魔力測定の時間
指定されたクラスに入ると布に魔力を混ぜたインクで描かれた魔法陣を教卓の上に広げ、大きな金の台座におさまる虹色の光を中心に宿す水晶があった。
作中でも登場していた魔力測定魔道具、“ハウロスの心臓”だ。特殊な魔力を中に閉じ込めた水晶はこの世界に九つあるとされる。名前の由来は載ってはいなかったけど、意味深な名前なので何かしら設定は組まれていたんだろうと思うがやっぱり確証はない。
「えー、皆さん初めまして…私はアリア・エンド、担当科目は魔法技術であり、皆さんの担任となりました。狭き門を越え、この学園に入学おめでとうございます」
ふわふわの短い淡いピンク色が目立つアリアの着る教師用の深緑のローブには葉と蔓をイメージした様な白い刺繍がされている。
華やかな髪色に対し、落ち着いた深い紺色の目は優しげに細められ、私たちの顔を確認した後ゆっくりと黒板に書き始める。チョークの軽く引っ掻くような音が心地よく懐かしい。
「まず最初に行うのは自分達の魔力について学ぶことです。なので、魔力技術の授業が大半となります、魔力は自然属性、原始属性のふたつの大きい分類に分かれています」
黒板に書かれていく内容は、原始属性の下に闇と光を書き大きく丸で囲む。自然属性の下に火、水、風、土、木と書き丸で囲んである。
「これが自然属性と原始属性、さらに数十年前には雷が確認され、派生属性とされたので今後増えることもあるかもしれません」
別枠に派生属性、雷と書かれる。
ゲームの内容と同じだ。
風>土>水>火>木>雷といったように属性には弱点とされるものがある。
闇と光は互いに弱点であり、別枠におかれていた。
「神話の記された聖書には有名な一文があります、“創造神はこの世界を作り二柱の女神を生み出し、この世界を導かせた。二柱の女神は命を生み出し、死を与え、人には知恵を魔物には力を獣には自由を与えた”」
オープニングの前に書かれる文でもあるそれをアリア先生はスラスラと口にする。周りを見回すと何人かと目が合う。気まずさに視線を下げる間も聖書の文を彼女はまだ読み上げる。
「“けれど与えた魔物の力が強すぎたため、魔物達は周りへ攻撃を始めた。女神達は嘆き、それぞれを象徴する力、魔力を世界に生み出した。光と闇の魔力、魔法、それが全ての源である”と。光と闇から全ての魔力は産まれ、それ故に光と闇の魔力は特別であり、二種類の魔法を使える魔力を原始属性と呼びます」
芝居がかった様子で祈るように手を合わせゆっくりと担任であるというアリア先生は私とレペテを見る。頬を赤らめ、まるで憧れの人と目が合った人のように。
「このハウロスの心臓は魂が許された魔法を使う術と糧である魔力の属性と量を調べられます。順番にこの水晶に触れて、実際に女神達によって齎された祝福へ向き合いましょう」
多少ゲームとは違うセリフだけどやっぱりここで魔力測定を行うみたいだ。レペテはゲームのこのシーンに出てくることは無かったけど、やっぱり闇の女神と色が同じだからか私とレペテに対する視線が妙に癇に障る、敬虔な信者ほど私達の敵になりやすいのであまり関わりたくはないな。
クラスメイトが席順に立ち、ハウロスの心臓に触れていくと、アリア先生が記録した物を手渡していく。能力値はS>A>B>C>D>Eで評価される。元々この学園に通うには最低でC程の魔力か魔力操作が必要になる。魔力と魔力操作がどちらもCに満たない生徒はいないわけだけど、この学園に落ちる人は多くいる。Cですら優秀と言われるほどこの世界の魔法は遅れているわけだ。
評価を見て落胆する子達を見ながら食堂での出来事を思い出す。
だから先輩である彼らはあの不味いご飯で自分の魔力が低いのを補う必要がある。魔力操作が優れていれば魔力が少なくとも魔法を行使できる。それでも魔力の少ない人間と魔力の多い人間には大きな差があるのも事実。
私の番がやってきて案内されるままにハウロスの心臓に触れる。パッと見はなんでもない水晶にしか見えないが触れてみるとわかる。
熱くゆっくりと鼓動してるのが伝わってくる。まるで“心臓”のように。
ひりつく様な熱さを掌に。大きく鼓動するのは水晶か、私の心臓か。
少し意識がぼんやりとした瞬間に激しい光が教室いっぱいに広がった。
「素晴らしいわ!!」
アリア先生の賞賛の声とざわつく声を聞きながらどこかぼんやりと水晶を見る。どうしてだろう。
金に、黒に、そして六色に輝く水晶は私が全ての属性を使うことが出来ることを表している。神緑の巫女姫の主人公だから全属性は分かっていたけれど。それよりも。
「……」
ハウロスの心臓が“私を呼んでいる”と、そう感じるのは何故なんだろう。
「サーレさんの評価は全属性の魔力と魔力操作どちらもA!本当にとても素晴らしいわっ!」
出された紙を見て薄れていた意識がはっきりとして思考が戻った。




