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願うのは笑顔  作者:
第1章 第3節【正しさ】
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広がっていく《レヴェルside》


 

 剣を握った時。振った時、剣を弾いた時。僕の世界が輝いた。

 

 金属同士がぶつかる音も。握った重さも、風を切る音も。今まで僕が見た事のないもので作られていた。

 

 それを、剣術と言うのだと知った。その喜びに果てがないことを授業の度に感じて、そして。

 

 僕にはもう先がないと知った。

 

 上達すれば褒めてくれる。でもすぐに憐れむんだ。

 

 第一王子よりも剣の才はある。でももう学ぶ機会はないだろうと。

 

 教えてくれた先生が無表情に告げたのを。僕はただ聞くことしか出来なかった。

 

 第一王子にしか剣術の基礎の先を教えられることは無いと。母上が僕に淡々と告げた時。どんな顔をしていたんだろう。剣術を学ぶ兄上をどんな目で見ていたんだろう。

 

 

 ────父上は知っていた。

 

 僕が王位よりも剣術に惹かれているのを。兄上と争いたくないと思っているのを。

 

 

 ────『貴方の努力が足りないから』

 

 母上。母上の言う通りだったのかもしれない。きっと父上も兄上も僕が本気で王位を継ぎたいと思っていたなら、それに真剣に向き合ってくれたんだと思う。

 

 第一王子も第二王子も関係なく。

 

 

 でも、僕は剣を振りたかった。剣を学びたかった。剣術をもっと知りたかった。

 

 それは許されないと思っていた。

 

 ああ、僕の居場所はなくなっていなかった。

 

 

 父上も兄上も僕のことをちゃんと見てくれていて、だからこそ継承権が剥奪された。

 

 剥奪されることで僕の未来はすごく広がったんだ。剣を学んでもいいし、やったことの無い楽器を学んでもいい。歌を覚えたってきっと許されて。

 

 法に反しなければきっとどんな未来でも受け入れてもらえるんだ。

 

 でもやっぱり一番は。

 

 一番やりたいことはきっとずっと変わらない。

 

 “兄上を絶対に裏切らない騎士になろう”。その背中をもう二度と傷つけないように。裏切った母上の子供だけど。むしろだからこそ。

 

 この優しい人を守る剣にしよう。

 

 兄上から離れ、不貞腐れるレティシアの頭を撫でてやると兄上が扉の方へ向かい、扉を開ける。

 

 「入って」

 

 誰を招き入れたのかと思えば、母上と共に拘束された男がいて思わず兄上の手を引いて兄上の前に出た。守る。絶対。もう二度と傷つけさせるもんか。

 

 そう睨みを利かせれば、僕の前に三人の珍しい目をした存在が立った。

 

 「ジーク…? なんでこんな所に…」

 「成り行きだな」

 「さっきぶりですレヴェル王子」

 

 ジークとリトには見覚えがあった。でももう一人の銀髪に緑の目をした子は初めて見たと思う。たぶん。

 

 「はじめましてレヴェル王子、私はサーレ、サーレ・ヴァド・マーシェルと申します」

 

 にこりと笑って綺麗なドレスの裾をつまみ礼をとる様子を見ながらジークの婚約者という少女を見る。

 

 女神の瞳だと僕ですら確信できるから、きっと父上や兄上も気づいているんだろう。

 

 気付いててこの部屋に案内したのなら。気付いてて忌み子とされるジークを婚約者にしたなら。僕は二人の選択を肯定しよう。

 

 「はじめまして」

 

 手を差し出せば少し驚いた様子で握手をし返してくれる。リトもそれをだらしのない笑みを浮かべながら見届けると両手を開いて抱き着いてくる。

 

 「何をするんだ!」

 「何ってハグだよ? はーぐーっ」

 「暑い!鬱陶しい!離れろっ」

 「いーやーだー」

 

 リトを剥がそうと躍起(やっき)になっていれば、ずっと立って見ていた男が深く頭を下げた。

 

 「今日からサーレ様の下につくことになりました、エテルネルです」

 「……なぜそうなったんですか兄上」

 

 「んー? 父上にサーレが交渉した結果?」

 

 父上に貴族だとしても普通の女の子が…? 同い歳みたいだけどここにこのエテルネルとやらがいるのは父上が許したからなんだろうな。

 

 「兄上はいいんですか?」

 「いいもなにも、対価も貰えたし得しかしてないよ?」

 「僕は絶対に許しませんけど…兄上がそう言うならいいや」

 

 兄上が良しとしたならそれ以上僕は何も言う必要は無い。もし何かあったら身を呈しても守ればいい。

 男から視線を外せば兄上が頭を撫でてくれて、それが心地良いことが(くすぐ)ったかった。

 

 

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