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願うのは笑顔  作者:
第1章 第3節【正しさ】
78/143

ぶつかり合う《ルトゥールside》


 

 騎士、貴族、王族、選ばれた者たち、忌まれた者達。全てが憎く、全てが醜い。

 

 目の前に現れた剣を持った男に俺から剣を抜いて切りかかる。くだらないもんだよ本当によ。

 

 「ルトゥール!」

 「レペテ下がってろ!」

 

 エテルネルの剣は心の中で呼ぶだけで応える。剣が使えるってこたぁ、あの野郎もまだ生きてやがるってことだ。

 

 「どきやがれ!」

 「退かないって、分かってるんだろ」

 いつ抜いたのか、男の剣とぶつかり合う音が響く。クソ野郎め。

 

 「気持ち悪いんだよ! その面!」

 「おあいにくさまだな」

 エテルネルも俺も剣を使うのには慣れているはずだ。が、この男の剣は普通の剣だってのに、まるで生き物のように動きやがる。

 

 「王族に剣を向けて逃げられるわけないだろう?」

 「チッ、なにが王族だ…何が奴隷廃止国だ! てめぇらのせいで俺達は!!」

 

 あの人の子は守らなきゃならねぇ。あの人との誓いは守らなきゃならねぇ。たとえ泥水をすすろうとも、他人の血を浴び続けようとも、病に倒れようとも。

 

 偽善者の塊のこの国は醜悪だ、奴隷を許可している国よりも下手したらずっと腐ってやがる。

 

 「詳しく話は聞く、殺しはしないさ」

 「っうるせぇ!」

 

 剣を力任せに振り抜く。少し、せめて少しでも当てれればあの王子のように呪いがかかるってぇのに、当たらねぇ。

 

 「何奴も此奴もっ」

 「“闇よ、百の刃となりて敵を穿(うが)てっ”」

 

 レペテの詠唱が聞こえた。とっとと黙って後ろで怯えてりゃいいってのに威勢のいい性格してやがる。

 

 「闇魔法、その歳で行使できるのか」

 軽々と床を蹴って走り抜き、レペテの魔法を完全に避けた男にすぐに切りかかる。ぜってぇ、ここから逃げる、あの人の子はぜってぇ見つけ出す。

 

 

 「陛下の手の上で転がされているのも分からないのか」

 「だから、うるせぇんだよ! さっきから!」

 

 怒りに任せて剣を振っても、男の剣はビクともしねぇ、力が強すぎんだよこの見た目でオークだってのか?

 

 「実行犯というから、どんな奴かと思えば子供とこんな剣しかふれない男とは」

 「舐めてんじゃねぇぞっ偽善の民め!!」

 

 エテルネルならどうする、どうやってこの場から逃げる…?

 


 「怒鳴り、罵ったところで意味は無い、戦いにおいて最も重要なのは強さだ」

 綺麗なスーツ。綺麗な顔。綺麗な赤金の髪に。憎らしいほど感情の乗らない銅の目。

 

 「っんなこと! てめぇに言われなくたって知ってんだよ!!」

 

 誰よりも知ってる。何よりもわかっている。それ以外意味がないってのは。十分もう味わった。

 

 「力がたらねぇ!? だからどうした! お前に勝てねぇ!? なんでそれで諦めなきゃなんねぇんだよ!」


 何奴も此奴も気持ち悪い目ぇしやがって! あのガキも、この男も、この国の者揃いも揃って。

 

 

 自分が正しいと思っていやがる。

 

 『お願い、あの子を見つけ出して、ごめんなさい…ジークだけには』

 

 産まれた時から気持ち悪い程聞こえていたエテルネルの声が聞こえねぇ。無事かどうかは分からねぇが、剣があるんだ、生きてはいるのはわかる。

 

 あいつが逃げられるかどうかなんてわかんねぇが、少なくとも俺達は逃げる。

 

 「お前らは…間違ってんだよ!」

 

 「ルトゥールぅぅ!!」

 

 諦める訳がねぇ。諦めるはずもねぇ。ここで逃げて、立て直して、またあの人の子を探し出す。それこそ死ぬまで。

 

 そういう誓いをあの地獄でしたんだ。

 

 目の前に迫るこの男の剣と、視界の端に入る泣きそうな顔で叫んだレペテ。それでも諦めるつもりなんてねぇ。死ぬまで俺は俺だ。

 

 

 

 『あの子が生きてくれるなら…幸せになれなくたっていい…生きていてくれるなら』

 

 あの人が諦めなかったことを諦める“俺達”じゃねぇ。

 

 

 

 


  

 

 

 

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