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願うのは笑顔  作者:
第2章 第1節【イージス学園小等部入学】
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ゲームの中での食事といえば


 

 ゲームにおける食事とはなんなのか、意識してみたことはあまりない。 今まで私達の生活は良くも悪くもゲームから付かず離れずに行われていた。

 

 だから今まであった食事は“普通”に美味しいものだったし、食べた所で何も起こらない。

 

 だが、ゲーム上では異なる。そもそも生きているわけじゃないキャラクターたちが食事をする必要はなく、なんならトイレや風呂、睡眠だって必要ないだろう。

 それらが必要になるのは決まってそれらに効果…バフがあるからだ。

 

 レペテが唖然とご飯を見ている。うん。魔力が一定以上だと多分わかる仕様なんだろうね。ほらゲーム上だとこれを食べるとどんな効果があるとか詳細に書かれてたりするし。

 

 つまり、なんというか。学園での食事にはドーピング効果がある。全メニューに多かれ少なかれ魔力があるのだ。

 

 「…これ、たべもの?」

 「食べ物よ」

 

 レペテが恐る恐る周りを見回している。そんなことをしても慣れたように食事する人しかいない。

 

 新入生であろう人はすぐに分かる。口にした途端に渋い顔になるからだ。見た目だけは美味しそうだけど魔力が籠った料理は総じて不味い。

 

 もう一度言おう。本当に不味いのだ。

 

 なまじ魔力がある私たちは食べる前からこれが異常だとわかるが魔力のない者は普通に食べ始めてしまう。そしてその不味さに表情が死ぬ。

 

 神妙な顔つきでひたすら咀嚼(そしゃく)する生徒達を見てレペテが顔色を土色に変えている。

 

 「そん、な」

 「レペテ」

 「サーレ様は食べないよね!? ね!?」

 

 曖昧な笑みを返し、いざゆかん…!

 

 見た目は普通のパンにしか見えないものを手に取る。禍々(まがまが)しい雰囲気がある。お腹壊さないだろうか。

 

 少しちぎって口に運ぶ。

 レペテが唖然と固まっているのを横目に口に入れようとして─────その手を掴まれる。

 

 「サーレはこっち」

 

 聞き慣れた声に視線を上げると眉をひそめたジークが私の手の向きを変えちぎったパンを自らの口で受ける。

 

 加えて言うなら机の上に置かれた朝食の皿ごとジークに取り上げられ代わりに小さなお弁当が机に置かれていた。

 

 「ジーク?」

 「リトから聞いた。 学園の食べ物は魔力を帯びて不味いって…食べない方がいい。 確かにまずい」

 

 いやそれは知っていたんだけれどねと手を取られたまま目の前の木で作られたであろうお弁当箱に詰まったご飯をみる。

 

 「これ、は?」

 

 男子寮は従者を基本連れていくことは出来ない。だから当然ご飯を作る場所があったとしても使えるのは生徒しかいない。

 

 「作った」

 「…」

 「ジーク様! 私には!?」

 「なんで俺がお前に作るんだ、自分で作るか食堂で食え」

 「うあーーー! 鬼ぃぃぃぃ!」

 

 恐る恐るフォークで弁当の中の野菜を刺す。箸が欲しい。切実に。

 

 サラダを口に含みゆっくりと食べる。うん。美味しい。ちゃんと野菜の味がある。今までは当たり前だったそれに少し感動を抱きながらオムレツらしきものも食べる。美味しい。

 

 「…いつの間にできるようになったの?」

 「元々嫌いじゃないし、親父が覚えといた方がいいって」

 「なるほど、アル料理上手だしね」

 

 戦闘狂でのイメージが強すぎるうちの筆頭騎士は戦闘の次に料理が趣味である。意外でしかないだろうが思い返してみると遠出する時などの旅路ではアルはよく料理をしているのだ。

 

 

 「ジークの分は?」

 「俺はこっちでいい」

 「美味しくないよ!?」

 「知ってる」

 

 そりゃ食べたから分かってるだろうけど!

 

 黙々と私の朝ごはんの予定だった料理を顔色を変えずに食べ続けるジークにレペテももしかしたらそんなに不味くないのかもしれないと思ったのかパンを口に入れて悶えてた。

 

 「リトから聞いてたのになんで私のだけ作ってきちゃうかなぁ」

 「聞いたからこそ、だ」

 「美味しくないのに…」

 

 いいんだよと早々に完食して見せたジークにやっぱりあんまり美味しくないからあまり噛んでないのでは?と心配になる。

 

 よく噛まないと体に悪いんだけど…。

 

 

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