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願うのは笑顔  作者:
第1章 第3節【正しさ】
63/143

時は来りて


 

 ─────《来るよ》

 

 ジークと手分けしてレヴェルを探して、結局私は見つけられず今度はジークを探しはじめる。誓花は結界に弾かれるし、目立ってしまうしなぁ。

 

 探すのにつかれ、ひと息吐くと、何かが来るよと、耳元で囁いた。

 

 《来るよ》

 《始まるよ》

 《ようやく》

 《(ようや)く》

 

 《─────願いを叶える為の世界が(ようや)く始まるよ》

 

 誰だろう。幼くも聞こえるその声の言葉は。耳元で囁くような微かな声の持ち主は。

 近くに子供はいないのに私の耳元で何かが囁いてざわめく。

 

 「陛下が参られます」

 

 

 そして、何度も聞いたセリフが告げる。始まりを。

 

 

 一人でこの場面に出くわすことになったのは私か…とりあえず頭を下げなくてはならないから下げて礼をする。

 

 大人も子供も頭を下げる中、カツン─カツン─とヒールの音に、コツ─コツ─という靴の音、それからその後に続く小さな足音が二つ。

 

 「皆、よく集まった」

 

 陛下の落ち着いた声が静まり返ったパーティー会場に響く。誰も、答えない。静かなその空間。

 

 「頭をあげ、楽にして()い」

 

 陛下のその言葉にやっと頭をあげることが許される。壇上とも言える場所に造りが良い大きな王座が二つ。それぞれ陛下と王妃が座っていた。

 

 まさにゲームのままの位置に人がいて。私はただ不安な気持ちになる。リトと同じ。第一王子も、その命を脅かされる。痛いだろうし苦しいだろうそして絶望するだろう。

 リトと同じように。

 

 …リトと違うのは第一王子が襲われることを私が教えている事だけど。

 

 陛下は第一王子が襲われると知らされてもなお、パーティーを続行した。…大丈夫きっと、きっとどうにかなる。

 

 唇をついかみ締めながら周りを見回すけど怪しい人はいない。相当紛れるのがうまいんだろう。

 

 誰を操るか。私は目星がついていた。でもそれを伝えてはいない。予想でしかなくて、間違いだったらいいと思っている。だってそうだったならグランシアノ王子の気持ちはどうなるの。レヴェルの気持ちは…。

 

 ゲームで語られなかった第一王子襲撃の真実を私は暴く事になる。傷付く存在がいると知っていて。なお。

 

 

 「レヴェル、来なさい」

 

 会場に既に入り込んでいるであろうレヴェルを呼べば膝をついているものたちの中から一人、金髪の子供が姿を現す。顔つきが陛下とよく似ていて…ゲームのままのレヴェル。よく見ればジークはレヴェルを見つけたらしくレヴェルのそばに居た。目が合ったので微笑めばジークも少し目元をゆるめる。

 

 緊張した様子のレヴェルを同じく緊張して見つめる。

 

 そして、レヴェルが足を踏み出し陛下の元へ歩み寄ろうとした時。

 

 

 ────パリンッ

 

 また何度も聞いたことのある音が、辺りに響きわたり、近衛兵が王族の方へと駆け寄る中、照明を落とされたように真っ暗な闇に包まれる。

 

 この世界に照明はない。魔法具で良く似た物はあるけど、さっきのような割れた音はしない。

 

 割れたあの音は結界が壊れた音。魔法を使えないようにしているこの会場の結界が破壊された音。

 

 

 

 

 聞こえてくる。耳を塞ぎたくなる小さな子供の悲鳴。

 

 

 「っあああ!」

 

 分かっていたことではあった。知ってはいてもリトと同じように。私はこの悲痛な叫びを聞くのがとても辛い。当たり前なんだろうけれど、聞いていたくないと、やめてくれと叫びたくなる。

 

 自然に浮かんでくる涙を引っ込めるためぎゅっと目を瞑る。…目を瞑っても闇に囚われているのは変わらない。

 でも。私はこの闇を晴らせる。晴らさなきゃ行けない。確実に第一王子が殺されないように。


 『サーレ、闇を晴らして』


 誓花から聞こえてくるリトの声に素直に口を開く。何をしているかはわからない。でも何かが行われているんだろう。


 「“光よ”」

 

 

 

 ゆっくりと小さな声で練った魔力で魔法を発動させる。特に凄いものでもない。闇を晴らすだけの魔法は、暗く(よど)んだ闇を晴らしていく。

 

 


 

 

 


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