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願うのは笑顔  作者:
第1章 第3節【正しさ】
73/143

兄と弟《グランシアノside》


 

 初めて、父上が私にレヴェルの王位継承権を剥奪するという話を持ってきた時。どこかほっとしていた。

 

 父上から王位争いの話は何度もされていた。レヴェルやレティシアとの距離が近くなればなるほど、それは忠告として聞かされた。

 

 王座は一つだけ。王子は複数。なら行われるのは唯一の王となるための争い。

 

 王位争いは戦争の練習だったのかもしないとも父上は呟いて、その悲惨さを私に語った。

 

 父上は五人の王子の中で一番の継承権を持っていた。だが、育つにつれて病に弱っていく父上を前王は良く思わず強い王太子を求めた前王は父上から王位継承権を剥奪し、他の四人の王子を争わせた。

 

 仲が良かったという。体が弱かった父上を他の王子は慕ってくれてたという。けれど残ったのは父上だけだった。

 

 四人の王子は四人ともその争いのさなかに命を落とし、年老いた王と、父上だけが残った。

 

 四人の王子の死は父上にとって耐え難いものだった。そうだろう、私に当て嵌めて考えるならレヴェルとレティシアが殺し合い、二人とも死んでしまうということだ。

 

 それはどんな悪夢だろうか。

 

 「父上がなぜ、レヴェルの王位継承権を剥奪したかわかる?」

 

 レティーリア様の故郷が戦争に巻き込まれこの国からも兵を送った。その結果はレティーリア様の兄である国王の裏切り。この国の兵を殺し、攻めてきた国へ媚びを売った。

 

 ティーシュバルを共に滅ぼそうと。まぁ、攻めてきた国は即その申し出を断り兵を殺した国王の首が父上の元へ送られてきたらしい。その話はレティーリア様は知らないが、死んだ兵は戦争の中死んだことにされた。そうしなければレティーリア様だけじゃなくレヴェルもレティシアも殺すことを民に求められかねなかった。

 

 それを黙っている辺り私も父上も国を大切に思うのと同時に家族も大切に思っていると再確認し、黙った分、死なせてしまった分、尚更民を幸せにしなければならないと誓った。

 

 「レティーリア様が母国を亡くしてからあからさまにレヴェルを王にしようとしていたろ? でも当の本人は王になりたいというより…剣がやりたいように私と父上からは見えた」

 

 レヴェルはなんでもそつなくこなした。勉強も、作法も、剣術も。その中でも剣を握った時、宝物を見つけたかのように探検に出かけるように幸せそうな笑みを浮かべていた。

 

 「本来なら第一王子しか剣術は深く習うことは無いんだ、争いを避ける為にね…だからレヴェルの剣術も基礎を覚えた頃には習うことも無くなるはずだった…でも唯一レヴェルが習う方法は…王位継承権を剥奪すること」

 「…え?」

 「レヴェル、剣を持っていいんだ…自分の長所を伸ばしていいんだ、君は自由に未来を選んでいいんだよ」

 

 「それでももし王になりたいのなら武力以外で競おう。もし剣を極め騎士となってくれたならばきっと私はレヴェルをずっと傍に置きたいと思うよ、レヴェルほど背中を任せて安心できる者も居ないからね」

 

 君は王になるなんて一つの選択肢だけに未来を絞ることはない。私は父上の様に民を導くことを夢としているが、きっとレヴェルは違うと思うから。

 

 「レヴェルにぃさま?」

 「レヴェル?」


 固まったまま私の顔を見るレヴェルの名をレティシアと見れば今度はレヴェルから抱きついて来て私の胸元に顔を押し付ける。

 

 声を上げてはいなかった。

 レティシアの様にわかりやすいわけでもなかった。

 

 でも泣いていると、湿る服に気づいてその小さな頭を撫でてやる。間に挟まれたレティシアが苦しそうだけど今は我慢してもらおう。

 

 

 

 

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