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保川さん。

作者: 初見です。

今日は、大変お世話になって可愛がってもらっていた、父の友人の保川さんのお葬式。

父と待ち合わせて葬儀に行った。


保川さんは、母が癌で闘病中に、父が高いところから落ちて骨折して入院。姉も出産のため入院。

母を看て、病院に連れて行く人が私しかいなくて気を張りつめていた時、柚ちゃん大変やろ。と、毎回車で、病院まで送迎してくれた。恩人である。


いつまでたっても、母の車椅子を押すのが下手な私に車椅子の押し方をレクチャーしてくれ、素朴で優しくとてもあたたかな人だった。


奥さんの邦子さんにも、とても可愛がってもらっていた。でも、いつもキビキビ動いていて、それでいてぷっくりして可愛い邦子さんが、すっかり痩せていて、人に声をかけられるたびに取り乱し、泣き崩れていた。


たくさんの人が、邦子さんに声をかける。


私は、人の合間をぬって、邦子さんに近づき、目が合って、お悔やみを言う。


「この度は…」ご愁傷様です。とは言えなかった。

邦子さんが泣いて、「ごめんなさい。」「ごめんなさい。」と私に頭を下げ続ける。私は邦子さんの背中をさすったり、腕をさすったりすることしかできず、なんて声をかけたらいいか…。わからなかった。


こうゆうときにどうしたらいいかわからない、自分に未熟さを感じる。

40才にもなるというのに。


お葬式には大勢の人がきていて、改めて保川さんは、人を想い人に愛された人だったんだな。と思った。母の葬儀のときのことを思い出したりしていた。


涙が、でた。


いつも明るくて、笑顔の可愛い邦子さんが、すごく痛んで悲しんでいる。

涙が。出る。私は葬儀場の一番後ろの席に座っている。黒い喪服が波のように見える。お坊さんの読経を聞きながら、保川さんと邦子さんと母と父のことを想う。


読経が終り、献花ができたので、喪服の列に並び、保川さんの顔が見られた。

眠っているだけかのような、綺麗なかお。

…本当にありがとうございました。と心の中でお礼を言い、献花をした。

離れて、また 涙がでた。


邦子さんのことが心配だけど、気にかけてくれる友人も多いだろうし、父もいるし、きっといま、取り乱して、悲しんで泣ける方がずっといい。

後になって、悲しみが津波のように押し寄せてきて、一人きりで、泣くよりは。ずっと…。


葬儀が終わって、父とスーパーでお昼ごはんを買い、ひさしぶりに実家に行った。


父と話ながら、お昼ごはん。少し炬燵でうたた寝をした。


実家はいい匂いがする。空気が澱んでなくて、きちんと生活している匂い。

実家にいると、父と母にものすごく守られている気がする。

こたつの中は温くてあたたかい。

緩くてぬるくて温かくてずっと居たくなるけれど、ずっとは居られない場所。


うたた寝をしていたら、精神的にも肉体的にも疲弊していたのが、かなり回復したのがわかった。


父に帰るというと、父がバスの時間を調べてくれた。

私はいつも、何歳になっても、父やいろんな人に甘やかされてしまう。

よいのか悪いのか。…わからないが、ある意味、幸せなことかもしれない。


母の仏前に、手を合わせて『お母さん、保川さんをお願いね。』と言って帰ってきた。



END

お葬式に参列した時に思ったことをベースに、書きました。


あいかわらず、拙いですが、一部、私小説です。

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