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経済合理的であること
「移動しながら稼ぐ人」の賃金を高くすることを「無理筋だ」と思う人は多いだろう。その通りなんだよ。「無理」かはともかく「筋」は違うんだよ。なにと違うかというと「現状」と筋が違う。そして現状は「筋」の一つに過ぎないんだよ。自然状態でもなければ最良の状態でもない。「経済合理的」という価値観の上で成り立っている「筋」なんだよ。
だから価値観を変えるなら「筋」を変える。そういう選択を国が、国民がしてもいい。いいはずだ。
「経済合理的であること」を社会の中心に据えて国を組み上げていくことは国にもその成員である国民にも大きな利益をもたらした。効率的に社会がまわり生産の余剰が積みあがった。それは間違いなくいいことで、必要なことだった。余剰は再投資されさらに余剰が作られ余裕となる。奪い合いではない社会が歴史上出現したのはこの価値観があってこそだと言える。あらゆる現代の恩恵、たとえば筆者がこれを書いていることもあなたがこの文章を読んでいることもこの価値観によるものだ。