ラトリスの手紙
バーンシュタイン王国を出て帰路について二日後、ようやくフィリア王国に着いたマリア達。しかし、最早国とは呼べないほどに、フィリア王国は街も城も崩壊していた。
「…まさか、ラトリスさんが?」
「いくら何でもやりすぎよ…」
崩壊した街の中から人を探すが、人っ子1人居なかった。と、
「ミーア?」
後ろから不意に声が聞こえた。マリア達が振り返ると、そこにはミーシャが立っていた。
「お母様!」
「あぁ、ミーア、ミーナ、良く無事で。」
「お母様、一体何があったのです?」
「…ラトリス様が。」
「ラトリスさんが来たんですか?」
「二日前に、ラトリス様がやって来て、国王と面談をしました。話の内容は解りませんでしたが、ラトリス様は国王陛下達以外に、“この城、街から離れろ“と言いました。避難を完了した後、街や城から炎が上がっていました。恐らく、ラトリス様の行動の結果だと思います。」
「そんなことが…」
「皆さんはどうしてここに?」
「実は…」
マリア達は、バーンシュタイン王国で起こった出来事をミーシャに話した。
「…信じられません。ララ姫様が死んだなんて…」
「でも事実です。私達もあれ以上食い下がっていたらどうなっていたか…」
「そうですか、皆さんは今後どうされるのですか?」
「フィリンに戻ります。」
「私もご一緒してよろしいですか?」
「マリアさん、レイナさん。」
「勿論です。」
「ミーアとミーナの家族は、私達の家族も同然だもの。」
そう言って、5人でフィリンに向かう。フィリンの街は変わらず平和な時が流れているように見えた。しかし、5人がギルド協会へ向かうと、協会の建物が崩壊していた。
「こっ、これは!?」
「あれ?マリアさん?」
「ミクさん!」
協会建物跡にミクがいた。駆け寄って、事情を聞く。
「一体何が?」
「ラトリスさんが…」
「ラトリスさんがどうしたの?」
「二日前にやって来まして、ドルトムントさんと話があると言って、数分後に建物が崩壊したんです。」
「意味がわからないわ。」
「私から説明しよう。」
後ろからドルトムントがやって来た。
「ドルトムントさん!?」
「どうしたんですか、その怪我は。」
「…ラトリスだ。」
ドルトムントは話し始めた。
「一昨日の夜、ラトリスが来てな。冒険者を辞めると言ってきたのだ。理由を聞くと何も答えないし、不思議だったので、辞めることは不可能だと説明した。しかし、話の途中で“なら、この協会事態無くせば良い“と言ってな。次の瞬間にはこの有様だ。」
「そんなことが…」
「君達、何か事情を知らないか?」
聞かれたとおり、バーンシュタイン王国での話をドルトムントとミクにマリア達がすると、
「…信じられん。」
「あのラトリスさんが、バーンシュタイン王国の王子様だったなんて…」
「でも事実なんです。」
「で、その後ラトリスさんは何処に?」
「解らん。しかし、この大陸に用は無くなったと吐き捨てていたからな。もう大陸を出ているかもしれん。」
「そんな…」
マリア達は項垂れて、取り敢えず屋敷へ戻ることにした。屋敷は普段通りだったが、唯一、いつもラトリスがかけていたプロテクトの魔法だけが解けていた。
「1度ここへ来たみたいですね?」
「もしかしたら!」
扉を開けて中へ入る5人。しかし、誰もいる気配がなかった。
「ラトリスさん…」
「何処へ行ったのかしら?」
と、リビングに小さな封筒が1つ置かれていた。マリア達は目を合わせあい、マリアが代表して中を読む。
「“前略、マリア、レイナ、ミーア、ミーナ。これを読んでいると言うことは、俺はもうお前達の近くに居ないということだろう。恐らくバーンシュタイン王国で一悶着があって、俺の正体が解っている事だと思う。“」
「正体って、バーンシュタイン王国の王子って事?」
「レイナさん、静かに聞いていて下さい。マリアさん、続きを。」
「“俺はバーンシュタイン王国第一王子としてこの世に生を受けた。しかし、叔父の野心のせいで嵌められ、森に捨てられた。“」
「そこまでは知っているわ。」
「レイナさん!」
「“その後、俺はとある神に拾われて、天界で育った。5歳から14歳までの間、神によって育てられたんだ。“」
「…えっ?」
「続けますよ。“その後地上に戻ってきたのは、大切な人を探すためだったが、この大陸にいたのは、俺達の創造主、アテナ様が人としてもう一度生きろと言ったからだった。そこからは前にお前達に話した通り、マリクやレイカと出会った時になる。“」
マリア達は驚いていた。
「“人並みの生活も楽しかったが、どうにも俺を政治利用しようとする連中が増えそうだと俺は考えている。だから、今回のバーンシュタイン王国訪問の後、俺は全てを捨てるつもりだ。富や名声なんかいらない。俺は、大切な人のために生きよう、そう思っている。だが、この大陸にはその人がいないのは確かだ。“」
「ラトリスさん…」
「“だから、この手紙を読んでいる時は、政治利用されそうになって、俺が怒って出ていった時になるだろう。だが、これだけは伝えなきゃならないことがある。マリア、レイナ。お前達は油断さえしなければ人類最強と言える力を身に付けている。これからも邁進することなく精進しろ。ミーア、ミーナ。家族って良いものだと、思い出させてくれて有難う。母と子、2人で頑張って生きてくれ。そして4人に、俺の持っている金目の物は渡す。俺がいなかったら、屋敷の3階奥の扉を開け。中に山ほど金塊を詰め込んでおいた。一生遊んで暮らせるだろうが、何かを求める事を忘れないように生きて欲しい。屋敷もお前達に譲る。“天の子猫“を続けるもよし、辞めるも自由だ。だが、後悔無い生き方をして欲しい。それだけが、俺がお前達に言える最後の言葉だ。後は頑張れ。 追伸 お前達の借金は、チャラにしておく。“」
「ラトリスさん…」
「勝手にいなくなって…それでも私達の心配をして…」
「お兄ちゃん…」
「ラトリス様…」
5人は3階奥の部屋を見てみた。確かに金塊やドラゴンの骨等、売れば恐ろしい額になる物が山ほど入れられていた。
「こんなに…どう使えばいいのかな?」
「それはまた後で考えましょう。」
「もうラトリスさんを追いかけるのは辞めましょう。」
「うん、お兄ちゃん、自由が欲しかったんだね。」
「そうね。」
5人はいなくなったラトリスのことを考えていた。
読んでくださっている方々、有難う御座います。




