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願うのは笑顔  作者:
第2章 第1節【イージス学園小等部入学】
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ジークと拒絶《ジークside》


 

 サーレとレペテが女子寮に入るのを見届けてから男子寮へと向かう。後に勝手にレヴェルが付いてくるのを無視しながら歩くと、またレヴェルがギャーギャー騒いでいた。

 

 寮の説明をする寮父が俺に顔を顰めたあと後ろで騒ぐ王子に頬を引き攣らせる。それを興味もなく見ているとやっと説明が始まった。

 

 女子を連れ込まない。従者を連れてくるなら申請を。子爵以下は二人部屋。部屋にも浴室が付いているが大浴場は学年毎に時間が異なるなど地味に細かい話を聞く。

 

 「鍵を渡す、同室のものはもう決まっているか?」

 「決まっている、鍵だけ貰ってもいいか」

 「一応名簿に名前が必要なんだ、同室の者になる名前は?」

 「僕!僕が一緒になるよ!」

 「王子殿下が他の者と同室なんて出来ません、なったとしてもそれが側近扱いになりますよ」

 

 何言ってんだこいつと思いながら無視を決め込めばあからさまに俺を睨みつけ寮父が答えた。

 この場にサーレが居なくてよかった。いたらきっとまた悲しませることになる。

 

 「ジークが側近ではいけないと? 何をふざっ」

 「同室になるのはリトマス・メシェル・バサールハだ」

 「…ばさー、るは? 彼は上級生だろう!」

 「問題ない、そして寮父(おまえ)にも関係がない、平等な寮父をやれないんであれば何も知らないのが身のためだと思うが?」

 

 そもそも寮父は執事長と同じ様なものだ。この寮で世話する者を統括する職といえる。だが、俺を見て顔を顰める上、王子にもあの態度だ。レヴェルも嫌そうな顔をしているし。

 

 「で? 鍵は? くれないとなればリトと共に抗議にいかなければならないが」

 「…問題行動は慎むように」

 「あんたもな?」

 

 別に俺だって敬語が使えるし、言葉を乱さず会話することだってできるが。こいつには必要ないだろう。

 

 

 二つ分の鍵を受け取り歩きだそうとすれば俺の服の裾をレヴェルが引っ張る。

 

 「…どうして僕じゃだめなんだ?」

 「あんたも相当諦めが悪いな」

 「気になるじゃないか! 僕だって友達になりたいし、僕だって君を怖がったりしない!」

 

 なぜリトなんだ? なぜ君らはリトを贔屓(ひいき)する! なんて怒りを(あらわ)にするレヴェルにため息を返す。この王子はサーレと同い年なはずなんだが、本当に分からないのか。

 

 「リトじゃなくてもいいなんて口にするからだろ」

 「…え」

 「リトはサーレと俺にとっては唯一の親友だ、それはリトがサーレに認められたからだそしてあいつが俺を最初から忌み子じゃないと否定出来たからだ」

 

 目を見開き固まる俺より背の低いレヴェルを見下ろす。王子が偉い。そんなの分かりきっているし、現にレヴェルと初めて会話した時はちゃんと使っていた。使わなくていいと言ったのは本人だ。

 

 「リトの代わりになんて誰も入れねぇよ」

 「…僕、友達に」

 「自分の影響力も自分の周りに起きている事にも気付かない王子に俺がそばにいれるわけねぇだろ」

 

 雲の上の存在である王族。その王族の傍にいるのが忌み子の色を持つ俺。吊し上げられて殺されでもしそうだな。

 

 「…僕は、ただ友達が欲しい」

 「俺じゃなくてもいいだろうが」

 「君じゃなくても良い訳じゃない!君と友達になりたい!」

 「お前のそういう所俺ほんと嫌いなんだよ」

 

 俺が割り振られた部屋に入れば当然のように付いてくるこいつ。おかげで周りに聞かれる心配は薄れたが、それでも不快感がある。

 

 「何でかわかんねぇんだろ?」

 「っ」

 「サーレの事あからさまに避けやがって、リトのことだってそうだよ。 あいつが笑ってるから許されると思ってんのか、俺達よりもリトと付き合いの長いお前になんの話もいっていない時点でお前に信頼出来る要素がねぇんだよ」

 

 喚くなんて誰でも出来る。

 命令なんてその実誰でも出来る。

 

 だが、忌み子である事を否定出来る奴は中々いない。

 レヴェルだって俺が忌み子である事を否定出来ていないし、初対面の時だってこの色を見て悪魔と決めてかかった。憎い訳でもない。嫌いといっても他のやつよりはマシだろう。それでも。

 

 

 「今のお前と本当に友達になれると思ってんのか? さっきの寮父の反応は目に入ってねぇのか? 」

 「…ジーク」

 「サーレとリトへの態度、改めろ。 二人がいなけりゃお前はここにいねぇんだって事実気づけ」

 

 言い切って適当に荷物を片付け始める。レヴェルはその後何も言わずに出ていった。それに俺は何も言わないしただ深いため息を吐き出して感情を噛み殺す。

 

 サーレの心配そうな顔と俺を見下す周りへ向ける冷たい視線が思い浮かぶ。

 

 「…あー会いたい」

 

 数十分しか離れてなくても。胸が締め付けられるように痛かった。

 

 

 

 

 


 

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