出来ないこと
その考えを振り払うように頭をふる。
急に頭を横にふったからか周りが心配そうに見てくるけど、嫌な予感のままだったなら余計今はそれを気にしない様にしなきゃならない。
客観的に犯人の目星をつけておいて、あとは守るだけ。犯人が誰であろうと守るだけ。
それが私にとって辛い事実を伝えてきても。グランシアノ王子は傷つけさせない。物語が書き変わるのを恐れてグランシアノ王子のことを守ろうなんてちっとも思ってなかった。だけど、今の彼は子供なんだ。ただ命を狙われた。
「会場に何らかの魔法を掛けて目眩ししてくるはずです、結界も破られるでしょう」
「結界は王宮の光の魔法師が作ったものだよ、そう簡単には破られない」
宰相がリトから体を離して私を見据える。真剣なその眼差しに笑ってみせる。
「更に上の魔法を使われたら?」
「…?」
「命を懸けて作ったんですか、あの結界」
「そんな事はしない!」
「でしょう?」
結界を作った人がどれだけの力の持ち主かは知らないけど、相手は王族の暗殺を狙ってるんだよ。
「命を使っても…破る気のものだと?」
「そう考えられませんか、それほどのことをしない限り王子には手を出せません、失敗すれば結局死罪ですし」
グランシアノ王子は、王族としてだけじゃない、次代の王となるために、いずれ王太子の地位を与えられる人だ。
彼の命を狙うのはこの国の命を狙うのと変わらない。たとえ、第二王子がいるとしても彼は王位を継ぐことは出来ないんだから。
スペアにもなれない王子と呼ばれた──攻略対象であるレヴェル。私が嫌いで仕方ない男…今は子供だけど。
でも私が嫌いな彼もこの先の展開によって“あの道”に手を出すことも無くなるかもしれない。
「…纏めます、犯人は複数人でその中の一人は人を操る魔法を使える闇魔法を使うもの、狙いはパーティーの時にグランシアノ王子を暗殺、方法は不明だけど結界は破られ視界を遮る何かを用意していると考えられる──ってことでバサールハ伯爵、これだけでなんとかなりますか?」
「え…?」
きょとんとする宰相に私もびっくりする。え?何その顔、というかリトも私の事見てるし、なんならメイドさんも見てるんだけど。
「君は手伝ってくれないのかい?」
「敵は王宮の警備でも見つけられないんですよ? 私ごく普通の子供ですし」
「…ごく普通の子供は目を魔法で治さないと思うんだけど?」
「そこ、茶々入れないっ」
口を出してくるリトを一瞥すればリトはべーっと舌を出してくる。子供か。いや、子供だけど。
「あれは緊急だからしたんです、それにあの場面にいた面々なら私が魔法を使えるのは知ってますけど他の人は知りませんよ? こんなちっちゃな私がどう頑張ってもかまって欲しい子供で片付けられちゃいますって!」
冷静に見て!この小さな体と細い手足!どこをどう見たら襲撃者ぶっ倒せるように見えるの!?
「え…まさか私に全部やらせようとしてたんですか…」
宰相に冷たい目を向けながらそっとジークの背中に隠れる。ほらほら、ジークの背中に隠れられるくらい小さいんですよーっこんなか弱い子に何やらせようとしてるんですかー?




