死亡フラグまみれの転生者~異世界召喚されてチートになったけど、やっぱり人間だった~【side白】
国名、セフィリア→セレスティアに変更しました。
この世界が誰かの想像で出来ていると、気が付いたのはいつだっただろう。
なんて、考えるまでもない。
私は生まれて直ぐに、前世を取り戻した。
産声を上げたと同時に、頭を駆け巡る数多の記憶の奔流。
生まれて直ぐの、小さな赤ん坊の頭になんて収まりきらない、知識と感情。
思い出と人格の大洪水。
過去、前世、現在の私に成る前の私の記憶。
当時の私は当然の如く熱を出し、赤ん坊故に緩んでいる涙腺を全開に、泣きじゃくった。
母と父には酷く心配をさせたと、少々申し訳なく思う。
それが、一度目の記憶の目覚め。
二度目の記憶の目覚めは、小学校の入学式。
幼少期から、幼馴染みの赤神焔を見る度に、記憶が揺らぐような感覚を覚えていた私は、入学式当日、赤神焔に加え、同じクラスになってしまった、青山燈水と黒磐暗夜の二人の名前を、顔を見た瞬間、揺らぎは大きな波紋となり、私は今生二度目の記憶の奔流に呑み込まれ、倒れた。
入学早々保健室行きである。
それも、主人公に横抱きされて運ばれたと言うおまけ付きで。
あれは、早く記憶から抹消したい出来事だ。
本当、切実に。
「ゆきのちゃん!」と、私が倒れるなり、先生よりも早く駆け寄り、直ぐに抱き上げて、保健室に直行するとか。
君、まだ小学生でしょう?
判断早くない?
そんな対応力を一体何処で身につけたの。
保険の先生凄く驚いていたし、担任の先生も慌てて追い掛けて来ていたから。
おまけに、いつの間に保健室の場所を把握していたの。
私でも、まだ保健室の場所なんて把握していなかったのに。
今の小学生は、成長が早いのかと、驚いた。
実際は、恐らく主人公補正と、原作の影響力なのだろう。
もし、この世界が私の知る物語と言う概念の中に存在するならの話だが。
まあ、私は気絶していたから、この話は全部クラスメイトと先生に又聞きしたもので、真偽の程は定かではないけれど。
小学生が小学生を横抱きしたのが、衝撃的過ぎて、割りとそれ以外の事柄は記憶に薄かったらしいから。
ああ、私が倒れた事は除いて。
この事件のせいで、私は暫く冷やかされたし、今でも病弱体質だと思われたままだ。
後、それもあって、幼馴染みとは今はあまり関わりがなくなってしまっている。
一度目、二度目、ときて私は漸くほぼ完全に前世を取り戻した。
私は誰であったのか、この世界が何であるかを。
私はラノベ界隈で有名な、彼の転生者と言うやつらしい。
私には、今世の私になる前の私、所謂前世の私の記憶がある。
私は二十代後半の女作家だった。
ファンタジー系を好みながらも、専らオカルト系とサバイバル系を執筆する作家。
発売した書籍は割りと売れていた、と思われる。
生活は出来たから。
そんな私は、ある日の昼下がり、ビルから飛び降りてきた自殺者の下敷きにされ、あっさりと死んだ。
それはもう、呆気なく。
感じたのは一瞬の重みと衝撃だけ。
完全に巻き添えだ。
そして、私はこの世界、前世でプレイしていたRPG『散らぬ花を、誰ぞ愛でるか?』の世界に転生し、今の私、白崎雪乃になった。
RPG『散らぬ花を、誰ぞ愛でるか?』。
それは、異世界召喚もの、それも集団転移ものであり、男子校生、赤神焔を主人公とし、召喚された異世界エリュシオンのセレスティア王国を、手に入れた特殊能力を使い、魔族の脅威から救う、と言うストーリーを冒険して行くゲームだ。
戦闘はシームレスバトルシステムを採用し、親密度設定もあり、エンド分岐、パーティメンバー選択、キャラの個別シナリオなど、やり込み要素や、二週目特典、可愛く、格好いいキャラクター達のイラスト、要所要所のアニメ転換、と魅力たっぷりなゲームである。
また、全体的にハイクオリティなグラフィックも見所の一つだろう。
凄まじい人気を博したそのゲームは、同人やコスプレなども盛んだった。
因みに、かく言う私はゲーム全制覇者である。
うん、我ながら随分とハマっていたものだ。
まあ、全制覇したと言っても、最早大分過去の事になってしまうので、シナリオやイベントについて、記憶が曖昧な点が見られるが……。
白崎雪乃の事は、覚えている。
声も、行動も、イラストも、余す事なく全て、とは言えないが、殆ど頭の中に残っている。
甦った記憶の中に。
そのゲームの中で、白崎雪乃はメインヒロイン、第一ヒロインであり、主人公の幼馴染みであった。
容姿は、黒のウェイビーロングヘアーに、黒い瞳の儚い系美少女で、その優しくたおやかな性格に合う、補助系の能力を手に入れる、正統派ヒロインだ。
正に、立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、を体現したような存在。
なのだが、ヒロインでありながら、何故か死亡フラグが乱立するキャラでもあり、ネット上の情報によれば、初見で彼女を生存させたプレイヤーは居ない、との事。
完全に、死に急ぎキャラなのだ。
やれ、誰かが困っていたら助けなくては。やれ、皆を守らなくては、と。
日々駆け回り、自らの命を削っていった。
画面越しでなら、流石はヒロインだ、と言えたが、いざ自分がその立場になるとしたら、酷い冗談に思う。
慈善活動に自分の命を掛けるだなんて、馬鹿げている。
私は、絶対にそんな事したくない。
自分だけが損すればいいなんて、そんな事思える程、私の心は澄んでいない。
ああ、本当、有り得ない。
主人公が、上手く選択肢を選ばないと死亡するとか、なんて理不尽なのだろう。
死んで、転生したと思ったらまた死ぬ?
今度は成人すら出来ずに死ぬ。
何故、私の生が主人公に左右されなくてはならないの。
誰かの為に死ぬのも、誰かのせいで死ぬのも、絶対にいや。
そんなに簡単に死んでたまるものか。
私は、今度こそは天寿を全うするのだ。
それを邪魔するものは、例え主人公だとしても許さない。
許したくは、ない。
プロット及び、キャラ設定制作中。
冒頭をメモしようとしていたら、勢い余って一話書き上げてしまったので、お試し版として上げてみました。