ギルド協会会長との話
醜い豚が出て来ます。ご注意下さい。
武器と防具を買いに行った翌日、三人はリビングで寛いでいた。
「クエストも無事に終わったし、暫くは大丈夫だろう。」
「そうですね。」
「ギルド協会からも文句も言われないわよね。」
そんな話をしていると、玄関を叩く音が聞こえた。ラトリスが玄関を開けると、
「ようやく会えましたよ。ふぉっふぉっふぉ。」
と、豚のように太ったおっさんが一人と、ギルド“天狼星“の男の一人が立っていた。次の瞬間、ラトリスは扉を閉めた。
「待ちなさい、この対応はあんまりじゃないですか!?」
豚が叫んだ。ラトリスは再び扉を開けて、
「うるさい、騒ぐな。近所迷惑だ。とっとと帰れ。」
と、言った。
「おいおい、ラトリスさんよぅ、そんな態度を取って良いのかい?」
“天狼星“の男がそう言った。
「この方こそ、フィリン支部のギルド協会会長、ディランさんだぞ。」
そう言われて、ラトリスは余計に嫌そうな顔をした。
「実は先日の話の件で来ました。ふぉっふぉっふぉ。」
気味の悪い笑い方をするおっさんだなぁと、マリアとレイナは思った。
「ラトリス…でしたか?この屋敷を引き渡して貰いたいのですよ。ふぉっふぉっふぉ」
「“さん“を付けろ。てめえに呼び捨てにされる筋合いは無い。」
「そうですか、ならばラトリスさん、どうしてもこの家が必要なのですよ。引き渡せない理由でもあるのですかな?」
「…昔、国王の命を救ったことがあってな、その報酬として家が欲しいと言ったんだ。それならと、避暑地として利用していた家があるからと、この家を貰ったんだ。」
ラトリスは一呼吸おいた。
「だからこの家は俺のものだ。まぁ、前に後ろの馬鹿にも言ったんだが、千億ガルド払うんなら譲ってやるよ。」
ラトリスは言い切った。マリアとレイナは不思議に思った。それだけの理由では無いのではないかと。しかし、下手なことは言わないように、黙ってやり取りを見ていた。
「千億ガルドは言い過ぎのように感じますが、筋は通っていますねぇ。ふぉっふぉっふぉ。」
豚が気持ちの悪い笑い声を上げた。
「ならば、ギルド協会会長の権限を使いましょう。」
「…何?」
「ラトリスさん、あなたのギルド“天の子猫“と、ギルド“天狼星“で戦って貰いますよ。勝った方がこの家を使うと言うことで。ふぉっふぉっふぉ。」
「却下だ、馬鹿野郎。この家とギルドは関係ない。」
「しかし、玄関に“天の子猫“の看板を掲げているでしょう?無関係とは言えない。」
「だとしても、俺達にメリットが一切ないだろう。」
「ならばこうしましょう。あなた達が勝てば、金輪際、ギルド協会はあなた達に無理強要は一切しません。」
ディランは続けた。
「それに、勝っても負けても1億ガルドを差し上げましょう。」
「千億ガルドを千分の一にするつもりか?それで納得すると思うか?やはりただの馬鹿なのか?」
ラトリスの言葉にディランは少し眉をひそめた。
「ならば、私に、ギルド協会会長に意見できる権利も付けましょう。」
「ディランさん!?」
“天狼星“の男が驚いて言った。
「これでどうでしょう?報酬としては筋が通るでしょう?」
ラトリスは少し考えた。そして…
「良いだろう。その条件でやってやるよ。ついでに、お互いのギルドの存続もかけるか?」
「「ラトリスさん!?」」
ラトリスの言葉に、今度はマリアとレイナが叫んだ。
「どうせこの家がなくなったら、ギルド拠点を新しく探す事になる。それは面倒くさいから、ギルドも潰してやる。」
「ちょっと、本気なんですか!?」
マリアがラトリスの顔を見た。本気の目だった。
「よろしい、負けた方のギルドは消えてもらうことも条件にしましょう。では、時間は一週間後の今日。場所はコロッセオにしましょうか。観客も入れますがよろしいな?」
「好きにしろ。」
「フィリン支部最強と最弱の戦い、楽しみにしているぜ。」
「あぁ、精々楽しみにしていろ。」
そこまで話して、二人は帰っていった。二人が門を出て行った瞬間、ラトリスはクリーンの魔法を使い、更にアクセスの魔法で異空間から塩を取り出し、そこら辺に撒きだした。
「ラトリスさん、本気なんですか?」
「ああまで言って、勝算はあるの?」
マリアとレイナは不安そうにラトリスに聞いた。
「勝算なくてあそこまで啖呵は切らないさ。大船に乗った気でいろよ。」
「でもギルドの存続まで賭けるなんて…」
「馬鹿げているわ。」
「男はいつでも馬鹿なんだよ。安心しろって。俺に考えがある。」
ラトリスは言い切った。一抹の不安を感じながらも、二人はラトリスを信じることにした。
なんだかんだ、最近書いてて楽しいっす!




