作戦会議
いやぁ、話し合いって大事ですね。
満腹亭で情報収集した翌日、ラトリスは少し寝坊して起きてこなかった。
「おかしいなぁ?」
「何時もなら、私達より先に起きているのに…」
マリアとレイナは不思議に思っていた。と、二階の奥の部屋から物凄い音がした。二人は泥棒かと思い、その部屋の前までやってきた。二人が到着すると、扉が少し開いていたので、隙間から中を覗くと、中にラトリスが立っていた。ラトリスは二人に気付き、
「見~た~な~!」
と言った。
「「きゃー!」」
二人は絶叫した。
「なんだ、お前達か。まぁ、当たり前だけど。」
ラトリスはあっけらかんと言い切った。
「ラっ、ラトリスさん!?」
「脅かさないでよ、もう…」
「いやぁ、すまんすまん。」
ラトリスは平謝りだ。
「昨日考え事をしていてな。考えるときは何かをしながらだと捗るから、倉庫の整理をしていたんだ。」
「倉庫?」
「ここが?」
二人は周囲を見渡すと、山積みにされた荷物が散乱していた。
「なんというか…」
「埃まみれで汚いわね。」
マリアは言葉を濁し、レイナははっきりと言った。本当に汚かった。
「2年間、放置していたからな。そりゃ汚いわ。埃が溜まってるから、落とそうかと思ったんだがな。」
「一晩中やっていたんですか?」
「いや、2時間前位かなぁ、起きたのは。」
「ずっと考え事をしていたの?」
「まあな、で、行き詰まったからここに来たんだ。」
ラトリスは再び倉庫の中身を見渡した。
「ある意味、ここが一番落ち着くからな。」
「ここには何があるんですか?」
「殆どガラクタだな。“天の猫“時代にマリクとレイカが集めていた物もここにあるよ。」
「兄さん達が?」
「売ったらそこそこの物も中にはあるから、ギルド協会に持って行って見るか?」
「…今はいいわ。協会は今は敵だし。」
「そうか?一週間後にはいいギルドになっていると思うぜ?」
ラトリスは髪を掻き上げて言った。
「それはどういう意味ですか?」
「ギルド協会会長が代わるからな。」
「じゃあ、やっぱり…」
「…二人に頼みがあるんだ。」
「ギルド存続の為です。どんなことでもやりますよ。」
「それに、ラトリスさんにとっても、ドルトムントっていう人は大切なんでしょう?」
「…風来坊だった俺を、冒険者にしてくれた人さ。いい奴だから、助けてやりたいんだ。」
「それで、作戦は決まったの?」
レイナが聞く。
「ギルド対抗戦は、俺一人で戦う。」
「それって…」
「二人には、ドルトムントの救出を頼みたいんだ。当日、ギルド協会には人は少ないはずだ。ミクに頼めば、ギルド協会の地下へ入ることが出来る。地下にはギルド協会へ反逆を企んだ奴らが多くいるはずだが、ドルトムントが居るとしたらそこのはずだ。俺の名を出せば、あいつは脱出を考えてくれるだろう。」
「私達がすることは解ったわ。でも、58人も相手に出来るの?」
「いや、恐らく出てくるのは50人もいないだろう。」
「どうしてですか?」
「ディランとかいったか、今の会長は。あいつが“天狼星“と繋がっているなら、構成員の中から見張りをつけているはずだ。何人かは解らんがな。」
「でも、大変なんじゃ…」
「最大で100人規模と戦ったことがあるし、俺にとっては雑魚と変わらん。心配しなくても、時間稼ぎにならどうにでもなるさ。それより二人の方が心配だ。」
ラトリスは一呼吸おいて続けた。
「ミクさんに協力を頼むにしても、何人かと戦うことになるだろう。しかも狭い建物の中でだ。まだ対人戦は得意とは言えないだろう?」
「確かに…」
「建物の中で戦うのは初めてね。」
「そこでだ。二人に建物内での戦い方を残り三日で叩き込むことにした。」
「やっぱり…」
「そうなるのね…」
「なんだ、どうした?」
「なんとなくそんな気がしていましたから。」
「気持ちの方は大丈夫よ。しっかり教えてね?」
「…お前達には、驚かされることが多いな。」
「何か言いました?」
「いや、何でもねぇよ。」
そんなことをいいながら、ラトリスは笑っていた。それから3日間、二人はみっちりと訓練をした。
お話を読んでくれている方、本当にありがとうございます。




