VS カリバーン(?)
無事にミストルティンも手に入れたラトリスに、バーグが再度話しかける。
「直ぐに始めますかな?」
「俺は構わない。が、準備時間だけ欲しい。」
そう言うと、デュランダル達を異空間に収納し、代わりにカグラを取り出す。
(異空間も居心地が良かったですが、やはりあなたの傍が1番ですね。)
(そう言って貰えると嬉しいぞ、カグラ。)
意識だけでそう話すと、
「準備は良いぞ。」
そうバーグに告げた。バーグがコクリと頷き、
「少し早いが、最後の試合を始める!聖剣カリバーン所持者、バーンシュタイン王国出身者の、レン殿だ!」
その声を聞いて、レンが入場してくる。そして、ラトリスの前で止まった。
「勝負の方法は、どうするんだ?」
ラトリスがレンに尋ねる。
「…」
「緊張でしゃべれない訳では無いだろう?」
「…」
レンは答えない。ただ、仮面の下の目は、悲しそうな目をしていた。
「私は…私は戦うつもりはありません。」
突然、レンがそう言った。
「戦うつもりはない?何しにここに来たんだ?」
「それは、私の顔を見れば解るでしょう?」
そう言うと、レンは仮面を外した。そこには…ラトリスと同じ顔があった。
「おい、あれって…」
「そっ、そっくりだ…2人の顔がそっくりだ!」
観客が響めくが、マリア達も驚いていた。
「どういうこと!?」
「ラトリスさん…」
髪型と体型以外、ラトリスとレンはそっくりだった。
「兄さん…」
ポツリとレンが言った。
「に、兄さん!?」
「2人は兄妹なの?」
その声を聞きながら、ラトリスは少し戸惑っているようだった。
「私の事を覚えているでしょう、兄さん…?」
ラトリスは答えなかった。
「なぜ、何も言わないの?」
「知らんな、似た顔なんて、世の中いっぱいいるからな。」
「兄さん!」
そこまで話していると、舞台にマリアとレイナが降りてきた。
「ラトリスさん、どういうことなんですか?」
「ここまで瓜二つなんて、双子でも無ければ何だというの?」
「…」
今度はラトリスが黙り込んだ。
「兄さん、この子と話せば解るでしょう?」
レンは、カリバーンを鞘から抜いた。すると、目を覚ましたかのように、
「…む、封印が解かれたか?」
カリバーンが喋った。
「ん?この懐かしい感じは…ジン殿か!?」
「そうよ、カリバーン。あなたにも解るでしょう?」
「懐かしい…何も変わらない雰囲気がするぞ。」
カリバーンとレンの話を、黙って聞いていたラトリスだったが、
「ジン殿、再び私と契約をして欲しい。」
「そうよ、兄さん。一緒に国に帰ろう?」
「…五月蠅い!」
いきなり叫ぶと、途轍もない殺気を出した。それに臆したか、レンもカリバーンも黙り込んだ。
「契約だと?巫山戯んな!一方的に契約破棄したのは、お前の方だ。今更何を寝言ほざいてやがる!」
「じ、ジン殿…」
「てめえなんか知らないし、ジンなんて名前でも無い。大切な人に貰った、ラトリスこそが今の俺の名前だ!気安く呼ぶな!」
ラトリスは怒っていた。そして、素早くレンに近付き、カリバーンを奪い取ると、地面に叩きつけた。
「に、兄さん!?」
「いい加減にしろ、俺はラトリス。お前の兄じゃない。」
「いいえ、その怒り方、紛れもない兄さんです。どうか、カリバーンを持って行って下さい。」
「あんな腐った剣なんざいらん。」
「し、しかしラトリス殿…」
バーグが諌めようとすると、
「もう決着は付いたようなものでしょう?カリバーンをとって下さい。」
「…」
仕方なくカリバーンをラトリスは拾い上げる。すると、レンがカリバーンの鞘をラトリスに渡した。
「その鞘にいれれば、カリバーンは喋ることはおろか、動く事さえ出来なくなります。」
鞘にカリバーンを戻し、異空間に放り込んだ。
「ラトリス殿の勝利!」
バーグが高らかに宣言するが、観客は納得していないようで、
「おいおい!」
「戦いだろ?なにも無く終わりって、そりゃねぇぞ!」
ブーイングの嵐に包まれた会場だったが、
「喧しい!」
ラトリスの一喝でシンとした。ラトリスは踵を返して会場を出て行った。
「ラトリスさん!」
「兄さん!」
マリア達は跡を追う事も出来ずに、黙って立ち尽くしていた。
読んでくださっている方々、有難う御座います。




