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願うのは笑顔  作者:
第1章 第3節【正しさ】
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襲撃者の正体


 

 「剣で脅しても意味ないですよ、別に話しても構いませんし」

 お父様が剣を手にして男とレティーリアに歩み寄ったところでへらりと笑いながら男は口を開く。

 

 その隣で座らされ震えていたレティーリアは顔色を悪くしたままに「なにを!」とさけぶ。

 

 「私は助けたい人がいた、その人を隣の女が買った先を知っているからこの女の手を取っただけです、簡単でしょう?」

 「買った…とはどういうことだ。」

 「奴隷として売られた子供を取り返しに来た、私の望みを何故か知ってたその女が私に持ちかけたんです、その子供の行方を知っている、助けて欲しければ第一王子を殺せとね」

 

 困りましたよ、他に選択肢なんてありませんでしたから。

 

 と。特に表情を変えず、笑みを浮かべたまま男が告げる。陛下はその言葉に顔を顰めた。…そうもなるよね、奴隷廃止を宣言している陛下の側室が奴隷を黙認して、なおかつそれを救いに来た存在を脅してるんだ。

 

 「レティーリア…」

 「ハラール様っ違います、私はそんなことしておりません! どうして襲撃者を信じ妻を疑うことが出来るのですか」

 

 必死に縛られたまま陛下に縋り付くように叫ぶレティーリアを陛下は感情のない目で見下ろす。それを嘲笑うように男はさらに言葉を続けた。

 

 「奴隷廃止を宣言している陛下の側室が奴隷を売ってるんだから面白いですよねぇ」

 「黙りなさいっ下郎が!」

 「墓穴ほってるの分からないんですか貴女?」

 

 呆れたようにため息をこぼす男。その男を罵り見下すレティーリアを見る陛下の目はどんどんと冷たくなっていくのが私にも分かる。

 

 それよりも。

 「なぜ、この人の手を取ったのですか?」

 私が口を開いたことが意外だったのか男が少し驚いた顔をしつつも笑みは崩さない。

 

 「言ったでしょう? 子供を助けたかったと」

 「他にも手段はあったはずよね?」

 「いえ、無かったのですよ…王子を危険に晒した罰は受けますし、話せと言うならなんでも話しましょう」

 殺されるかもしれないのに?と吐きかけた言葉を呑み込む。陛下を見ると少し考えているような顔をしていた。

 

 お父様は男を見下ろして負けず劣らずの笑顔を返す。

 

 「つまり、殺されても目的は果たせたから良いと?」

 「…よく分かりませんね」

 「王子襲撃という大罪を犯してまで助けたい奴隷がいたんだろう、レティーリア様の発言からまだその奴隷は君の手に渡った訳じゃなさそうだし、その奴隷がもう手遅れか、既に助けられているのか」

 

 グランシアノを殺しても助けたかった存在を助けれた…? だからもう死んでもいい?

 

 …まって。

 

 なにか引っかかる。

 

 奴隷廃止のこの国に売られてきた子供。

 

 レティーリアがその子供の行方を知っている。

 

 グランシアノ襲撃が行われたってことはパーティー開始時点ではまだこの男はその奴隷の子供を見つけてなかったんだよね?

 

 でも襲撃してからすぐにこの男は捕まって…ここに運ばれた。

 

 その間にあった子供は私、ジーク、レヴェル、キャロリアンナ、グランシアノ、リト。

 

 「…まさか」

 

 出された答え。その先に私は一人のキャラクターを導き出す。ゲームでは仮面を付けていたから分からなかったけどこんな顔をしていたの?

 

 「貴方、ジークを探してたのね…?」

 「…」

 

 そう呟いた言葉を聞いて男が初めて表情を崩す。驚き唖然とした顔。お父様も私の言葉を聞いて納得したような顔をしている。

 

 「俺…?」

 ジークが面食らった顔で私と男の顔を交互に見つめたあと首を傾げる。

 

 「俺この人知らないけど」

 「ジークは知らなくても相手が知ってるのよ」

 「へぇ」

 

 ゲームの中でジークは部下を大切にしていた。その部下の筆頭は三人いる。

 

 双子のエテルネル、ルトゥール。

 いつも仮面をした二人の性格は真逆で、エテルネルは紳士的。ルトゥールは口が悪く態度も悪い。

 

 そしてジークと歳の近い女性、レペテ。

 

 この男の態度からしてエテルネルの方だろう。

 

 そして、襲撃者は三人だったんだ。この三人で、目的はジーク。

 

 ジークを私が助けた時点でこの人達は…こんなことする必要がなかった。

 

 …助けたい。

 

 エテルネルとルトゥールとレペテ。リトを襲い、グランシアノを襲った彼らは十分に罰される理由がある。でも、それでも。

 

 彼等は憎まれ殺されそうになるジークを誰よりも守っていた人だった。最後まで決して裏切ることなく。

 

 

 

 

 

 

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