ラトリスの行動
話は二日前に遡る。ラトリスが1人で城を出た直後、
「そうか、もう何も気にしなくて良いんだったな…」
そう言ってラトリスは右手に意識を集中させる。すると、右手が輝きだし、その手を前にかざすと、巨大な狼が出現した。
「ラトリス様、お久しぶりです。」
「6年、いや7年ぶりか。異界からお前を呼び出したのは。」
「はい。このフェンリル、いつ呼び出されても良いように準備はしておりました。」
「早速頼みがある。俺を乗せて、フィリア王国へ向かって欲しい。」
「ラトリス様が長年おられた場所ですね。どうぞ、お乗り下さい。」
フェンリルは姿勢を下げて、ラトリスが乗りやすいようにする。フェンリルに跨がると、物凄いスピードで走り出した。
「やはり早いな。何処まででも行けそうだ。」
「お褒めにあずかり光栄です。」
途中で遭遇した人には目もくれず、街道をひたすらに走った。直ぐにフィリア王国直前まで到着すると、
「フェンリル、止まれ。」
ラトリスの言葉に素直に従い、フェンリルが停止する。
「余り目だたない様にしたいからな、ここまでで良い。」
「畏まりました。また何かあれば、申しつけて下さい。」
「あぁ。後、俺の名はもうロキシスだ。」
「…なるほど。解りました、ロキシス様。他の者達にも周知させておきます。」
「頼んだぞ。」
優しくフェンリルを撫でて、異界へと戻し、フィリア王国へと向かう。直ぐに謁見の間に通されると、ラトリスは国王達に言った。
「どういうつもりだ。」
「ラトリス殿!?早い帰りだな。ララは?」
「そんなことを聞きに来ると思うか?あの書状の事だ。」
「我々は…」
「俺を政治に利用出来るとでも考えたか?」
「違う!ラトリス殿、それは…」
「言い訳無用。俺を甘く見ていたお前達が悪い。それだけを伝えに来た。」
ラトリスは踵を返して謁見の間を出た。出た時、入り口にミーシャが立っていた。
「ラトリス様?」
「ミーシャ、この城から、いやこの街から出ろ。今からこの国を滅ぼす。」
「ラトリス様!?」
「いいな、忠告はしたぞ。」
そう言って、ラトリスは城から離れた。そして街を見下ろせる高台に上がり、
「避難勧告はあの程度で良いか。まあ、信じる方が無理か…」
殆ど避難は出来ていないようだったが、ラトリスは詠唱を始めた。
「この魔法、未だに詠唱をしなきゃならんのが欠点だな。だがまあいい。」
ラトリスは両手をフィリア王国へと向けて、
「終わりだ、メテオ!」
突然空に巨大な岩石が生み出され、城へと落下していき、爆音が響き渡った。王国だった場所は、巨大なクレーターが出来た。
「…ふん、まあこんなものか。」
こうしてフィリア王国は完全に崩壊した。
約30後、ラトリスは今度はフィリンにいた。そしてギルド協会へと向かい、ミクを呼び出した。
「ミクさん、俺は冒険者を辞める。」
「えっ!?な、何を言ってるんですか!?」
「冒険者登録の抹消を頼みたいんだ。」
「理由は何なんですか?」
「この大陸に用が無くなった。」
「それは理由にならないな。」
ドルトムントが現れた。
「もっと明確な理由が無くては、冒険者登録の抹消は出来ないことになっている。どうしたと言うのだ、ラトリス。」
「…否応なしに辞めたいだけだ。それ以上はなにも無い。邪魔立てするなら…」
ラトリスは両手に意識を集中させ、
「ギルド協会なんざいらない!」
いきなり雷の中級魔法スパークと風の中級魔法ストームを炸裂させた。相反しあう魔法が爆発を起こし、呆気なく建物は崩壊してしまった。瓦礫の中からドルトムントとミクが姿を現す。
「らっ、ラトリス!?」
「ラトリスさん!?」
「最早、この大陸の事などどうでも良い…」
そう言って去って行ってしまった。
そして屋敷に着くと、3階へと上がり、荷物の整理をする。
「まあ、こんなもんか。」
殆どがラトリスにとってガラクタに過ぎないと考えて、殆どの物を部屋に詰め込んだ。
(ラトリス、これで良かったのですか?)
今まで喋らなかったカグラが口を開いた。
(…これでいい。俺は利用されるのが大嫌いだし、大切な人に会うには身分や経歴なんか邪魔なだけだ。)
(そうですか…)
(嫌になったか?)
(いいえ、私はあなたに付き従います。)
(…有難う。それから、これからは俺のことをロキシスと呼べ。)
(ロキシス?)
(あぁ、俺の本当の名前だ。)
そこまでカグラと話してラトリスは、
「我が元へ集え、七聖武器よ!」
と、唱えた。次の瞬間、光り輝く七聖武器がラトリスの前に召喚された。
「ラトリス殿、どうされた?」
「俺の名前はロキシスだ。俺は今から旅に出る。もうこの大陸には戻るつもりは無い。」
「なんと!誠ですか。」
「ついてはお前達はどうする?このままこの大陸に残るか、それとも天界にいくか?」
「ついていくという選択は無いのですか?」
「…俺にはカグラがあればいい。」
「…解りました、天界に送っていただけますか?」
「他に意見は?」
「私達の持ち主であるロキシス殿の命令とあらば。何時でも再会できる様にしておきます。」
「…解った、アテナ様の元へお前達を送る。2度とこの世界に来ることは無いかもしれないがな。」
そう言うと、空間をこじ開けて、中へ七聖武器を入れていった。
「ロキシス殿…」
「カリバーン、どうした?最早鞘は外してやっただろう?流暢に喋ることも許可してやるぞ?」
「最後にレン殿と話がしたかった。」
「…悪いが、それは無理だ。」
「…解りました。」
カリバーンは寂しそうにしていたが、ラトリスの言うことに従うことにする。
「さて、後は…」
そう言って、リビングに降りて、手紙を置いた。
「これで全て終わりだ…」
屋敷を後にして、ラトリスは東、ライド王国の方へと向かった。
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