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願うのは笑顔  作者:
第1章 第3節【正しさ】
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アルヴァルドという男《アルside》


 

 レルム様に初めてであったのはまだ両親が健在で、レルム様が当主となったパーティーに出席した時だった。

 

 歳近い俺とレルム様を友人同士にしたかった俺の両親はレルム様と俺を引き合わせた。

 

 その時のレルム様の目は暗く澱んでいた、今みたいにキラキラした希望がある目ではなく、不快な程、死んでいて。

 

 「…不服なんですか?」

 

 思わずそう聞いた俺の横腹を両親が同時に肘をめり込ませてくるから()せて俯いた。それでも顔を上げて、レルム様のことを見た。

 

 置いてけぼりにされた小さな子供のような目が印象的だった。

 

 …その次にあったのは両親を亡くして戦争が始まり、兵を率いて行かねばならない時。

 

 まだ引き継いだばかりの名は重く、慣れないものだった。たくさんの兵を奮い立たせ、戦場に赴いて、そこでまたレルム様に出会った。

 

 一度目に出会った時と今度は反対に、澄んだ希望に満ちた目をしていた。何がそうあの人を変えたのかずっと疑問だった、旧友も遠い親戚も戦場では等しく死んでいく。

 

 醜くとも美しくとも、血に倒れ肉となってしまえば意味は無く、美しいと褒められた今までになんと意味の無い時間を過ごしてしまったんだと過去の自分を恨んだ。

 

 恨んでも死んだものは帰ってこない。ただ指示を出して、剣を振り、美しい者も醜い者も幼い者も老いた者も変わらず切り捨てる。

 

 何百も切れば人がどこを切られると生きれないのか分かってくる。何千も死ねば味方や敵の死に何の感情も抱かなくなる。

 

 屍が広がる戦場で、王子たちが死んでいく。その王子を守ろうとしたものも死んでいく。地位すらも、この場所には関係なく、強さだけが全てで。

 

 そこに陛下はやってきた。最後の一人の王子として。病弱が理由で王位争いから外れ、病弱が理由で戦争に参加せず、それが彼を生かした。彼を再び王太子の地位へと押し上げた。

 

 「陛下に続くぞ」

 血だらけのレルム様に無言で従って、ついて行く。レルム様は、王太子にはなったが王子でしかなかった陛下を、この時から既に陛下と呼んでいた。そして陛下自身もレルム様の事を忠臣だと疑うこともせず受け入れた。

 

 二人の間に何があったかなんて知らない、どうでもいい。ただ俺は敵を切ればいい、殺せばそれだけ味方が死ななくなる。

 

 それしか無かった。俺はレルム様のように頭がいいわけでもなかったから。俺にとってレルム様についていけるならもうどうでもよかった。

 

 「…侵入者」

 どんな人物だろうか。強ければいい。うんと強い、それこそ俺を殺してしまえるほどの強さの存在ならもっと楽しめる。

 

 心が踊る。剣を握る手に無意識に力がこもって、普段見えないものが見える。

 

 死とは常にそこにある。なにがきっかけでその死へ向かうか。それが違うだけだ。

 

 だから見る。だから探す。どこに死が多いか。その死から繋がる線をたどって、元を経つ。

 

 会場にはレルム様が居る。ターニャ様がいる。お嬢様がいる。

 

 

 ジークがいる。

 

 初めての晴れ舞台だったのに。未来がずっと続いてく二人の初めてのパーティーだった。

 

 「…今人が通ったか?」

 

 見張りの兵の横を過ぎる。いつも通り自然に、通り過ぎて、やっと兵は何かが横切ったことに気づいて首を傾げる。

 

 でも、分からない。見えない。気づけない。

 

 「こいつじゃない」

 

 こいつから死が匂わない。

 兵の中に紛れてるわけじゃなさそうだ。それならどこかに隠れているのか?

 

 パーティー会場を見下ろせる王族のみ入れる部屋の前を通って、ふと足を止めた。

 

 かおりがした。濃厚な死の匂い。普通の人ならば絶対に分からない俺にしか分からない匂い。

 

 扉の前にたち少し考えてからその隣の部屋に入る。陛下は手を出すまで泳がせろと言っていた。そのあとは捕らえろと。

 

 強ければいい、強ければ。

 この渇きもきっと潤うだろう。

 

 

 

 

 

 

戦争の時の話もいつかかけたらいいなぁ

もしかしたら本編に関係ないから短編で出すかもしれません

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