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願うのは笑顔  作者:
第1章 第3節【正しさ】
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ジークとレヴェル《ジークside》


 「ジークだっけ? 君の婚約者って誰? どんな子? 」

 「銀色の髪に緑の目の綺麗で小さな子、レヴェル王子と同い歳だ」

 「ふーん、ジークはその子が好きなの?」

 いきなりな質問に溜息をこぼしてから手元のジュースを飲む。

 

 「悪魔の目を持つ君が?」

 「…」

 「なんにもいわないの? 怒るかと思ったのに」

 「怒らない、事実だしな」

 

 何度も何度も言われた。目を見る度、顔を合わせる度。否定されて、拒絶されて、罵られて。そんなのはいちばん古い記憶の時からずっとそうだった。

 

 「じゃあ悪魔なの?」

 「俺は悪魔じゃない」

 「認めたじゃん」

 「悪魔って呼ばれた存在が俺と同じ目の色をしてただけで俺自身はただの人間だ」

 「なーんだ」

 

 悪魔なら良かったのに。とレヴェル王子は不貞腐れたように遠くを見る。悪魔と否定されることはあっても悪魔だったらよかったと残念がられるのは初めてだ。

 

 「…なんで悪魔だったら良かったんだ?」

 「教えるわけないじゃん、悪魔じゃないんでしょ」

 「悪魔じゃないが、気にはなる」

 「変なの」

 つまんなそうに息をついてそれから俺を真っ直ぐと見る。

 

 「悪魔は望みを叶えてくれるって聞いた」

 「…は?」

 「悪魔なら…きっと叶えてくれるって思っただけだよ」

 

 普通の事のように悪魔に望みを叶えてもらおうという子供がどこにいるんだろうか。王族だからか? 悪魔を軽くみているのか?

 

 なんにせよ、目の前のこの王子は。何処かおかしい。

 

 「望みって…」

 「初対面のひとに教えることじゃないよねそれは」

 

 悪魔に会いたいってことは言ってもいいのか。心の中でツッコミを入れながらも納得する。

 

 俺を拒絶しなかった理由は分かった。サーレは友人になりたいと言っていたが…“これ”とサーレが友人に…? 毒されそうで怖いな。

 

 ジュースを飲みながらそんな事を考えてればレヴェル王子が俺を見ていることに気づいた。

 

 「どうかしたか?」

 「ジークは…婚約者の思いを手に入れるためならなんでもするの?」

 「……なんでもしたいとは思うが、彼女はそれを許さないだろうな」

 

 いつだって俺を気遣う小さなサーレを思い浮かべる。出会った時よりも成長したがまだまだ小さなサーレ。だけど力だけが大きくなっている。

 

 女神の瞳がそうさせているなら確かに彼女は聖女なのだろう。女神の瞳を持ち、まるで神のような力を振るう。

 

 サーレの力が教会に知られたらきっとサーレと俺は離されて、サーレは神殿の奥に閉じ込められるだろう。

 それでも彼女は力を振るう。

 

 隠れながらも。小さな頭で考えて、小さな体を動かして。俺を守ろうと、俺との未来を守ろうと。リトを守ろうと。

 

 「彼女は彼女で俺は俺だ、彼女の気持ちを縛るつもりは無い、もし別に好きな人ができたとして、それを俺自身が邪魔をするんであれば俺は自害したっていい」

 「それじゃ君は幸せになれないね」

 「俺にとって彼女の笑顔が幸せの象徴なんだ」

 

 わかってもらおうとは思っていない。と付け加えればレヴェル王子はまたつまらなそうに唇を尖らせながらも遠くを見る。

 

 「あの人もそう考えられたら良かったのに」

 「…」

 

 あまりに悲しそうな声だったその言葉に俺は何も言えなかった。いや。きっと、どうでもいいとさえ思っていた。

 

 レヴェル王子は所詮俺にとってその程度でしかない。俺を化け物と呼ばなくても悪魔だと決めつけなくても。リトのようにレヴェル王子は歩み寄ることなく距離を置いていた。

 

 それを俺は(とが)めるつもりも、置かれた距離を縮めるつもりもなかった。

 

 

 

 

 

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