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願うのは笑顔  作者:
第2章 第1節【イージス学園小等部入学】
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寮入り


 

 イージス学園。盾を意味するイージスの名を与えられた、由緒正しい多くの生徒を貴族で占める学園。

 

 貴族は十歳を越えるとこの学園に入る試験を受ける資格が与えられるが、婚約者に合わせ入学をずらす者も多かった。

 

 三年在学した後、中等部へ、再び三年を経て、まだ学ぶ気があるならば高等部へ上がり、また三年を過ごす。

 

 貴族はこの学園で初めて魔力について学び魔法について学ぶ。

 

 そして、それは主要登場人物メインキャラである私達も同じだった。

 

 「…まぁ、今更な気もするけど」

 ぽつりと呟いた言葉は一人の馬車で誰にも拾われず消えていく。窓の外を見ると分厚い雲が空を隠していた。

 

 「せっかくの入学式なのになぁ」

 

 馬車はそれぞれ自分の家の物に乗る。初めて会う人が多い学園では家紋がある馬車が身分証となるからだ。だからジークもモナール家の馬車に乗っているので今私は一人。

 レペテもいるけど御者の隣に座っているので顔を合わせることは無い。

 

 私は第一王子襲撃事件の後、陛下との約束通り転移の魔法について教えた。教えたものは私が使っていたアデラとは別の物だけど。

 元々花を刻み花を持つ者の所へ飛べる転移は制約が多く、使えるのは私ぐらいなものだろう。 

 

 だから陛下に教えたのは簡易的なものでしかない。遠くへ転移は出来ないし魔力の消費も激しいものだから、一般に普及は出来ないだろうし、使える者も限られる。

 

 「お母様、お父様」

 

 二人は笑って私を見送ってくれた。優しく抱きしめて、いつでも帰っておいでと。

 

 でも私は結局まだ両親に教えられていない。私に前世の記憶があることを。

 

 私が魔法を使えるのは前世の記憶があるからで、レペテの様に本来教えて貰っていないのに使えるって言うことはありえない。

 

 「魔法は、魔力で言葉を紡ぎ発動させる…」

 どちらか片方がかけてれば発動することはなく、魔力が多くても紡ぐのが疎かなら正しく発動はしないし、そのまた逆も然り。

 

 だから陛下に教えたものも使える者は限られる。それを改良して我がものとできるのであればそれはそれでもいい。

 

 

 だけど、誰も知らない魔法をなぜ私が知っているか。大人達はそこも知りたかったんだろう。

 

 それとなく両親に聞かれても私は何も言えない。

 

 少し物憂げな気持ちで一人馬車からそっと外を見る。ちょうど大きな門を越えて沢山の建物を見送り、ゆっくりと馬車が止まった所だった。

 

 馬車の扉が外から開けられすっと手が差し伸べられる。

 

 「ジーク?」

 「手を」

 「いつの間に…」

 

 共に近くを走らせていた馬車にはモナール家の家紋はなかった。ということは同じタイミングではないはずなのに。ジークは今私に手を差し出している。

 

 その手に自分の手をそっと乗せて馬車から下りる。私服のドレスよりも制服はこじんまりしているので裾をつまむ必要も無い。

 

 前世のワンピース型の制服によく似ているからかドレスよりは心への負担は少ない。…コルセットもしなくていいしね。

 

 「サーレよりも先に来ていたんだ」

 「そうなの? どうして?」

 「エスコート役を他にやらせるわけないだろ」 

 

 少し不機嫌そうに無表情ながら顔を顰める。

 

 ゆっくりと周りを見回してみると制服姿の何人かの男子生徒がこちらに視線を向けている。他にも男子生徒の手を借りて馬車から下りる所を見てみると、こちらに視線を向けているのは婚約者のいない者で、婚約者の居る者はジークの様に早く到着し、待っていたみたいだ。

 

 

 「そうだったのね、ありがとうジーク」

 にこにこと思わず頬が緩む。私よりも高い位置にあるジークの顔を見上げると少し頬を赤らめてそっぽを向いて返される。

 

 ああ、今日もジークは素敵だ。

 

 

 

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