ミラージュ
20倍の重力に慣れるまで、1週間程かかった。その頃には既に戦いに必要な動きはほぼマスターし始めていた。
「…」
「どうしたの、ロキ?」
「いや、普通は何年もかかるはずなのよ、そこまで動けるようになるには。」
「きっと、ドラゴンの肉のせいじゃ無いかな。」
「それでもよ。」
「後は…目標があるから。」
「目標ねぇ…」
「はい。」
「まぁ、良いことだね。じゃあ今日から更に上の特訓をしようか。」
「お願いします!」
そういうと、ロキはいきなり2人に増えた。
「え…?」
「この魔法、理解できる?」
「2人に…増える?」
「ん~、ちょっと違うかな。片方は分身、本物じゃ無い。さて、どちらが本物でしょう?」
「…右。」
「なぜそう思うの?」
「右のロキの方が優しそうだから。」
「ぷっ、あはははは!」
「違うの?」
「まだそんなに知り合って間もないのに、優しい…か。そんな風に言われたの初めてよ。」
「…正解は?」
「外れよ。どっちも偽物だから。」
そういうと、後ろから優しくラトリスを抱きしめた。ラトリスは驚いた。
「いつの間に後ろに?」
「ん~、まだまだ気配察知が出来てないのよ、あなたは。最初から3人、しかも本体は後ろにいたのよ。」
「そっか…」
「まあ、気にしちゃ駄目よ。だって…」
そういうと、ロキは100人ほどに増えた。
「こうなったら誰が本物かなんて、解らないでしょう?」
「か、数が段違いだ…」
「誰が本物か当てるのはまた次の段階よ。今はこの魔法を覚えて貰う。私オリジナルの魔法、ミラージュをね。」
「僕に出来るかな?」
「出来る出来ないじゃ無い、やるのよ。ね?」
そう言って、ラトリスから離れた。ラトリスは意識を集中して、魔法のイメージをする。そして、
「ミラージュ!」
と叫んだ。すると、一体の分身が生まれた。
「出来た…けど、まだ一体か。」
「…この子、どれ程に…」
「ロキ?」
「あはははは!面白いわ、ラトリス。」
「?」
「あなたは確実に強くなれるわ!私よりも、いえ、アテナ様よりもね。」
「よくわからないけど、褒めてるの、それ。」
「勿論よ。後はその分身と毎日戦いなさい。朝から晩までね。慣れてきたら、数を増やしていきなさい。」
「最大何人くらい?」
「100人位倒せるようになりなさい。」
「ひゃ、100人も!?」
「それが最低条件よ、強くなってね。」
「…解った。」
そうして、来る日も来る日も特訓を続け、およそ1年かけてミラージュの魔法を極めていった。勿論、その間も他の魔法や、武芸の修行も欠かさなかった。
読んでくださっている方々、有難う御座います。




