バーンシュタイン王国
七聖武器を巡っての戦いから一ヶ月後、ラトリス達は相変わらずクエストを熟していた。しかし、ラトリスは心ここにあらずのような状態だった。
「ラトリスさん、次は何のクエストを受けましょうか?」
「…」
「ラトリスさん?」
「…おーい。」
「ん?何か言ったか?」
「なんか最近変だよ、お兄ちゃん。」
「まあ、色々な。」
「やっぱりあの事じゃないの?」
「あぁ、バーンシュタイン王国のことかしら?」
「…」
バーンシュタイン王国が他国を攻めると言う噂があり、国全土をあげて調査しているところだった。
「戦争になったらどうしよう?」
「巻き込まれるのはご免だわ。」
「まさしくその通りですね。」
「戦争やだよぅ。」
「…」
そんなことを話していると、フーがラトリスの元へとやって来た。
「また依頼かしら?」
「一ヶ月間なにも無かったのに…」
「…」
「また城に来いとか?」
「あぁ。嫌な予感がするがな。」
「でも、行くしか無いわね。」
5人は城に向かう準備をした。
城に着くと、直ぐに謁見の間に通された。
「ラトリス殿、久しぶりだな。」
「あぁ…」
「今回の依頼なんだが。」
「…」
「どうしたのだ、ラトリス殿は。」
「最近こんな感じなんです。」
「気にしないでください。」
「うっ、うむ。で、今回の依頼は、ララをバーンシュタイン王国へ連れて行って貰いたいのだ。」
「…何だと?」
ラトリスが驚いて言った。
「実はバーンシュタイン王国から招待状を受け取ってな。パーティーに出席してもらいたいそうなのだ。そこで、護衛を頼みたいのだ。」
「断る。」
ラトリスは即座にそう言った。
「そう言わずに頼む。ラトリス殿達以外嫌だとララも言っているのだ。」
「ならば俺以外の4人に依頼しろ。俺はあの国には行かない。」
「ラトリスさん、行きましょうよ。」
「今起こっている現状を知るチャンスじゃない。」
「ラトリスさんが行かないなら、私達も行きませんよ。」
「そうだよ、お兄ちゃん。」
「…」
「それからもう一つ頼まれて欲しい。」
「何ですか?」
マリア達がラトリスを説得しながら聞いた。
「この手紙をバーンシュタイン王国の国王に届けて欲しいのだ。」
小さな文をマリアに渡す。
「中身は国王に渡してくれれば良いのだ。」
「解りました。」
「だから俺は…」
「良いから行きましょう!」
ラトリスはほぼ無理矢理連れて行かれることになってしまった。
馬車の中で、
「御免なさい、ラトリス。」
終始笑顔のララを見て、ラトリスは、
「城には行かないからな。」
そう言っていた。
「まあまあ、そう言いながらも本当は心配なんじゃ無いですか?」
「なにがだ?」
「ララちゃんを1人にするのが。」
「ふん、それはどうでも良い。俺はあの国が嫌いなだけだ。」
「そうですよね。まあ、あの話を聞いたら、誰でも嫌いになりますよ。」
「でも、どんな国なのか、気になります。」
「話だけじゃ解らないもん。」
「…はぁ。」
嫌な予感しかしないラトリスだった。
フィリア王国を出て馬車で三日、バーンシュタイン王国に着いた。
「ここがラトリスの生まれた所?」
「良い町じゃない。綺麗だし、皆笑っているわ。」
「本当。」
「…」
ラトリスは馬車を止めさせた。
「どうしたんですか?」
「降りてこっちに来てみろ。」
そう言うので、馬車から皆降りて路地を1本入ると、そこにはゴミ山が高く積み上がっていて、それに群がる大勢の人々がいた。
「これは…!?」
「…バーンシュタイン王国の裏の顔だ。」
ラトリスは言う。
「高い税金とかで、民の暮らしは楽じゃ無い。そんな話は、フィリンにいたときから聞いていたが、まさかここまでとはな。」
「そんな…」
「酷いわね…」
「綺麗な裏側がよく解っただろう?それでもこの国が好きになれるのか?」
「…」
ララは何も答えられなかった。
「…レン様?」
いきなり後ろから声がした。後ろを見ると、みすぼらしい格好の老人が立っていた。
「レン様、またこのような所を彷徨かれますと、衛兵達から何をいわれるか…」
「ちょっと待って下さい。この人はレンさんじゃ無いですよ。」
「いいえ、その顔、レン様に間違いありません。」
「爺さん、俺はレンじゃ無い。」
「レン様じゃない…まっ、まさか…ジン様!?」
「…あんた、何者だ?」
「お忘れでしょうな。執事をしておりましたカリオで御座います。」
「カリオ…?あのカリオか!?」
「やはりジン様でしたか。大きくなられましたな。」
「でもカリオ。あんたほどの人がなぜこんな所に?」
「お父上である前国王が亡くなった途端、現国王に城をおわれまして。」
「そうか…あんたも辛い目にあったんだな。」
「ジン様、この国を救って下さいませ。」
「…」
ラトリスは答えられなかった。しかし、何かの決意が込められた目をしていることにマリア達は気付いていた。
城に向かうと、門番が2人立っていた。
「止まれ、何者だ?」
「フィリア王国第2王女、ララティーナ・フィリア、招待を受けて罷り越しました。」
そう言って招待状を見せる。
「…どうぞ、中へ。」
「有難う。」
6人とも何事もなく中へと入る。が、突然メイドが1人、こちらに近付いて来た。
「レン様、何をなさっているのですか?」
「俺はレンじゃ無い。」
「えっ…あっ、失礼しました。あまりにもレン様にそっくりで…」
「そのレンはどこにいる?」
「レン様に用事ですか?今はお部屋におられるかと。しかし、レン様で無ければ城に何用ですか?」
ララは招待状を見せた。
「まぁ…フィリア王国の!?それは失礼致しました。」
「レンの部屋は何処だ?」
「こちらです。どうぞ。」
そう言って、案内をしてくれた。
部屋に着くなり、ラトリスはドアをノックした。
「…誰ですか?」
「俺だ、ここを開けろ。」
「?」
渋々ながらレンは扉を開けると、ラトリス達が立っていた。
「に、兄さん!」
いきなりドレス姿のレンがラトリスに抱きつき、泣いた。
「来ていただけたのですね。」
「お前の為じゃ無い。ただの付き添いだ。」
「それでも構いません。」
「母さんは何処だ?」
「遭って下さるんですか?」
「無理なら帰る。」
「いえ、こちらです。」
そう言って、部屋へと案内をしてくれた。
「長い間病気で、寝込んでいますから、話は短めにお願いします。」
扉の前に立っていた侍女にそう言われ、中に入ると、王妃が眠っていた。
「お母様…」
「…」
ラトリスは王妃に向かって手をかざすと、
「サーチ!」
と、魔法を唱えた。
「兄さん、それは?」
「五月蠅い、気が散る。」
しばらく魔法を使っていると、
「なるほどな。」
そう言って、異空間からエリクサーを取り出した。
「貴重だが、仕方ない。生みの親だしな。」
そう言って、口の中に一滴垂らす。エリクサーが効いたのか、寝息が安らかになる。
「兄さん、まさか…エリクサーですか!?」
「ふん。」
そう言うと踵を返して部屋を後にした。マリア達はポカンとしていたが、直ぐに我に返ると、それに続いて部屋を出ていった。
読んでくださっている方々、有難う御座います。




