許せない認識
ジークにエスコートされながら入寮を済ませるため広場を歩く。私の周りの人がジークに対してもう忌み子と呼ぶ者は居ない。多少はいい顔はしなくても面と向かって彼が忌み子だと罵り見下す者は居なくなった。
だから久々に素直な拒絶の視線を受ける。そんなに赤い目がダメなのか。その隣に女神の瞳があることがダメなのか。
分かってはいるけれど腹立たしく思うのは何時になっても変わらないし、慣れようとも思ってはいない。
この光景は異常であり、何れ認識を改めてもらわなければならない。
「サーレ、俺は気にしていない」
「…うん」
ジークは変わったと思う。出会った時とは異なり俯くことが無くなった。伸びてきた身長と相まって随分と大人びて見える。
大人びて…とは言うけれど、実際に本来のジークが成長し魔王と呼ばれる存在になった頃でも彼は俯くシーンが何度かあった。晴れやかな表情を浮かべる時は唯一彼が死ぬ時だけだった。
「でも、ジークが気にしなくても私は気にしてしまうし怒りがやっぱり消えないわ」
「サーレ、気にするだけ無駄だ」
「それでもよ。それでも私は気にするし絶対変えてみせる」
学園から全てが動き始める。小等部と中等部で一人ずつ、高等部で二人メイン攻略対象が登場する。レヴェルとリトと他三名を追加した計五名がメイン攻略対象の人数となり、ゲームの行動しだいでは更にサブストーリーが生まれ、攻略対象者が増えていく。
逆に言えばサブストーリーを拾わなければイベントが発生することはなく攻略対象者が少ないままで済むのだが。厄介なのがストーリーの裏でそのイベント処理が行われていてサブイベントを処理しなければメインストーリーの登場キャラが変わる。
ややこしいけどこれの前提を理解して拾うイベントを選ばないといけないんだよね…。
それに加えて、私は一つ調べなきゃいけない事がある。
隣で頑固すぎると呆れたように少し溜め息をつくジークの…生国についてだ。
私は一切ここまでそれについて調べることはしなかった。する危険性の方が大きかったから。
ジークを忌み子として捨てた国だ。あまり行きたくはない、だけど。
だけど、もし、そこにジークが笑えるきっかけになるものがあるならば…と少しの期待もある。
エテルネルとルトゥール、そしてレペテ。
彼らは多くを語らなかった。こちら側についた今でも語ろうとはしないし、聞き出そうとも思ってはいない。それでも彼らはなにか目的がありジークを助けに来ていた。
命をかけてでもジークを助けようとしていた。
ジークは彼らを覚えていないと言う。でもジークを彼らは知っていた。なら幼い頃にジークに出会っているはず、もしくはジークの事を誰かに聞いているはず。
それが、その人がもしも…と考えるのは私の願望でしかないんだろう。
それでもそうであったなら。
少しでも救われるのではないかと思ってしまう。
「あ、サーレ!」
物思いに耽りながら足を進めていたら目の前から大きく手を振り笑顔を浮かべ駆け寄ってくるリトの姿が見える。
他の人の目もあるから上級生であるリトに挨拶を返す。ドレスじゃないから簡易的なものになるからとても楽だ。
「こんにちは、リト…元気そうで何よりです」
「うわーまた猫かぶってるね?」
「酷い言い草ですが、周りの目もありますし仕方ないでしょう」
リトが来たことによって遠くから見ていた生徒たちの距離が少し近づいてきている。先程まで遠目に見ているだけだったのに…。
溜め息を吐きそうな気持ちをぐっと抑え笑顔を貼り付ける。
「上級生は今日は寮で待機と伺っていましたが?」
「うん、そうだね! でも僕がそんなのに従うと思う?」
いたずらっ子の様な笑みを浮かべるリトについ貼り付けた笑みが苦笑いになってしまう。
うん、リトだもんねと納得はしちゃいけないんだろうけど、やっぱり納得してしまう。
隣で私の代わりのようにジークが溜息を吐いた。
それを聞いた周りの生徒が少し遠のいた。器用だなぁ。




