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弱小ギルドの最強英傑(ラトリス)  作者: ミュウ
決別編
110/138

ラトリスとアテナ

完全に国王は沈黙した。後に残ったのは30人程の死体と、未だバインドで拘束されている衛兵達、そして無傷のマリア達だけだった。

「貴様、よくも!」

なおも襲いかかって来そうな衛兵達、しかし、そこにレンが現れた。

「一体、先ほどの悲鳴は!?」

「レン様、お下がり下さい!奴は危険です。」

「えっ、兄さん、何をしたの!?」

「兄さん…?まさか、レン様、あの方は…!?」

「私の兄、ジン兄さんです。」

「じ、ジン様!?」

衛兵達は驚いて声が裏返った。

「レン、腐りきった国王はこの通りだ。」

国王の首根っこを掴んで、レンの方に放り投げる。

「お前ももう21歳だ。国を継ぐならいい年だろう?お前がこの国をよくすればいい。」

ラトリスは笑ってレンに語りかけた。

「兄さん、でも…本来受け継ぐ兄さんがいるのに、わたしが継ぐわけには…」

「俺はもう死んだ身だ。この国とは関係ない。それに、各国の騒動に巻き込まれるのはご免だ。」

そう言ってレンに近付き、優しく抱きしめた。

「今まで辛かったな。」

「兄さん…」

レンは涙を流した。

「俺はこれからもただの冒険者のラトリスだ。お前はこの国の女王になって国を治める。それで良いんだ。」

「解りました。」

レンは泣き止んで、ラトリスから離れた。

「いい話ね。」

「…うん。」

マリア達も涙を流して見ていた。そんな中、1人蚊帳の外のような扱いを受けていたララが、レンに話しかけた。

「新女王就任、おめでとうございます。」

「…有難う。」

「父上からの書状を、国王に渡すよう承っていましたが、新女王にお渡しするのがよろしいかと。」

そう言って、書状をレンに渡す。レンはそれを受け取り、中を読む。すると、少し困った顔をした。

「これは…」

「どうした、レン?」

レンはラトリスの顔を見て、

「兄さん、この中身をご存じですか?」

「いや?」

そう返事するラトリスに、レンは書状を渡した。それを読んで、ラトリスは眉の皺を寄せた。

「…何だと?」

「ラトリスさん、そこには何と書いてあるんですか?」

「巫山戯やがって…!」

ラトリスは書状を床に叩きつけた。それを拾って、マリア達が読む。

「えっと、“そちらのジン王子と、ララを結婚させたく…“って、えっ、結婚!?」

「つまりどういう事!?」

「お父様の考えでは、私とラトリスが結婚すれば、2国間で争いが無くなるのではと考えたのです。私は、良い話だと思っています。」

ララは顔を赤らめて言った。

「でもそれって…」

「ラトリスさんがこの国に戻らないと成立しない話じゃ…」

「はい。ですからラトリス。この国の王になって下さい。そして、私と結婚を…」

そこまで言って、ララはラトリスを見た。しかし、そこにはいつも優しい顔をしていたラトリスの顔は無かった。

「巫山戯るな…」

「ラトリス?」

「俺を政治の道具にするつもりか!」

「いいえ、ラトリス。私はあなたが純粋に好きなだけです。」

「ラトリスさん!?」

ラトリスは怒っていた。そしてララに近付いて、

「ララ、右手を出せ。」

「えっ、ラトリス?」

「とっとと出せ!」

怒りに任せて、ラトリスがララの右手を取り、何やら魔法をかける。すると、ララの右手からフーが出て来て、ラトリスの肩にとまった。そしてラトリスは、

「残念だ。まさか、こんな事で友達を無くすとはな。」

「え…」

不意に力無くララが倒れた。

「ラトリスさん!?」

「ララちゃんに何を!?」

「五月蠅い!」

ラトリスが一喝した。

「信じていた…政治やら何やら関係なく、俺を慕ってくれているんだと。だがどうだ?七聖武器の件にしろ、今回にしろ、俺を道具か何かにしか考えちゃいない!そんな奴らに気を許していたなんてな、自分の甘さに反吐が出る。」

ラトリスは続けて言った。

「最早、こんな大陸に用は無い。」

ラトリスは踵を返して出ていこうとする。が、マリア達が立ち塞がった。

「ラトリスさん、何処へ行こうって言うんですか!?」

「ララちゃんを元に戻して!」

「…お前等も、所詮は俺を道具として見ていたのか?」

「そうじゃありません!でも、今のラトリスさんは何かおかしいですよ!」

「おかしいのはこの世界だ…」

「何を言っても無駄なのね。」

「そこをどけ、死にたくないならな。」

「退きません!」

マリア達と一触即発状態になった。が、その時ラトリスとマリア達の間に光が生まれた。

「何!?」

「きゃあ!」

マリア達は思わず目を閉じた。光が止んで、目を開けると、そこには美しい女性が立っていた。異様なのは、後光を背負い、毅然とした態度を取っているところだった。

「ラトリス…いえ、ロキシス。」

「アテナ様…」

ラトリスが膝をついて挨拶をする。

「天界で全ては見ていました。あなたの行い全てを、です。」

「はい。」

「あなたが我慢ならないのはよく解ります。ですが、ここで暴れても仕方が無いでしょう?」

「はい…」

「ロキシス、あなたの最愛の人の元へ向かいなさい。彼女が待っていますよ。」

「解りました、全てはゼウス様の名の元に。」

そう告げて、ラトリスはそれ以上何も言わずに部屋を出ていった。マリア達は、突然現れたアテナに驚いて、言葉も出ない。

「さて、貴方達に忠告しておきましょう。」

そう言って振り返り、アテナはマリア達を見た。

「彼を追うことは止めておきなさい。」

「そっ、それはなぜですか!?」

何とかマリアが言葉を発する。

「彼には辛いことをさせてきました。もうゆっくりとさせてあげたいのですよ。」

「そんなこと、貴方が決めることじゃないでしょう?」

「いいえ、決めることです。」

そう言うと、マリア達に向かって手をかざし、何やら魔法を唱えた。

「これは…!?」

「う、動けない!?」

「ロキシスの邪魔はさせるわけにはいきません。彼を追えば、貴方達が死ぬことになります。」

「どういうことよ!」

「…直ぐに解るでしょう。少なくとも知り合いの誰かにメッセージぐらいは残す子ですから。」

そう言って、アテナも踵を返す。

「待って下さい、貴方は一体!?」

「私はアテナ。貴方達とこの大陸の創造主です。」

それだけ伝えて消えてしまった。マリア達が動けるようになったのは、一日経った後だった。結局ララは目を覚まさず、そのまま死んでしまった。ラトリスが何処に行ったのか解らず、マリア、レイナ、ミーア、ミーナは項垂れ、レンは涙を流すだけだった。母親である王妃はその後目を覚まし、元気を取り戻した。そこまでを見届けて、マリア達はフィリア王国への帰路についた。

読んでくださっている方々、有難う御座います。

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