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「財源は」
国は子育てに金を出すと言っている。そしてその対象者たちの声ははっきりしている。NOだ。金が足りない。 出してないわけじゃない。 そもそも十分な量ではないのではないだろうかというところは置いておく。 政策担当者は優秀だろうからそんなミスは犯さないだろう。それでも足りないと判断される。 不正、 それもない。そういうことではないのだ。国からお金をもらうと他から稼げるお金が減る、そういう魔法のような仕組みがあるのだ。その魔法は魔法の言葉で発動する。
「財源は」
その言葉はあまりにも普通な言葉で誰もが何気なく口にする。だが強力な魔法の言葉で、恐ろしい呪いを発動する。誰が口にしても発動し強力に国民全体を呪うのだ。 子育てに十分な金を支給しようとする官僚や政治家に「財源は」と囁けば十分な支給額はそのままに支給対象者の家計に入ってくる収入は減り、結局、子育てには不十分となる。子育て政策が実行されても出生率が上向かないのはそんな呪いのせいなのだ。