強くなれる存在《アルside》
お嬢様が五歳になりもう少しで六歳になる為、誕生日プレゼントを探しに街へ出た時。彼女が手にしたのは可愛らしい服や動物なんかじゃなく汚れた子供だった。
奴隷を禁止されてるこの国で明らかに奴隷扱いされている子にレルム様が顔を顰めて男を捕えさせた。後で俺も情報を落とさせに行こう。
灰色のような髪の毛は長く目元は見えない。でもそんな少年の腕をお嬢様はとても嬉しそうに抱きしめていた。
少年はお嬢様とよく似ている。
人よりも、違った力を…強くなれる伸び代を持っている少年だった。お嬢様によってジークと名付けられた少年はメイドたちによって汚れを落とし、髪を切られた。
そして俺やレルム様、ターニャ様はメイドから報告された事に唖然とする。
「ジーク君の髪は白色で…目は赤色でした」
白い髪はたまにいる。特に珍しくもない。問題なのは────悪魔の目と呼ばれる赤い目を持つ者だってことだ。
お嬢様は彼を婚約者にしたいと言っていた。子供のわがままのように見えてお嬢様の目には取り付く島が無いほどの意志があった。
そしてお嬢様とジークの元へ行けばジークを彼女は守るように背に隠した。
そこですべて理解した。
彼女は知っている。自分の目が…女神の目と呼ばれるものが何を指すのか。そして彼の赤い目がなんと呼ばれ、蔑まれてきたのか。
知っていて、彼の手を取ったのだ。まだ生まれて五歳にも届いていない子が。自分の意味を理解している。
「女神の目をもつ、私。悪魔の目をもつ、ジーク。ほらね、たしたら普通の人よ」
そんな簡単な話ではない。ジークを懐に入れるというのは教会を敵に回すことも同義だ。でも、教会もこちらを完全に敵に回すことは嫌がるだろう。それも確かだ。
何せ、“女神の目”を持つお嬢様がジークを“欲している”。女神の目を教会に迎え入れたいゲス共は悪手には出れない。
ターニャ様が俺に目配せをする。レルム様が唖然としている中俺を見るってことは、俺に意見が聞きたいんだろう。現に養子にしないかと聞いてきた。
ターニャ様は誰よりも愛情深い。忌まれ育ったレルム様に容赦なく歩み寄り愛することを教えた強者だ。そのターニャ様の血を引くのだからある意味納得のいく現状と言える。
ちらりとジークを見る。目には意思があった。熱があった、欲望があった。
頬を緩ませそうになるのを必死に耐える。
いつか俺はお嬢様に置いていかれるだろう。耄碌した俺なんてお嬢様にはきっとついていけない。だが、俺が育て鍛えたジークがお嬢様と共にゆくのならそれもまた面白いものだと思う。
周りなんてどうでもいい。ジークの事もあまり興味はない。ただ、強さを臨むなら 俺は鍛えよう。この悪魔の目と呼ばれるものを持って産まれた少年を。
俺の代わりに高みへと行けるように。




