、相手の後頭部に唾を吐きかけた。
マリアとレイナは驚愕の眼差しを向けていた。
「…鬼?」
「一応人間よ。多分ね…。」
「さてと、腹も減ったし、飯食いに行くか!」
何事も無かったかのようにラトリスが言うと、三人揃ってギルド協会から立ち去っていった。
「しかし…」
「何ですか?」
「二人とも中々やるなって思ってな。」
「これでも村の警備もやってましたから。」
「魔物退治してましたからね。」
「なるほど。じゃあ心配いらないな。」
ラトリスは呟くと、馴染みの店へと向かって歩きだした。
「あっ!」
マリアが叫んだ。
「どうした?」
「ギルド名、言い忘れました。」
「・・・まあ、次に行ったときにつけるか。」
次回は食堂小話でも書きます。
なるべく早く書くつもりです。