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願うのは笑顔  作者:
Prolog【越える想い】
6/143

ころころ転がるお父様


 

 馬車に揺られて屋敷へと向かう。その間も私はジークのことを抱きしめたまま。何度かお父様が私達を離そうとしてきたけどギロりと睨みつけてぐるぐると唸り声をあげるんじゃないかってほど威嚇をする。

 

 その度にお父様が傷ついたように泣きそうになって、アルが苦笑いを浮かべてた。

 

 申し訳ない気持ちもあるけど、でもね、お父様。ジークは今までこうして抱きしめてくれる人居なかったんだよ。

 

 意地でも離す気はないってね、体現しないとすぐにジークってばマイナス思考に走るんだってば。

 

 お父様凄いんでしょ? 察して。

 

 というようにお父様を見つめ返せば「後で詳しく話そう」と言ってくれた。嬉しくなって大きく頷く。

 

 「レルム様、お嬢様、屋敷につきました。」

 アルがそう言った途端に、ぎゅっと、ジークが私の手を握り返してくる。思わず顔を覗き込めば今まで虚ろだった目が何かを宿したように強い目をしていて。

 

 それが私を見つめ返した。

 

 私が離れれば少し悲しそうにジークは俯く。(いく)ら何でもまた二人揃ってお父様に抱き上げられるのはちょっと…。

  馬車を先に降りたジークの背中が何だか迷子の子供のように見えて思わず声をかける。

 

 「ジーク」

 

 「?」

 

 その背中に思いっきり抱きついてから手を握る。驚いたように赤い目が見開かれすぐに嬉しげに細められる。うん、可愛い。

 

 「こら、サーレはしたないぞ」

 「今日だけだもん」

 「本当にその子が気に入ってるんですねぇ」

 「ジークはね、どんな人よりも素敵なのよ」

 

 すぐマイナス思考になるし、愛に対して貪欲だし、人のことを滅ぼそうとするけど。ゲームの中でも部下のことは大切にしてたし人の容姿を蔑むことも言わないし。

 

 何より赤い目が大人になると鋭さが入ってほんとにカッコイイんだよね…。

 

 未来のジークを思い浮かべニコニコしながら手を握ってればジークは少し目元を緩めて私の手を握り返す。ジーク越しに見たお父様がすごい悔しそうな顔してる。

 

 ごめんね、お父様もカッコイイよ…。

 

 ドアを開けてもらい中に入れば出迎えるメイドさんや執事さんたち。そしてニコやかなお母様が二階から降りてくるのを見てジークの手を引きながらお母様の元へ駆け寄る。

 

 「お母様!」

 「サーレおかえりなさい。思ったより早かったのね?…それでその素敵な男の子はどなた?」

 「ジークっていうのよ、私ジークと結婚したいのっ」

 「っ」

 「あら、もう結婚相手見つけてきたの? さすが私の子ねぇ、ジーク君はうちの子でいいのかしら?」 

 

 そういえばジークに何も聞いてないな…お母様と一緒にジークを見ればジークは何も言わず私の手を強く握ってから恐る恐る頷いた。

 

 「えへへ」

 「…」

 「あらあら、可愛らしい恋人たちね。レルムもおかえりなさい、今日はお祝いしましょ」

 「た、ターニャ、認めるのか?」


 お父様の言葉にお母様はきょとんとしてすぐに少女みたいに頬を赤らめて微笑む。

 

 「女性が恋に落ちるのは一瞬ですのよ、私があなたに恋したように」

 「!!」 

 ラブラブしてるお母様とお父様を薄目に見る。すごいわ、お母様に古典的な小悪魔の尻尾が見える。

 

 

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