ジン
マリア達が目を覚ました後、全員が謁見の間に呼び出された。
「それで、ラトリス殿。七聖武器はどうなのだ?」
「…どうとは?」
「1つになる様子はあるのか?」
「全くないな。伝説は伝説。偽りだって存在する。」
「そうか…」
レイナードは項垂れた。
「もう用は無いだろう?俺達は帰るぞ。」
「ラトリス、待って!」
帰ろうとするラトリスを、ララが止めた。
「一体、カリバーンとレンさんと何があったの?」
「…」
「それは…」
「聞いても良いかしら?」
「レイナさん!?」
言葉に困っているラトリスに、レイナが聞いた。
「…お前達には関係ない事だ。」
「そうもいかないわよ。仲間でしょ、私達。」
「確かに気になるけど…」
「ラトリス、話してよ。」
ララも気になっているようだった。
「ちっ、話すしか無いのか…」
「そうですね、兄さん。」
その時、レンが入ってきた。
「話づらいなら、私から話すわ、兄さん。」
「…」
ラトリスは異空間からカリバーンを取り出した。
「全てはあの時…」
そう言って、話し始めた。
ジン・バーンシュタイン、現在のラトリスはバーンシュタイン王国の第1王子として生まれた。第1王女レン・バーンシュタインと共にである。
「見て、あなた。2人とも笑っているわ。」
「そうだな。2人のためにも良い国にしないとな。」
国王、王妃の2人は双子の兄妹の幸せを祈っていた。
「ジン兄さん!」
生まれて5年後、妹のレンと共に幸せな時をジンは過ごしていた。
「レン、今日は何をしようか?」
「勉強!世界のことが知りたいです!」
「そうか、なら図書室に行こうか。」
2人はとても仲が良く、いつも一緒だった。
「今日は何の勉強をしようかな。」
「伝説の七聖武器について!」
「ふふ、レンは七聖武器が好きだな。」
ジンは七聖武器の書かれた本を取り出し、2人で読み始めた。僅か5歳の少年少女が読むにはいささか難しい本であるはずだったが、2人は既に読み書き、計算などお手の物だった。
「各国に割り振られたように存在する七聖武器は、それぞれが持ち主を選ぶ…か。カリバーンもそうなんだろうな。」
「今はお父様が持っているでしょう?」
「王位継承の為に必要だと言っていたなぁ。」
そんなことを話していると、国王がやって来た。
「2人共、何をしているんだい?」
「「お父様!」」
「ん?七聖武器の事をまた調べていたのかい?」
「はい!」
「お父様、カリバーンを見せて貰えませんか?」
「良いよ、減る物でも無いからね。」
そう言って、カリバーンを抜いて、2人の前に差し出す。
「綺麗…」
「やっぱり凄い…」
「2人もいつかカリバーンに認められるだろう。」
再び鞘に直し、2人の頭を優しく撫でた。
全てが狂い出したのは、国王が倒れた時だった。
「うぅ…」
「お父様、しっかりして下さい!」
泣きながら、レンは国王を呼ぶ。しかし最早手遅れなのか、返事も出来ない有様だった。
「ジン…レン…」
悲痛に兄妹の名を呼ぶ父親に、縋るジンとレン。
「…カリバーンよ、我が問いに答えよ。」
「…何なりと。」
「ジンとレン、どちらを其方は選ぶ?」
「…」
カリバーンは迷った末、
「ジン殿だ。」
「そうか、ならばジンよ。カリバーンを手にせよ。」
「…」
黙って父親の言うとおりに、ジンはカリバーンに手をかけた。が、
「ぐぁ!」
持ち主を選ぶ聖剣が、ジンを拒絶した。
「ぐっ!」
「どういう事だ!?」
「ジン兄さん…」
「拒絶しただと!?」
「違う。私を所持するには若すぎるのだ。」
「若すぎる?どういう事なのですか?」
王妃がカリバーンに尋ねる。
「まだ世界の事を解っていない子供なのだ。もっと視野が広がる年齢に達しなければ…」
「聞き捨てなりませんな。」
そこへ、国王の弟である、ジンとレンの叔父が現れた。
「お前はジンでは無い。」
「なっ、何を…」
「カリバーンは、ジンを後継者と言った。しかし、実際にはどうだ?カリバーンはお前を拒絶した。」
「だからそれは…」
「ジン本人ではなく、ジンに成りすました偽物だ!衛兵、此奴を摘まみ出せ!」
「待って、ジンを…ジンをどうするつもりですか!?」
「お母様!」
「カリバーン!一体これは!?」
「ジン殿!」
ジンは衛兵に捕まえられ、連れて行かれた。
「そう…カリバーンが俺を拒絶し、俺は、衛兵によって森に連れて行かれた。」
「その後兄さんは森で魔物に食べられたと、衛兵から聞かされました。でも、兄さんは生きていた。」
「…兄さん、一体何があったの?年齢的に、確かに王位継承は難しかったかもしれない。でも、生きていたのなら、なぜ直ぐに戻って来てくれなかったの?」
「どうせ、お前も内心ではジンじゃないと思ってたんだろう?」
「…兄さん!」
「それに、王位はあのくそ叔父が継いだんだと、人伝えに聞いた。その結果、他国に対して良く思っていない、腐りきった国になったってな。」
「…でもよく解らないわ。」
マリアが口を挟む。
「だって、王位継承はカリバーンの所持者なんですよね?現在の所持者はレンさんだったんじゃ?」
「確かにそうよ。おかしいじゃない。」
「…その直ぐ跡に父が亡くなり、母は悲痛に苦しんで病気になりました。仕方なく伯父が王位を継いで、私は英才教育を受けていました。カリバーンが私を認めてくれたのは、つい先日の事です。まだ誰も知りません。デュランダルの所持者が出たと聞いた時、カリバーンが言ったんです。もしかしたら、兄さんかも知れないって…」
「…」
「だからこそ、兄さんがカリバーンの所持者として国に帰れば…」
「で、俺にバーンシュタイン王国に帰れと?」
「兄さん、お願いです!バーンシュタイン王国を救えるのは、兄さんだけなんです!」
「知ったことか。」
「えっ…」
「最初から言っているだろう?俺はラトリス、ジンじゃない。」
「兄さん!」
そう言うとラトリスはカリバーンを投げ捨てた。
「王位継承に必要ならくれてやる。2度と俺の前に姿を現すな。」
そして、他の七聖武器を取り出して、
「コイツらも必要ない。好きにしろ。」
床に全ての七聖武器を置いて、踵を返した。そして、
「マリア、レイナ、ミーア、ミーナ。帰るぞ。」
「ラトリスさん…」
4人はそれ以上何も言わず、ラトリスの跡についていった。
読んでくださっている方々、有難う御座います。




