好きだと言える君《ジークside》
静かに目を伏せる。
“ジークが好き”
いつだってサーレはそれを隠そうとしない。当たり前のように俺の事を婚約者だと紹介する。
それが、それがどれだけ俺の事を喜ばせるか、当たり前のことだと思ってるサーレには分からないだろう。
分からなくてもいいんだ、これは俺だけの喜びだから。
サーレはまるで未来を知っているみたいに話す。宰相と話している時だってそうで、ずっと俺は不安だった。
いつもと違う。まるで大人みたいな話し方で冷静に宰相を見つめて、リトの時もそうだ。まるで息をするように奇跡のような魔法を使う。
みんながサーレを見るから。
俺はみんなの目を潰してやりたくなる。こんな綺麗で可愛いサーレを俺から奪うやつが現れないように、サーレが俺よりその人がいいと思うことがないようにって。
でもそれは間違いだってサーレが教えてくれるんだ。俺がいいって…俺と結婚したいって。まだ小さなサーレ。大人になればもっと綺麗になって沢山の人に愛されるサーレ。
どこにも行かないで欲しい。
叫びそうになった言葉をのみくだしてもスッキリしなかった。
サーレ。
俺を見てよ。俺を頼ってよ、俺のそばにいてよ。どこにも行かないでくれ。
俺はそれだけでいいから。周りがなんと言おうと周りがどれだけ言おうと。サーレが俺のそばに居るなら幸せだから。
情けなく何かをなそうと前を向くサーレの足を引っ張りそうになる自分に幻滅した。
───俺は何も出来ない。
俺の見た目で闇魔法なんて使えば余計に忌み子扱いだ。魔法の使い方すら知らないけど、剣ならサーレに勝てるけど、ここには剣を持ってこれない。
落ちていく感情を止めたのはサーレの熱だった。
なんの話をしていたのかいつの間にかサーレは俺の背中に隠れて宰相を見ていた。
温かな熱がじんわりと伝わってきて、当たり前のように俺の手をとる。
ふわりと笑うサーレはやっぱり綺麗だ。
サーレの魔法は心地いい。
サーレの両親のもとへと帰ることになったらしく、またサーレが歌うように何かを囁く。聞き取れず理解も出来ないけれど、詠唱は短く、直ぐにまた視界が切り替わる。
「「サーレ!ジーク!」」
焦り顔のターニャ様とレルム様にサーレが驚きながら抱きすくめられる。
リトはいつの間にか手を離してたらしく巻き込まれなかったが俺は引っ張られるように巻き込まれた。
温かな二人の熱はサーレとよく似ていた。
「ごめんなさいお母様、お父様」
サーレのほっとした顔を見て俺は今までの自分を恥じる。
サーレに勝てるものができた。剣と弓はまだ小さなサーレには辛いもので、逆を言えば俺がサーレよりも大きいから出来たってだけだ。
“ジークを守るために”、そう簡単に言わせる俺がとても恥ずかしく、そんな彼女を支えることが出来ないのがとても辛い。
“俺が守るからサーレは安全な所にいて”
そう言えたならどれだけ良かっただろう。何故俺は守られる側なのだろういつも。
早く大人になりたい。早く俺も魔法を使えるようになりたい。闇属性の魔法でもなんでもサーレを守る術が欲しい。
俺はリトのように力になれないけれど。
俺はサーレのように周りの人に光はやれないけれど。
俺に出来ることを探そう。




