斜め上を行くのがいい女
ジークはすぐにメイド達によってお風呂に案内されていく。髪の毛も切るらしくその準備を執事たちが忙しなく行う間私は浴室の隣の部屋でひたすら待つ。
ジークがいるということはこの世界は神緑の巫女姫の世界だろう。そしたら赤い目はこの世界では忌まれるものだ。もしメイド達がジークの目を貶すなら私はそれの倍は褒めるつもり。
いくらお父様とお母様がよくできた人でも忌まれるものを見たら態度を変えるかもしれない。なら納得してもらえるまで根気よく話すつもりだ。
暫くするとドアが開く。中に入ってくるのは子供用の執事服を着たジーク。長く灰色のようになっていた髪はよく洗われ、香油を付けてもらったのか白くつややかになっている。
白い肌も少し荒れていてもやっぱり綺麗で、お風呂で温まったのか表情の薄い顔はほんのり赤い。そして前髪を切られたお陰でよく見えるようになったルビーのように赤く綺麗な目が私を見つめる。
「ジーク、似合ってるよ!」
「…」
「ジークの赤い目はどんな宝石よりも、綺麗ね」
綺麗だと言われたのが初めてなのか私の顔をまじまじと見てほんのりとまた頬を赤らめて視線をそらす。
何この子可愛い
密かに萌えてればドアが再び開いてお母様とお父様が中に入ってくる。その後にはアルもいる。
そしてジークの顔を見てお父様とアルは難しそうな顔をして。お母様は少し顔を歪める。
…やっぱりみんなもジークを嫌うのだろうか。
そう思いジークの手をぎゅっと握る。何があっても、ジークは私が守る。巫女姫の力を使ってもいい。私はこの人を幸せにさせるためにきっとこの世界に来たんだ。
「サーレ」
不意にお母様が私を呼ぶ。
「…はい」
「お母様たちがジーク君の目を見て追い出すと思ったんでしょう? だから誰よりもジークを一番に待ってた、ちがう?」
珍しく怒ったような顔で私を見るお母様。私は訳が分からずただ頷く。ジークが私の手を強く握り返してくるのを感じながら返答を待つ。
でも、お母様は考える様に何も言わない。代わりに口を開いたのはお父様だった。
「サーレ、やっぱり私は君たちを婚約はさせられない」
「どうして?」
「それは…平民を一人娘の婚約者にするには難しい…その上ジークは赤い目だ。赤い目は教会で悪魔の者とされて…」
「じゃあ、ジークと私をたしたらちょうどね」
その言葉にその場にいる私とジーク以外が目を見開き、固まる。ジークは訳が分からないのか首をかしげたままだった。
「女神の目をもつ、私。悪魔の目をもつ、ジーク。ほらね、たしたら普通の人よ」
女神の目を持つ私はいずれ巫女姫と呼ばれるでしょう。そして悪魔の目を持つとされるジークは悪魔の子とされる。
なら私達はずっと一緒にいる。人が否定しても人が私を崇めてジークを貶し、殺そうとしても。
「私は、ジークがいいの。赤い目だからという理由なら、お父様のいうこと、きかないわ。」
「…」
「ねぇ、サーレ。ジーク君がどうしてそんなに好きなのかしら、今日あったのよね、恋に落ちたのもわかる…でも執着が…」
「お母様は、お父様がどんな色をもってても好きになったでしょう?」
そう問いかければお母様はゆっくりと頷き、お父様は照れたように頬を赤らめて口元を隠す。
「もちろん、そうね」
「恋におちるのは一瞬なんでしょ、ジークが私は好きよ。色なんてしらない」
真っ直ぐにお母様を見つめかえす。
お父様よりもこういう時はお母様を説得するのが大切だ。お父様はどんな相手でも否定するだろうし。
「苦しいことも怖いこともあるわよ」
「わかってる」
「人から恨まれたり距離を置かれるかもしれないわ」
「その分、寄るからいいの。逃げるならおいかけるのよ」
子供だから許されるってのもある。でも私は持ってるすべてでジークを守る。魔王になんかさせない。人を憎ませて悲しみの中で独りで死なせて、その上たくさんの人に死を喜ばれる存在なんて絶対させない。
「…はあ、アル。」
「はい?」
「あなた、ジーク君を養子にとる気ないかしら」
その言葉にお母様とアル以外が目を見開き、固まる。え?養子?
「構いませんよ、俺一人っ子の上既に両親も亡くなってますし、名ばかりの子爵でよければですが」
え?そんな簡単に決めれるものなの?唖然とアルとお母様を見比べる。お父様も同じ顔だ。




